レストラン
「むうぅ~、お腹すいたなあ……」
久しぶりに取れたこの休暇。
今日は仕事のことなど忘れて、パーっとエンジョイしちゃおう。
そう考えていたのだが……。
あいにく朝ごはんを食べ忘れてしまった。
最悪だ。
これから食べなければならないのだから。
しかも家ではなくて大衆食堂で。
「うわ~、なんか嫌だな~」
おそるおそる外食店を探していると、嬉しいことにサイゼリヤが近くにあった。
「よっし、とりあえず飢えはしのげるぞ」
にぎわってはいるものの、並ばずに入店できた。
店員に案内されている間、ぼくは終始うつむいたままだった。
二人席を勧められたので、そこに腰かけた。一人で二席も占領したことになるので、ものすごく気まずかった。
とりあえずメニュー表を眺めてみる。
ぼくはリーズナブルな値段の、ミラノ風ドリアを食べたかったが、周りから貧乏だと誤解されたくなかったので、リブステーキのスープセットを注文した。
すると店員からドリンクバーはどうするかと尋ねられた。
飲みたかった。
のどがかわいていたし、水だと味気ない。
だがこの混雑具合でそれを注文したら、ほかのお客さんに迷惑なのではなかろうか。
さっさと立ち去れと思われているかもしれない。
ぼくはありがたい提案をやわらかく断った。
さて、どうしよう。
食事が運ばれてくるまで、どうしよう。
ここは水もセルフサービスになっている。だから水を汲んでくれば良いと思うのだが、ドリンクバーの機械に人だかりができていた。
冷水機はそのすぐそば。
ダメだ、恥ずかしくて行けない。
ぼくは震える脚をみて、断行を中止した。ここは待つべきかもしれない。
料理が運ばれてくるまでは、メニュー表とにらめっこをして過ごした。
まずはスープが運ばれてきた。
美味しそうだ。
皿を傾けて飲み干したいが、下品だと思われるかもしれない。
仕方なくスプーンを使ってちびちびとすすった。
そんな醜態を、ライスとステーキを持ってきた店員に目撃されてしまった。
「うわ~、あいつ貧乏性だって思われた」
店員の去り際を見送って、ぼくは呟いた。
ステーキにナイフを入れていると、箸がないことに気がついた。
なるほど、イタリアンレストランだから準備していないのだな。
仕方ない。フォークで食べるか。
周囲が気になったので、ぼくは早めに完食した。
そのせいかまだ空腹だった。
よし、条件は整った。
ミラノ風ドリアを食べよう。
ぼくはコールボタンを押そうとしたが、結局はおせなかった。ここで押したら、忙しそうにしている店員になんと思われるかわからない。
ちなみにぼくは、牛丼チェーン店でサラリーマンの方と相席したことがありますが、とくに気まずさなどは感じませんでした。




