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掌編小説集  作者: オリンポス
ヒーローショー
7/32

本物

 夕暮れのデパート屋上は、親子連れの家族で賑わっていた。

 なんでもこれから地元限定のヒーローショーがあるらしい。

 アドバルーンに吊るされた垂れ幕には、たしかにそのような記述がされていた。

 そのため屋上には簡単な舞台設定がなされており、登場キャラクターはテントの中で待機していた。

「ねえねえおとうさん、これからどんな人がでてくるの?」

 と、息子は尋ねてくるが、わたしもご当地ヒーローはみたことがない。だから適当にぼかして教えておいた。

 期待せずにパイプ椅子に掛けて待っていると、悪役が出てきてモノローグを言い始めた。

 このデパートをのっとってやるとか、そんな感じの前口上だ。

 それにしてもお粗末な演劇だなと、わたしは思わずにいられなかった。

 その悪役は覆面レスラーのような格好で登場してきたのである。

 そして彼は、観客席から子ども何人かを人質にとると、喜びのあまり奇声を発した。

 すると。

 それを待っていたかのように戦隊ヒーローがやって来た。

 こちらもチープな印象は否めず、全員が警備員のような格好をしていた。

 これから変身するのだろうか。

 しかしそんな期待とは裏腹に……。

 ヒーロー対ヒールの地味な大捕物が幕を開けるのだった。

 殴りあって、蹴りあって。

 揉み合って、組み合って。

 攻めあって、責め合って。

 そんな感じの、見せ物が開演された。

 変身もしなければ、ビームも撃たない。

 敵役は爆散しないし、殴りあっても火花が散らない。

 現実的なバトル。

 もはや人質は関係なくなっていた。


 そして。


 勝敗は決まり、悪役はパトカーに乗せられて、連行されてしまった。


 どうやらさきほどの悪役(ヒール)も、正義(ヒーロー)も本物だったらしい。


 正義が警備員で、悪役が強盗。

 まさしく適材適所の見せ物であった。

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