フォーク・スクイズ
【フォーク】
「ねえねえおとうさん。ぼく、フォークなげられるようになったよ」
「おいおい、小学生に変化球はまだ早いぞ」
「いいから、みてみてーっ!」
「ようし、お父さんがキャッチしてあげよう」
子どもは父親に向かって送球した。
子どもの言う通り、ボールは縦に変化した。
「おいおい」
父親はあきれたように言う。「食器のフォークといっしょに投げちゃダメじゃないか!」
【スクイズ】
ツーアウト、ランナー三塁。
一打同点のチャンスに監督は思わず代走を指名した。三塁のランナーを俊足の選手と交代させる。
そして打席に入る選手にサインを送る。スクイズのサインだ。
ピッチャーはまさかエンドランを仕掛けられるなどとは考えなかったようで、走者を確認せずに投球した。三塁ランナーはロケットスタートを切る。
バッターは巧くボールを三塁線に転がした。
相手が戸惑っているすきに三塁ランナーはホームベースへと帰還する。
「よしっ!」
と監督は喜んだ。
しかしそれもつかの間、なんとバントを成功させたバッターが、一塁にたどり着けずアウトになっていたのだ。
「ごめんなしゃいねー、ワシももう年じゃわい」
腰を叩きながら、その老人は言うのだった。