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掌編小説集  作者: オリンポス
贅沢品
30/32

もち

“新年あけましておめでとうございます”っていうテレビCMが、あと3日くらいは続きそうだなーと思いながら、投稿しました(笑)。

 寒風吹きさすぶ中。

 ボロ小屋の煙突屋根からは、暖かい空気が排出されていた。


「悪いけど、ぼくには食べられないよ」

 臼に入ったもちを、しゃもじでちぎって取り分ける父にぼくは言った。


 味噌汁の入ったおわんからは、もうもうと湯気が立ち上っていた。そこに熱々のもちが投入される。


「どうした? 雑煮もち、食わねぇのか?」

 親戚のおじさんが目尻に皺を寄せて、笑う。いつも笑っているせいで、目元にはくっきりと筋がついていた。


「だって、ぼくはもちついてないし。それなのに食べたら、なんかよそ者みたいって言うか……」


 慎み深くなったな、と。

 親戚のおじさんが笑う。

 近所の人たちも、微笑を浮かべている。


 みんな優しいな。

 そう思うと胸が痛んだ。


 なおさら食べたくなくなる。


 使い古された薪ストーブが、パチパチと火花を散らす。

 母親は換気口から火かき棒を突っ込んで温度を調整していた。


「そんなにもちがつきたいならよ」

 父親はぼくの目の前に来て。

 いきなりぼくを突き飛ばした。


「うっ……」

 すすけたコンクリートに両手をついて、ぼくは倒れこむ。


「ほら、もう食べれるだろ?」

 父親はニカッと歯を剥き出して笑った。

「尻もちをついたんだから」


 老朽化が進んでいるボロ小屋は。

 しかしどこよりも暖かかった。

今年も一年間、よろしくお願いします。

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