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絵画
「ほお、これはすごい絵画ですな」
自宅の地下室に鑑定士と絵画に疎い友人を招くと、鑑定士は少年のように目を輝かせた。
「これほどまでに保存状態の良い物は見たことがない」
「本当ですか?」
友人は興奮気味の顔を向けて、「ぜひ買い取らせてくれ」と私に懇願した。
私は鑑定士の出した差定額をそのまま売値にして、友人に譲った。
後日。
友人は私に贋作を売りつけたなと、文句をつけに来た。
初めはなんのことかわからなかったが、友人宅を訪問してようやく理解した。
「絵の値段が大暴落したんだ」
日の当たるところに例の絵が飾られている。
「絵画は強い光に当たると、色褪せてダメになるんだよ」
友人はムンクの叫びのような表情になった。
「今の顔の方が、よっぽど『絵』になってるよ」
美術館の照明が薄暗いのは、このためなんです。




