六座頭
「それではあっしの初夢を語りましょう」
シャンシャンと三味線を掻き鳴らす若人。周囲にはパラパラと聴衆がいた。
若人は盲目のため、両目を閉じていた。
そして――ひとり語りが始まる。
あっしがいたのは薄汚い寺小屋でした。
それは簡易的な木造建築で、風雨をしのぐための用途しか果たしていませんでした。
そんな中、座して対峙している二人の男がいました。
一見もしたことがない人物でしたが、あっしにはかの有名な信長公と太閤秀吉であることがわかりました。
その彼らのやり取りをあっしは見て聞いていたのです。
「おい、信長。本能寺に逃げても無駄だぞ。積年の恨みを晴らすため光秀が待ち構えているからな」
「猿。だれが逃げると言った?」
信長は匕首をおのれの喉元に押しつけながら、侮蔑するように笑った。
「猿。主はわれを殺して満足か? われとともに天下統一を果たしたいとは思わぬか」
「今さら命乞いか、信長。見苦しいぞ」
秀吉はスッと立ち上がり、「その首を切り落とせ」信長に命じた。
瞬間。
匕首は喉元に深々と突き刺さり、信長は絶命した。
「先程、足軽から伝令があった。光秀が本能寺を焼き討ちにしたそうじゃ。これより山崎へと赴き、やつを討つ。そこの者、信長公を埋葬しておけ」
首尾よく命令を下すと、
「じきに天下はワシのもんじゃー!」
軍隊を引き連れ、秀吉は高らかに叫んだ。
別の場所で殺されたため、本能寺からは信長の遺体が発見されなかったのである。
推理小説ばかり書いていた頃に見た夢です。
推理小説を書いていると、夢の中でも殺人シーンが出てくるので、あまりおすすめできません(笑)




