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一富士
険しい道のりだった。
高くなればなるほど、酸素は薄くなり、目は霞んでくる。
今回の登頂ははっきり言って、苦難の連続だった。
だが、ようやくだ。
ようやくご来光が拝める高さまでやって来た。
私はこの日のために、トレーニングを積んできたのだ。
そう。
すべては富士山を踏破するために、血もにじむような努力を重ねてきた。
そして、世界遺産からの絶景はもう間近に迫っていた。
そのとき。
遠くでツアーガイドさんの旗が見えた。旅行客がありの行列みたいに群れをなして歩いている。
その旗に印字されている文字は。
『東京スカイツリーを愛でる会』
「ぬぅわあー!」
私は飛び起きた。
夢と知って安堵した。
東京スカイツリーの高さは634m
新潟県にある弥彦山も634m
私は危うく弥彦山に登るところだった。夢だから良かったようなものの。
――でもせっかくの初夢なんだし、富士山に登りたかったと思わずにはいられない。




