脱法投棄
優越感を得たいがために、警察官の目の前でゴミを捨てる少年、俺。
本当は『掌編小説集』じゃなくて、ひとつのショートショートとして、一作品として投稿する予定でした。
俺は、ポケットティッシュを丸めて、道端に投げ捨てた。
――ゴミ拾いをしている警察官の目の前で。
とくに悪意はない。
ただそうしたかったから、そうしただけだ。
みんなが出勤しているのに、自分は代休だと最高に気持ちが良い。優越感をかんじる。
そんな気分でポイ捨てをしたまでだ。
「こら、キミッ!」
予想通り、呼び止められる。
たしかタバコのポイ捨ては罰金1,000円だったはずだから、まあそれくらいの金額をぶん取られるのだろう。
それともポケットティッシュだから、もっと安いのか?
火が点いていないぶん、まけてくれるのだろうか。
「今、何を捨てた?」
詰問口調で、警察官はすごんできた。
「すまん。ポケットティッシュを落としてしまったことに気が付かなかった。拾ってくれたことに感謝する」
俺は平身低頭してお詫び申し上げ、
「代わりに、その使用済みティッシュを献上してやる」
腹を切る思いで、
泣いて馬謖を斬る思いで、
その薄汚い使用済みティッシュを警察官に譲渡した。
だが警察官は無情にも、
「落ちたのなら仕方がない。ゴミ箱にでも捨てて来なさい」
杓子定規の意見しか言わなかった。
もらえばいいのに。
「嫌だ」
「何故だ?」
「これは水に流せるティッシュだぞ。だれが捨てただの、だれが落としただのという些細な出来事は、水に流せよ」




