05 侵入者(後)
後編ですが、前編とのバランスをだいぶ間違って短くなってしまいました
「あんたがサナリィか」
その言葉に反応しサナリィはウィルの体を上から下まで観察し、ある所で目が止まった
「その右腕……なるほどあんた、ウィルだね」
すると次はエルの方を見た
「じゃあそっちの小娘は情報屋のエルフリーデね」
「小娘ゆーな!」
エルのツッコミを無視して、サナリィは持っていた小剣をしまった
「逃げるのか?」
「あんた達が相手じゃ諦めるしかないよ それも本当にただの頭蓋骨で、アタシの捜し物じゃないみたいだし」
「捜し物?」
それを聞いてウィルに考えが浮かんだ
ウィル達の旅もあるものを探す旅なのだ
「それは、聖歌か?」
サナリィの体がピクッと動く
「そうかい、あんた達もかい」
そう言ってサナリィは下を向き、ゆっくりと仮面を外した
緋色の髪を掻き上げながら顔をあげる
露になった素顔はとても美しい大人の女性だった
「あ、その目」
エルが指摘したサナリィの目は、エルと同じく普通の色ではなかった
「緋色……」
彼女の目は髪と同じ緋色だった
「あんたイブリス人なのか」
「イブリス人?」
イブリス人は中央大陸北西部の一部族である
同時に二十年前の紛争で各国の連合軍と戦った部族だ
彼らは普段、目の色も黒く外見的な違いは無いが、色が緋色になると驚異的な身体能力を発揮する
その為連合軍は予想以上に苦戦したが、紛争勃発から七年後に連合軍の勝利で幕を閉じた
「アタシ等はね、普通の人間になりたいんだよ」
その時部下の一人が慌てて入ってきた
「頭!警備の奴らどんどん増えてます!」
「よし逃げるよ」
サナリィは再び仮面を付けた
「目的が一緒なら、またどこかで会うかもね」
そしてサナリィは部下を連れて部屋を出て行った
その直後、銃を持った男たちが大声をあげながら部屋の前を横切っていった
「行ったか」
まだ遠くで銃声が聞こえる
「大丈夫かな?」
「心配するな」
嵐の過ぎ去った部屋を静寂が包んでいく
しかし彼らは知らなかった――
この夜の出会いをきっかけに、自分達が世界を覆い尽くさんばかりの大渦に、飲まれはじめていることを――
そして嵐の夜が明けていく