01 砂漠の黒
二話からは一話分を長めに書こうと思います
上空遥か彼方から照りつける太陽は、じりじりと砂漠の砂を焼き、焼かれた砂は空へ向かってその熱気を解き放つ
上と下、二つの灼熱に挟まれた地表を、しっかりとした足取りで歩く者がいる
「……」
熱から肌を守るマントですっぽり体を包み、頭には深くフードを被っている
体格、身長から男であろうことは推測できる
オアシスを出発して数日、《男》は手にしたコンパスを頼りに西へ進んで行く
「!」
突然男は立ち止まり、マントの上から右手を押さえた
「来た……」
一言つぶやいた後、一瞬の間を空けて砂がゆっくりと盛り上がる
砂の中から現われたのは……
「サンドワームか」
男の身長をゆうに超える頭上から見下ろす巨大ミミズが三匹
尖った口を大きく開き、今にも襲いかからんとしている
男は無言のまま左手でマントを返し、腰の後ろに下げた剣に手を伸ばす
柄を握ったのと同時に三匹が同時に襲いかかった
爆音、地響きと共に、砂柱もまき上がる
だが次の瞬間、砂柱を突き抜けて、一匹のサンドワームと、肩まで白い布を巻いた右手を突き上げ、男が飛び出した
男は空中で素早く剣を抜き、くの字に曲がったサンドワームの胴体を、一振りの内に両断した
「こんな所までご苦労なことだな」
絶命したサンドワームの上に登り、残った二匹をにらみつける
「二匹か、面倒だな」
そう言って右腕に巻かれた布に手をかけた
その瞬間、まるで餌に飛び付く動物のように、二匹同時に突っ込んで来る
だがその瞬間男の口元には余裕の笑みがこぼれていた
砂煙が風で流されていく
そこには切り刻まれたサンドワームと、その上に威圧的に立つ男の姿があった
「先を急ぐか」
男が振り返った時、その威圧感の正体が見えた
それは指先から肩まですべてが漆黒に染まった右腕だった
男は右腕をマントの下に隠し、再び西に向かって歩きだした