表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

18 最終話 新しい塔への約束

 王都の街には魔導重機が並び、人々が忙しなく動き回っていた。淡々と、しかし確実に復興は進んでいる。

 第七魔導時計塔も同じだ。塔の外側には足場が組まれ、左官たちが黙々と修繕を続けていた。


 新品の銅製の羽根飾りが塔の頂部に取り付けられ、風を切るたびにカランと涼しい音を響かせる。


 展望台の欄干に手を置き、ヘルマンは静かに街を見下ろしていた。


 そこへ、塔内階段を跳ねるように駆け上ってきたアメリアが扉を押し開く。彼を見つけた途端、琥珀の瞳がぱっと明るくなった。


「ヘルマンさん!」


 ヘルマンは振り返り、小さく笑った。

 アメリアは彼の隣へ並ぶと、真上の時計盤を見上げる。


「時計、四面とも直ったんですね」


「うん。階段はまだ仮設だけどな。

 雷で得たエネルギーと塔の魔導動力は圧縮して街に渡した。復興作業のためだ。

 だから今は、ここで余計な動力は使わず、時計盤だけ点灯させてる」


「明かりが全部戻るのは……復興が終わる頃、でしょうか」


「どうだろうな。物はすぐ直せても、“元の暮らし”が戻るまでは時間がかかる」


「……そうですね」


 アメリアはそう答えると、ヘルマンの腕にすり寄るように身体を寄せた。

 困ったように眉を下げたヘルマンを、アメリアはにっこりと見上げる。


「えへへ!」


 根負けしたヘルマンは、アメリアを自分の前に立たせるように引き寄せ、肩越しに王都を見渡した。


「卒業制作はどうなんだ」


「ほとんど完成しました。ヘルマンさんからいっぱいアドバイスもらいましたし。教授にも褒めてもらったんですよ」


「早いな。皆ぎりぎりで仕上げるのに。……俺なんて、締切り直前だった」


「ヘルマンさんのそばにいたかったんです。早く終わらせたかったの。手は抜いてませんよ?」


 振り返りながら胸を張るアメリアに、ヘルマンはため息をひとつ落とし、そっと頭を撫でた。


「……子ども扱い……されてる気がする」


 背を向けて小声で呟くアメリアに、ヘルマンは苦笑を浮かべた。


「前に聞かれたよな。“守りたいものはあるか”って」


 アメリアは振り返り、ヘルマンを見上げる。


「――俺が守りたいもの。

 それは、魔導施設を見て輝く、お前の瞳だ。

 ……そういうもののために造ってたんだな、俺は。忘れてたよ」


 アメリアの顔が一気に真っ赤になる。


「……ヘルマンさん……」


 彼は伸ばした手でアメリアの手をそっと取った。


「アメリア。

 一緒に新しい魔導塔を造らないか。――隣国の、とんでもなくデカいランドマークだ」


「え……?」


 銀灰の髪が風に揺れ、切れ長の黒い瞳にアメリアが映る。

 彼女の琥珀の瞳には、塔の魔導光が差し込み、星のように瞬いた。


 ヘルマンは見たことがないほど穏やかな眼差しで告げる。


「アメリア。……一緒に来てくれないか」


「……連れてってくれるんですか?」


 彼は口角を上げ、アメリアの頭に“ぽん”と手を置いた。


「ついて来い、アメリア」


「……はい!」


 その瞬間、

 第七魔導時計塔の鐘が鳴り響いた。


 王都じゅうに柔らかく降り注ぎ、隣町にまで届く音だった。

 まるで二人の未来を祝福するように。


 ――祝福の鐘。

 ――これから刻まれる、新しい時の音。


 それはどこまでも、優しく澄んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ