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ステルラ  作者: 智織
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第3話 <王弟の話 side:王国王弟トリスタン>

■□■□■

この広大な中央大陸セニート王国では長い歴史の中で短い平和と長い戦争を繰り返して国土を広げ今では大陸のほとんどの面積を一王族が納め、四七州ある各州知事は代々受け継がれている。


セニート王国王弟トリスタン。

アッシュ灰髪 灰オニキス眼を持つこの男は

初夏に四〇歳の誕生日を迎えた。

第一王子ルーカスの叔父にあたる。


一夫一妻制の王国で、

ルーカスの祖父母に当たる濃灰髪 タンザナイト眼の前国王と、バイオレット茶髪 アリスブルー眼の前王妃の第三子として生まれた。王族の一人として、きちんと教育を受けて育ち、忙しい国王王妃夫妻からも時間を作っては愛情も受けていた。


ただ


勉学 剣術 魔法を始め経済学 法学 帝王学など教わる家庭教師の中には出来の良い兄リカルドと比べる者もいた。


その中で、

「兄上のリカルド様が○歳のときは勉学はここまで出来ていた。剣術は○歳でここまで成長された。魔法は○歳の時ここまで使える様になった。」

などと心無い比較の言葉を言われ、次第に卑屈になり兄リカルドへの見る眼が変わっていった。


幼き頃より、要領よく何でも卒なく熟す兄リカルドと平均値やや上程度の自分。

第一子の姉も妹二人も自分より兄リカルドと仲良くし慕っている様に見受けられ、周りの信頼や期待も兄にしか向いていない様に思い、平均値な自分にコンプレックスを感じていた。


初等部を卒業後、十ニ歳から十八歳までの六年間、トリスタンはリカルドに続き王都内にある王立学園に通った。

その際に、同級生で地方都市の令嬢だったレティーツィアに一目惚れし懸想する。


王国では毎年冬に王家主催の建国記念際があり、王国全土で祭を開催する。

王都迎賓館では夜にパーティが開かれ、王族と招待客である大手起業家や各州知事の大人の参加はもちろん十五歳になる王国内のブルジョワ男女はデビュタントを果たす。そこには学園に在籍する学生も紹介状があれば衣装を借り参加可能だ。


トリスタンは当時、是非パートナーにと王国北西部でアナスタシア帝国との国境部にあるフーサトゥーナ州の知事を通して娘のレティーツィアに声をかけたが断られた。

そのパーティで家族と共にレティーツィアは参加し王族への挨拶でリカルドと出逢い、意気投合。


後にリカルドとレティーツィアは[試練の旅]にも一緒に行き、試練を無事乗り越えて帰還。

レティーツィアの学園卒業後に結婚し今に至る。


王弟トリスタンもかつては共を連れて[試練の旅]を希望したが父王に認めてもらえなかった。

何故なら[試練の旅]に道案内となる精霊王の眷属である聖獣に同行拒否されたからだ。

王家を継げるのは、成人を迎えた歳に国王と聖獣に認められ[試練の旅]を無事 終えた者のみ。


過去にはトリスタンのように[試練の旅]に出られなかった王族もいたり、子宝に恵まれず親族から養子を取り旅に出る者や王女が旅にでて王家を継いだ代もある。兄弟間で複数人が旅を経験した代ももちろんあり、そのときは第一子や男子が次代を継ぐのを優先される。

今代の場合は第一子である姉のアリーヤ、兄リカルド、妹二人も[試練の旅]に出ているが、十年前の世代交代の際に女兄弟は嫁に出ていたり玉座の跡継ぎに興味を示さなかっので、リカルドが玉座を継ぐに至った。


家庭教師から比べられ、心ない言葉を耳にし、あるいは兄リカルドより王に相応しいと持ち上げられることもあったトリスタンは、いつしか自分の失敗や過ちを認められなくなっていた。


[試練の旅]へ出ることも叶わず、レティーツィアの心が自分に向かないのも他人の所為にした。

元々あったコンプレックスは兄への憎悪と化した。


*○*○*


三十数年ほど前より他大陸との繋がりが出来、

以来、国交が始まり、同盟を結んだ。

だが、何処の国も所詮[自国が一番]の至上主義は一定率いる。

この国にも自州の発展 保証 維持費と偽り、税を上げ至福を肥やしたり、国より渡された予算や食物を横領する州知事や自分主義である役人、反王政派も少数ながらも存在する。


その者達と徒党を組み、帝国の手を借りて王国をひっくり返し、王座と王妃レティーツィアを兄王リカルドから奪おうと七年前から模索し、甥のルーカスが[試練の旅]に出る今がチャンスと準備をしていた。


半年ほど前に食料困難になった帝国へ食料輸出をしに帝国へ赴いた際、

兄王の失脚の助力と帝国への食料輸出増加と産業と農業改革の為の人材派遣を交換条件に皇族との話も済み、国内の反王政派をまとめつつある今、最後の詰めに入った。


最低限の世話をする壮年の侍従以外誰も寄り付かない王弟の部屋。

以前は侍女もいたが複数人を性的暴行し、熟年の侍女には気に入らない事があると罵声や暴力を。侍女は側におけないと判断した国王は侍従に変えたが、若い侍従にも手出しをし、世話をする者が(ことごと)く移動願いや退職を希望しほとんど居なくなった。


ぶつぶつ独り言を言うトリスタンは


To「待ってろ、愚兄。

必ず失脚させ、王の座もレティーツィアも我が元に。[精霊王]が何だ、[試練]が何だ。そんなものがなくとも貴様さえ居なくなれば全てが私のものだ。」


などと、自分なりの理想論を立てるが、未来はまた違うものになるのだった。


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