第2話 <帝国と王国の国境にて> side:セレーナ
第三者視点からのお話になります。
一部、国の腐敗部分が書かれています。
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北大陸アナスタシオ帝国
アリバイ工作の為に途中 帝国内の訓練施設に立ち寄りつつ帝都から車で四日ほどの距離にある田舎町。
帝国から他国へ向かうには海を渡るか、大陸南西部端に唯一王国と繋がる国境の町であるここで、この先にある森でモンスターの巣窟となっている無法地帯での間引き討伐を行うとして、何十人もの隊員が整列を成している。
実はこの間引き討伐で今ここに集まる隊員 全員はは、帝国で悪政を敷く皇族に対する反皇族派と密かに呼んでいる人物達の集まりで、とある少女を王国へと導く為のアリバイ工作の為の作戦である。
全員で森に入って実際に間引き討伐を行い、隙を見て少女と少女に付けたガード2人の3人をこのまま王国まで繋がるこの森とその先にある幾つかの山を超えて国境を渡る作戦。
モンスターが蔓延るこの無法地帯を徒歩で王国まで向かうには危険極まりなく無謀な作戦ではあるが、この方法しか取れないのだ。
それだけ帝国が腐敗している。
間引き討伐を開始して森に中に入って、他の隊員と離れた場所で、
帝国陸軍大将ニコライ・ルスラーノヴィチ・ジダノフ
令息で帝国陸軍軍曹のイヴァン・N・ジダノフ
令嬢で帝国第一魔法省の魔法師のナディア・N・ジダノフが、
ダークブロンド 琥珀眼をした一人の少女を連れて最終 確認をしていた。
帝国の皇族を除き、政治を司る名家の一人娘だった少女は幼少期、非常に高い魔力を身に宿していることが分かり、家族や一族から無理矢理取り上げられ、皇族の一人にされ[偽りの腕輪]と呼ばれる腕輪をかけられ、洗脳と剣技、魔法技術を繰り返し、[魔法兵士]として使われていた。
意識はあるが、意思や感情は無いに等しい。
人間としての最低限の生活と[魔法兵士]として皇族の命令に従う毎日。
[偽りの腕輪]を外せるのは無理矢理 嵌めさせた皇帝と八精霊王様方と精霊王の眷属とされる聖獣のみ。
皇帝が外す事を良しとは言うわけはなく、八精霊王様に会うのには聖獣の導きが必要。
帝国にいる精霊王のだいたいの住処は想像 出来るが聖獣が何処にいるのか分からず探すのも酷く困難。自分達で目安を付けて精霊王が棲むと言われている神殿を探す事もしたが誰も辿り着くことが出来ず彷徨うばかり。
「王国には王宮に住む聖獣がいる」と亡き親友であり[魔法兵士]と呼ばれる少女[セレーナ]の父、帝国の元副首相ラーザリ・エピファーノ・イグナチェフから聞いたことがある帝国陸軍大将ニコライ
N「この先は危険区域だが無事 抜ければいよいよ王国だ。
王国の地図と貨幣を渡しておく。何としても[セレーナ様]を王都にお連れし保護を求めよ。」
帝国陸軍大将はその厳つい顔の眉間に深い皺をよせ、
N「俺は帝都に戻り、現副首相と引き続き帝国側内部の情報捜査を行う。これ以上、皇帝と皇太子、首相の好きにさせるわけにはいかない。」
と言いながら眉間により深い皺を寄せ目を閉じ下ろした左手の拳に力を入れ握り締めた。
*○*○*
今年、夏
セニート王国 王弟トリスタンが来日した。
ここアナスタシオ帝国の北側半分は山寒帯で一年の多くは雪に覆われていて、南側も土地が痩せていて作物が育ちにくい。昨シーズンは特に夏が短く植物の成長に影響を受けた。陽の光が届かなく曇り空の多い日々が続き雨も少なく作物の育ちが更に悪かった。それに加え先日、帝国内にいくつかある穀蔵で備蓄品である穀物の半数が植物病にかかり黒ずんで駄目になってしまった。
ただでさえここ帝国は食料自給率が低く、普段から食料を始め生活に欠かせない品の多くを諸外国の輸入に頼っているが昨年は特に酷くなった。
そんな理由で、各国、セニート王国からも急遽 食料輸入を依頼し、食料と一緒に来日したのが王国 王弟トリスタンだった。
その際に聞いた話がとんでもなかった。
*○*○*
輸出入のやり取りを終え、玉座の間で挨拶を終えた後セニート王国 王弟トリスタンが言うには、
To「ここだけの話、セニート王国 国王の座を兄リカルドが即位してから悪政を強いている。
リカルドが王の座に着いてからここ十年で徐々に税を上げ、民に苦痛を敷いている現状。報道規制がされているから他国へは伝わらないがこの数年 王国のあちこちで民は暴動を起こしつつある。
王妃は国王のなさり様に心を痛めています。
このままでは民の心は国から離れ王国が滅びかねない。
若き王子と幼き王子には王政交代は未だ早い。
私は、反王政派を立ち上げ王妃の愁を除き悪の王を玉座より引き摺り下ろし平和を取り戻すため動いている所存でございます。」
とても信じられる話ではなかった。
この世界の四大陸、
各大陸の代表国である、南のモノリス共和国、西のサーケル・イグニス連合国、中央のセニート王国と同盟を組む北のアナスタシオ帝国。
同盟締結され約三十年。以来、互いの国に輸出入や人々の出入国はあり平和的関係を築いているが、我が帝国の今代と先代の皇帝は欲深く税金を上げ帝国民を虐げ平和を掻き乱す独裁者。後継者である皇太子も同じ様な人物に育ってしまっている。国外に対しては表向き平和的な付き合いだが…
同盟各国がニ年に一度、各国の王宮内または王宮近くの迎賓館で交代で開く首脳会談。
それに出席する皇帝の側近 防衛として陸軍大将である自分も参加しニ年に一度、王国国王リカルドを目にするが、とても悪政を強いる王には見えない。
数年前に訪問した時の王国民も不幸そうにも見えなかった。
毎年の我が帝国との輸出入もきちんとされている。
どちらかと言えば今目の前にいる王弟の方が我が強く独裁的に見える。
と思考に耽っていたら王弟は、
To「仲間は集めたが国王リカルドの力は強大で、聡明な第一王子がいるときは実行に移せぬ。
秋、第一王子は[成人の儀]の翌日に旅に出る。
王子が旅に出て王都はもちろん王国を留守にするときが機が熟す時。
王を王座より引きずり下ろす為の助力を願いたい次第。その見返りとして帝国へは今より多くの食料輸出と農業改革と産業改革の為の人材派遣を送りましょう。」
といい、皇帝を伺っている。
濃紫髪 濃灰眼を持つアナスタシオ帝国 皇帝マクシーム・B・ヴォルコフは片眉を上げ訝しみながら顎に手を当て王国 王弟を見て思考している。
N(王弟の言葉はとても信じられないが、まずは王国の実状を調べて…)
と思案しながら皇帝の側で話を聞いていたら皇帝が、
M「よし、その話乗った。そのかわりうまく行った際の見返りを夢夢 忘れるでないぞ。」
と、話が纏まってしまった。
*○*○*
王弟が帰国した後、
皇帝は濃紫髪 朱眼をした皇太子タラースを呼び出し先ほどの話を伝え、
M「王国 王弟の愚策はともかく、王国の豊かな穀倉地帯と傾国の美姫と未だ言われる王妃は欲しい。 王弟に協力するフリをして王国を乗っ取るぞ。 タラース、[魔法兵士セレーナ]をいつでも出陣出来る様に準備を。」
Ta「御意に」
歪な笑顔で返事をし玉座の間を退出する皇太子。
その場に残った俺は「何時でも出陣できるよう下準備を」と言う皇帝の話を半分に、王国王弟の愚策もだが、我が帝国こそ危ない時期。
年々、増えるモンスター。
各地に被害が出て襲われる国民。
税が上がり、痩せ衰え飢える国民。
自分達の事しか考えてない皇族、政府の一部の人間。
その皇族と政府に反感を持ち暴動を興す国民。
対応に追われる自分達 陸軍と警察。
そんな皇族についていけず反皇族派を密かに募り機を見ていた。
王国王弟の話は信じられないし、
今の皇族で信頼できるのは第三側妃ファイーナ様と第五皇子マカール様のみ。
*○*○*
この数ヶ月ほどで起きた出来事を思い返しニコライは、表情なくただその場に佇んでいる[魔法兵士]と帝国で呼ばれるダークブロンド琥珀眼をした美少女、亡き親友副首相ラーザリの一人娘でもあるセレーナに向かい伝える。
N「セレーナ様、これより先、王国へは我が息子イヴァンと娘のナディアの三人で向かって頂きます。
王国で聖獣様と会い、ご自分を取り戻し、どうかお幸せになって下さい。」
返事はない。
[偽りの腕輪]の効能と繰り返された洗脳の影響で、表情も感情も無く目の焦点さえ合わないセレーナは
「ご飯、食べる」
「モンスター、殺す」
「身体、休める」
などのカタコトしか喋る事が出来ずまさに人形のようだ。
プラチナブロンド髪 スチールグレー眼の青年イヴァンは父と少女のやり取りを見て居た堪れない気持ちになりながらも真剣な顔して
I「セレーナ様のことは我々にお任せを。必ずや無事に王国王都までお連れします。」
ホワイトブロンド髪 スカイグレー眼の少女ナディアは愁を帯びた顔で
N「父上もどうかご無事で。」
N「イヴァン、ナディア、お前たちも重々気を付けよ。息災でな。」
と帝国陸軍大将は最後、父の顔をして三人を見送った。
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