第1章 土柱 編 第1話<親子のプライベートタイム side:ルーカス>
本編スタートです。
第一章は、生まれ育った地を出て土柱様の元へ向かうまでのお話。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
セリフ前のアルファベット
L「○○○」は登場人物名のイニシャルです。
(アルファベットが無い場合は名前の無いモブのセリフになります。)
中央大陸セニート王国
王族の居住宮にある一室。
王と王妃は成長した息子を思い、夜のひとときを一緒に過ごす。
窓辺に立ち、美しく咲き誇るマグノリアを楽しむセニート王国 国王と王妃。
モカ茶髪コバルトブルー眼 偉丈夫な王国、国王
リカルド・フレデリック・ハワード
黒オリーブ髪 シナモン眼 傾国の美女と言われる、王妃
レティーツィア・ローズ・ハワード
ここ、セニート王国では年に一回、
ネリネやアネモネの花が見頃を迎え夏の大三角もまだ夜空に輝く時期に[成人の儀]を行う。
王位継承権第一位を持つ、国王と王妃の第一子は先日、十ハ歳の誕生日を迎え、今日、無事に[成人の儀]を終えて大人の仲間入りをした。
セニート王国 第一王子
ルーカス・F・ハワード
フォレストナイト(黒濃緑)髪 インディゴ眼 の美青年である。
*○*○*
「セニート王国 国王リカルド様より、祝福のお言葉」
セニート王国、王都 迎賓館
王国歴 七九ハ年 秋 [成人の儀]
新成人を迎える子息子女と関係者が集まる厳かな雰囲気の中、司会進行の声が響く。
国王リカルドが壇上に上がり、整列している新成人を見渡す。
壇上周りや後方ではカメラマンがカメラを回し王国中に放映される中、祝辞を述べる国王の声が響き渡る。
R 「新成人を迎えた若者達を祝福する。
一つ、幼き頃より身に付けたスキルを活かし此れからの人生に役立てよ。
一つ、知らぬ事、出来ぬ事があるのはは恥では無い。正直に申し教えを乞い身に付けよ。
一つ、己にそして社会に恥じぬ行動をとれ。
精霊王 八柱様方を始めとする自然の恵みに感謝し、己の行動に責任を持ち他者との繋がりを考え、この国の未来を担っていってほしいと願う。
我国民の若者達の未来に幸あれ。
これを持って、我からの祝言とする。
王国暦七九八年九月ニ十日
セニート王国 国王
リカルド・F・ハワード」
壇上を降りた国王を始め数人の来賓の祝辞が続いた後、
「新成人 代表 挨拶!」
迎賓館内に数百人いる新成人の中で最前列の真ん中の席に座っている若者が席を立ち壇上へ上がる。
自身を瞳の色に近い藍色の上下のスーツに白いシャツ、藍染めネクタイを付けた濃い緑色がかった黒髪の美青年は壇上にいる国王の向かい側に立つと一礼し口上を述べる。
L「今日の良き日、皆様の祝福を頂き[成人の儀]を迎える事ができました。
セニート王国に生を受け両親を始め人生の先輩方より多くを学び、支えて下さったこと心より感謝を申し上げます。
新成人として一人一人が己の行動に責任をもち、王国のお役に立てる様、精進致します。
何卒 御指導ご鞭撻の程 宜しくお願い致します。
王国暦七九八年九月ニ十日
セニート王国 新成人代表
ルーカス・フレデリック・ハワード」
*○*○*
窓辺で王妃と寄り添い合い、空を見上げれば薄っすらと雲に隠れながらも輝く月を楽しみながら、[成人の儀]を思い出し感慨深く言葉を発する王。
R「ルーカスもようやく成人を迎えた。
首相より受け取った記念品の際は緊張しとる様だったが、新成人代表挨拶ではなかなか頼もしく見えたな。
明日より旅立つ、我達も挑んだ[試練の旅]ルーカスなら幾つもある困難な試練を乗り越え大きく成長し無事、帰還するであろう。
幼き頃より勇敢で優しい奴だ。
しかし、旅の共に男ばかりを選び色がないな。王室メイド達の間や学園でも相当モテたと聞いてるが。
あやつ、好いた女子もおらんのか?」
La「まぁ、まだ、これからですよ。
相性というものがあります。
私は王宮でのご挨拶で貴方に出会う事ができ、[試練の旅]へもついて行きましたが、
ルーカスには世界を周り色々な方と出会い[この人]と思える女性と一緒になってほしいものですわ。」
と、会話する中、
コンコンコン
扉から聞こえるノック音。
王の返事を聞き入室したのは第一王子。
L「夜分に失礼します。」
今日、無事に[成人の儀]を迎え大人の仲間入りをしたセニート王国 第一王子ルーカス。
王に促され、それぞれが室内のテーブルを挟んでソファに移動する。室内奥の窓側に王と王妃が並んで座り対面するドア側に第一王子が座った。
王室メイドが運んできた"第一王子の生まれ年"に作られたワインとグラス等を準備し退室する。
ワインのコルクを抜きグラスに注ぎ、第一王子に渡す父王リカルド。
隣で王妃レティーツィアもグラスを掲げる。
R「成人おめでとう!!」
La「成人おめでとうルーカス」
L「ありがとうございます」
と三人で祝杯を掲げる。
普段、お互いに忙しい日々を過ごす親子の細やかなプライベートタイム。
セニート王国 北部にある名産地のワインを口に含み、十八年間熟成させた濃厚な香りが鼻腔を通り味わいは深く重い。
余韻を楽しみながら正面を見た国王は、何とも言葉にしがたい顔を無理矢理 笑顔に切り替え「とても美味しいです」と言う息子に(酒のうまさを覚えるのもまだまだこれからだな)と苦笑し、膝下でおとなしく伏せをしている真っ黒な毛色、漆黒色の眼の犬「シルビア」を撫で、愛する息子に
R「ルーカス、明日からの旅にこやつを連れて行け。きっと役に立つ。それとこれは俺からの餞別だ。」
と、明日から挑む[試練の旅]に必要な各地に印が付けてある王国の地図と世界地図、王国の紙幣と硬貨、幾つかの体力回復薬、魔力回復薬、時間の経過と共に状態異常 HP MPを徐々に回復させることができる魔力の込められた緑色の石のついた[深緑の指輪]、時間経過無し広さ無限の[不思議鞄(通称:ストレージ)]。
そして一冊の本と王国の紋章の刻印と複雑な魔法陣が記述されている木の板と枝。
R「この本は旅の手助けになるガイドブック。国内外各地の特徴 名産 生息モンスターの概要などを記す。参照せよ。」
と父王に言われそれらを下賤される。
国王リカルドの膝元で自分が呼ばれて首を上げ第一王子をチラ見し、また伏せをする黒犬シルビア。
父王の隣で寄り添って座っている王妃である母が、
La「私からはこれを授けましょう。」
と言い、いつも身につけている我が国の平和の象徴と崇められている真っ白な体に真っ赤な瞳を持つ鳩をモチーフにしたネックレスを首からはずし手渡される。
L「母さん、これは父さんの身につけているブローチとお揃いで、普段はもちろん国の諸々の儀式でも決して外すことの無い母さんの大切な物。それを俺が受け取ってもいいのか?」
と驚きの声で尋ねると、いつも優しい母が慈愛に満ちた表情で、
La「構いません。これはかつて王より[婚姻の儀]の際に頂き、我が国の代々の王妃が身につけ、[試練の旅]へと旅立つ王族に旅の無事を祈り貸し渡すこともあるネックレスです。きっと持ち主を導き守ってくれるでしょう」
言葉と一緒に受け取ったネックレス。モチーフの鳩を眺めると真っ赤な瞳が一瞬キラリと光った気がした。
R「少し昔話をしよう」
父王は玉座や執務室で見る威厳のある王の顔とは別の父の顔をして語り出す。
R「俺が[試練の旅]に出た時は、レティーツィアと今の近衛団長と団長の奥方の四人が始まりだった。
目的地へと向かいながらモンスターとの闘いや各地で出会った人々との交流で少しずつ経験を積み、様々な出会いもあった。」
と言いながら王妃の身体を引き寄せ王妃も
La「そうですね」
と言い見つめ合う。
仲睦まじい両親を見て、過去に二人の馴れ初め話を聞いたことを思い出す。
二人の出会いは、毎年冬に王国の[建国記念の日]に行われる王家主催のパーティ。
当時、王国北西部で北大陸のアナスタシオ帝国との国境にある州、州知事の令嬢だったレティーツィアはお披露目として出席。
州知事一家が王族に挨拶をしたときに初めて顔を合わせ、たまたまダンスを一緒に踊ったときに意気投合したのがきっかけだった。
当時二人は同じ王立学園 高等部に通っていたが、学年が違うため面識はなかった。
学園内ですれ違うことや学園祭などで学年問わず行き交う同じ空間内に居たことはあるかもしれないが。
その後、父上が[試練の旅]に行くとき母上は学園を休学して着いてったんだよな。確か。
[※まぁ、その辺りはまた別の話である]
L(俺は今のところ、学園でも建国記念などのパーティでも〔共に過ごしたい。〕と思える女性に出会えてないからな。
父さんと母さんのように将来こんな風に寄り添い会える相手を見つけられたらと思う。)
と、考えながら自分にはまだどこが美味しいのか分からないワインを飲み、やはり微妙な顔をする。
そんな俺を見て苦笑しながら父王の言葉は続く
R「この世界の四大陸には、火、水、風、土、雷、氷、光、闇の八柱の精霊王様が存在する。
北大陸、に座す、氷柱様と影柱様。
南大陸、モノリス国に座す、雷柱様。
西大陸、サーケル国に座す光柱様と、イグニス国に座す火柱様。
そして、この中央大陸のセニート王国に座す、風、水、土の三柱様方。
獣人族が住まう東側に風柱様、西側に土柱様、南側に水柱様。
八柱の[精霊王様との拝謁]と[精霊王様からの試練]が旅の最大の目的。
国々を巡り様々な文化や歴史を学び、時には他種族との交流もある。楽しくもあり辛く厳しい時もあるだろう。
共に行く仲間や旅先で新たに出会った者達を大切にし、相手の立場や文化、気持ちなどを考慮し信頼を築き、一人では為し得ないことを学んでほしい。
よいな、途中で投げ出すことは許されぬ。
与えられた試練を乗り越え無事に帰還することを願う。
このセニート王国の第一王子として、
リカルドとレティーツィアの息子として、
恒に胸を張り前を向いて励みなさい。」
お読み頂きありがとうございます。
成人を迎え巣立つ子供と親の家族の団欒を大切に。
と思い書きました。




