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ステルラ  作者: 智織
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第9話 <救いを求めて1 side:セレーナ by.イヴァン1>

今回からは、帝国民である3人のお話です。

■□■□■


深い森と険しい山々が続く無法地帯。

陸地では帝国と王国とを繋ぐ唯一の場所。

帝国の西南の町から王国の一番近い州まで徒歩で約一月ほどの距離の中、ここを歩き始めて数日が経過した。


帝国の国境検問では、いつも身に付けている軍の制服を着て[調査]と偽り通過し、暫くしてから数少ない私服に着替えて行動。

幸い自分達を追ってくる者や盗賊なども今のところいない。


街道があるわけでは無いので、地図と方位磁針が頼りのサバイバルだが、不思議鞄のおかげで食料品を始めテントや毛布などの必要なものがコンパクトに収まり今のところ順調に王国へと近づいている。


同伴者の妹と会話をしながら時々、獣やモンスターに遭遇する時もあるが、俺一人で倒せている。

もう一人の同伴者である少女は、言葉数が少ないながらも一緒に着いてきてくれている。


I「もうすぐ日が暮れる。今日はこの辺りで休もう。」

N「分かったわ、兄さん。」


短い会話を交わし、俺はテントを貼り妹は火を熾して食事の準備を仕出す。

虫除けの香球を焚いて夜を過ごす。

これは虫はもちろん野生生物やモンスター、アンデットすらも大概が嫌う匂いだが、人間にとってはいうほど臭く無く身体に害も無い優れものだ。


準備が出来て食事をする。

今夜は、先日 襲ってきたから倒した猪の肉を焼いたのとショートパスタ入トマトスープ。

軍の食料備蓄を見直し期限が迫っているものを持ち出して消費し、塩と幾つかのスパイスもあるから色々な味を食せている。


ここ数年不作が続き食料困難の中この備蓄を持ってこられただけで助かっている。

だがそれも一ヶ月も持たない量だからそろそろ山菜や木の実などを採取しないといけない。

幸い、北国である帝国でも短い夏も終わり秋に近づいているので食べられそうなものを時々 見かける。

軍の訓練で、山や森で採取出来るもの一通り習ったので、人間にとって毒になる物の区別は出来る。ただ、きのこ類だけは種類も多いし俺には見分け付かない。


腹が満たされたところで、素早く片付けをして紙の地図を広げる。

本当は電子機器を使って色々と調べたいところだが、GPSが付いてるから使えない。無理に操作すると画面が見えなくなるから、時計とカレンダーが見えるだけのただの硬い板に成り下がっている。


地図の一部を指して

I「今、この辺りまで来ているはずだ。

このペースで進めば明日の昼には森を抜けて開けたところに出る筈だ。そこから二日ほど進んだら今度は山路になる。そこで、平地に出たらスペースをあげてなるべく早く山に近づきたいが体力は大丈夫そうか?」

N「私は大丈夫よ。セレーナ様も今のところ落ち着いてるし疲れてる様子も無いから行けると思うわ。」

I「分かった。あと、パスタや豆類などの穀物が今の残量では山を越えるには心許ないから夜になったら小麦粉を練って生地を作っておきたい。」

N「OK」

I「それと、山に差し掛かったら、山菜や木の実など採取しながら進もうと思う。」

N「はい。兄さん、山で遭遇しそうなモンスターは何。」

I「森と変わらない狼や猪などの獣系、蛇やトカゲなどの爬虫類系、あと厄介なのが青鴉だな。」

N「あぁ。あの、冷気を漂わせながら氷の礫を飛ばしてくるカラスね。じゃあ、そちらは私が引き受けるわ。」

I「セレーナ様は大丈夫なのか。」

N「今のところ戦闘になっても混乱する様子は見受けられないし移動中も落ち着いて行動 出来ているから大丈夫だと思うわ。」

I「そうか。このままセレーナ様が穏やかな状態で王国まで行けるといいな。」

N「そうね。そろそろ花摘みをして着替えてから寝るわね。おやすみなさい、兄さん。」

I「ああ。おやすみ」


そう言ってセレーナ様を連れて花摘み、つまり排泄をするため少し離れた茂みところに移動して行くナディアを見送る。


帝国では[魔法兵士]などと呼ばれているセレーナ様は、妹のナディアと同じ年の17歳。

帝国では16歳で成人するから大人として数えられる。

ホワイトブロンド髪 スカイグレー眼を持つ妹のナディアは所謂 可愛い系な女の子で、

ダークブロンド(焦茶)髪 琥珀眼をしたセレーナ様は綺麗系な女の子だ。

北国帝国に多くいる透き通るような白い肌、手足は細長くスラっとしたモデル体型。長い睫毛に、つい惹き込まれて見つめたくなる満月のような瞳は輝きは無く時々 焦点が合わない。

透き通った鼻筋にチェリーのような艶のある唇なのに口角が上がっているところを見たことがない。

その所謂 表情の無いところはよく出来た人形のようで、一緒に行動をしているとどうしようも無くやるせ無い気持ちになる。


原因は彼女の華奢な腕に忌々しく嵌っている腕輪で、元凶は我が国、帝国の皇族。


5歳になる子供が量る魔力量。

桁違いに高かったがために、強欲で勝手な皇族に目を付けられ、無理矢理 両親と引き離された上に腕輪によって操り人形にされた。


帝国陸軍大将の父さんとセレーナ様のお父上の帝国前副大統領とは親友で、父さんの記憶の中では魔力を量る以前のセレーナ様は、5歳にして完成された容姿端麗で頭も良く実年齢より少し大人びた美幼女。性格はどちらかというと大人しめで、父さんが見た目や頭の出来を褒めると可愛らしく歯を見せて微笑うというよりも頬を染めてはにかみ恥ずかしがって顔を隠してしまう照れ笑いな感じをするらしい。

残念ながら俺は一度も見た事がない。

笑うどころか怒ったり哀しんだり、そんな人として当たり前にあるだろう喜怒哀楽がこの美しい女性には無いんだ。

違うな。

あった筈なのに奪われたが正解か。


I「クソッ!!権力 振り翳して好き勝手している忌々しい皇族め!」


小さくなりかけている焚き火を見ながら悪態をつく。

香球のお陰で、盗賊に関して以外は警戒をする事なく夜も身体を休めることが出来るが、無法地帯に入ってから余り眠れていない。

いつもナディアは朝日が昇り始める少し前に起き出して火の番を交代してくれ、そこから数時間だけ泥の様に眠りに着く。


*○*○*


食事の匂いで目が覚めて支度し、食事を済ませて出発する。

予定通り昼頃 森を抜け平地に出た。

軽く昼食を済まして今度は遠くに見える山に向かって歩いて行く。

幸いにも遭遇するモンスターも少なく、開けているから見通しも良く順調に進んでいる。

夕方に差し掛かりあと数キロ歩いたら休もうと思っていたら、


N「兄さん、今日はこの辺りでもう休みましょう。申し訳ないけどテントだけ貼ってもらってから、兄さんは休んで。日起こしや食事の準備はもちろんセレーナ様と見張りをしながらパンなどの生地も作っておくわね。」

I「いやっ、準備はともかく女性だけで火の番は危ないだろう。」

N「大丈夫よ。ここまで盗賊に出会っていないし、もし現れたとしても隠れる場所なんて無いから直ぐに見つけられるわ。」

I「しかし..」

N「平気よ。向かってきたら私の魔法で返り討ちにしちゃうわ。」

I「だがっ...」

N「もうっ!いいから。兄さんは休んでて。ゆっくりとは眠れないかもしれないけれど、そのくっきりと出てしまっている隈を無くして!ね。」


渋々 了承し手早くテントを貼り中に入る。

実はタオルで身体を拭くことも着替えすらも億劫な今はナディアの申し出が正直ありがたい。

寝袋に身体を滑り入れたら、早々に瞼が重くなり数十秒もしないうちに眠りに付いた。




どのくらい経っただろうか。

疲れが幾分か取れてスッキリと目が覚めた。

時間を確認すると夜が深まり、遅くに差し掛かっていた。

テントから出て火の番を交代する。

ここまでの時間 警戒するような事は何も起こらなかった様で、就寝の挨拶をして二人はテントへ入って行く。

俺は ナディアの作ってくれた夕食、夜食か。を食べて火を見つめる。


訓練だったり困窮する帝国民への支援をしたりで、なんだかんだと昼夜問わず忙しくしていたので、日中は移動があるもののある意味ゆっくりと過ごしている。


I(ようやく三分の一ほどの距離まで来たか。たった三人という少人数で幾つもある山越えという難関が待ち構えているが、気持ちの上では兵士をしていた時よりもある意味 穏やかに過ごせている。)


などと考えながら火が消えない様に薪を足してまた火を見つめながら夜を過ごすのだった。







お読み頂きありがとうございます。

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