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私立探偵 真加部阿礼  作者: 春原 恵志
真加部阿礼
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作戦会議

 真加部が探偵社に戻ると珍しくパクがリビングにいた。いつもは自分の部屋にこもりっきりなのだ。そうして帰ってきた真加部に紙を見せる。

「阿礼、DNAの鑑定結果が出たぞ」

「わかったのか?」

「まあ、見て見ろ」

 真加部が鑑定書を見る。ミトコンドリアDNAだ。それによると祖母と孫娘の鑑定結果は99.8%だった。これは間違いなく血縁関係があるということだ。

「母親は京香に間違いない」

 真加部は鑑定書をじっと見つめる。顔の近似ぐあいからしてそう思っていたが、こうして鑑定書で証明されると否が応でも信じるしかない。

「となると、誰が父親かということだな」

「そうなるな」

「整理するぞ。まず京香が15歳の時にタイに行って卵子を摘出した。それを父親らしき男、ここではAとするか。Aが受精卵を作り、代理母のナパに着床させた」

 パクはうなずく。

「タイへ行ったのは友人のめぐちゃんだけと言うことだったが、実際はAも同行していた」

「可能性は高いな。まだ証拠はないがな」

「Aの存在を隠す理由は何だろう?」

「京香の親には知られたくないということだろうな」

「いや、それどころか、代理母や産科医にも自分達の存在自体を隠してたよな」

「確かにな」

 この部分が最初から気になることなのだ。なぜ、京香とAは真加部阿礼と言う娘の存在を隠さなければならなかったのか。

「パク、盗まれた資料については何かわかったのか?」

 真加部は残った段ボールの画像データをパクに送付済だ。

「AIに推測させてみた。おそらく無くなった文書は実験資料と論文の下書きだろうということなんだが、一点、おかしな点がある」

「何だ?」

「量が多すぎるんだ」

「どういうことだ?」

「年代で言うと1980年から2000年までの資料だと思われるんだが、段ボール箱10個はそれ以外の年代でも群を抜いて多い」

「その時期に研究が多かったのか」

「あるいはAIの勘違いかな」

「研究資料だとすれば、中国はそれを欲しがったということだな」

「そういうことだ」

「どう考えればいいんだ」

 二人して頭を悩ませる。

 しばらくして真加部が何かに気づく。

「Aも死んでるのかもしれない」

 パクはぎょっとして真加部を見る。

「俺が小さい頃はAは日本の長期休みの時にタイに来ていたと聞いた。つまりは学校関係者だよ。学生か教師、もしくは高校の従業員だ。それが5歳になって突然、タイに来るどころか、連絡も無くなったっていう。つまりは亡くなったんだ」

 パクは申し訳なさそうに言う。

「その可能性はあるな」

 真加部の両親はすでに亡くなっているのかもしれない。天涯孤独ということか。そんなことは気にも留めずに真加部の推理が続く。

「あと気になるのは薔薇だな。なんであんなものを盗んだんだろう」

「子どもへのおみやげじゃないのか」

 その言葉に真加部が反応する。

 思わず立ち上がって言う。

「ああ、そうだ。思い出したぞ。俺が子供の頃だ。父親らしき男が俺に黒い薔薇を見せたことがあった。そうか、そういうことか」

「間違いないのか?」

「4歳の頃だったかな。あれがそうだ。俺の誕生日だったのかもしれない」

「そいつがAなんだろうな。学校関係者だよ」

「でも中国が盗んだのは何故なんだろう。盗みたくなるほど綺麗だったのかな」

「赤い薔薇とか青い薔薇とかのほうがきれいだけどな。まあ、もっと調べてみるよ。でもAについては絞れてきた気がするな。農業高校の関係者で論文を発表したか、どこかで研究成果を発表した人間かもしれない」

「そうなんだが、でも20年前だよな。いまさら何が気になるっていうんだろうな」

「さあな」

 真加部はポケットから名刺を出してくる。

「話は変わるんだが、この名刺の男とミャンマーであったんだ」

 パクが佐藤聖の名刺を見る。

「JBSって、これはテレビの制作会社なのか?」

「本人はそう言ってる。裏を取ってくれ。どこか怪しい気がする」

「ミャンマーに行ってる時点で十分あやしいな」

「代理母の取材だって言ってた」

「ふーん、わかった。調べてみるよ」

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