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私立探偵 真加部阿礼  作者: 春原 恵志
真加部阿礼
85/130

真加部探偵社

 探偵社の扉が勢いよく開けられる。

「パク!帰ったぞ」

 奥の部屋からパクミンヘがうれしそうに顔を出す。

「阿礼!久しぶりだな」

「パク、会いたかったぞ」

 二人ががっちりと握手する。抱き合ったりしないのが、この二人の関係性だ。お互い、はにかみ屋で人見知りで、つかず離れずなのだ。

「これおみやげな」

「なんだ?」

「ドライフルーツとチョコだ。象の置物じゃないぞ」

 パクはそれを開けて中身を確認しながら話す。

「それで阿礼、どうする?」

 世間話などせずに、今後の方向性を話す。これも二人ならではだ。

「まずは夫婦が持ってきた写真を見せてくれるか」

 先日、探偵社を訪ねてきた老夫婦の件だ。真加部とそっくりな娘の写真を持ってきたのだ。パクがその写真を出してくる。真加部は写真を凝視する。確かに真加部とそっくりな女性がセーラー服を着て、学校の正門のところで立っている。入学式の写真だろうか。

「似てるな」

「似てるというか、阿礼がコスプレしてると思ったぐらいだ」

「こんなに若くはないな」

「まあな。15歳当時の写真らしい。それともう一つ。この写真に写っている学校だが、茨城農業高校なんだ」

「パクが調査に行った学校だな」

「そう、そしてミンヤーが二日間もいたところだ」

「つまりはここに何かあるということか」

「それは間違いない」

「夫婦から調査依頼を受けたんだろ」

「それもあるんだが、これは阿礼が追っかけてる案件そのものだよな」

「ああ」

「あとな、江古田署からも依頼を受けた」

「そうなのか?」

「西城が言うには倉庫から無くなったものの正体を知りたいらしい」

「自分達じゃあ、調べきれないのか」

「江古田署じゃ無理だな。それに学校側も何の管理もしていなかったみたいだからな」

「資料が数箱、無くなったんだよな」

「10箱ぐらいかと」

「でもパク。どうやって無くなった箱をしらべるんだ?」

「残った箱の画像を見たい。そこから類推すると無くなったものについて見えてくると思うんだ」

「なるほど、そういうことか、そこはパクの得意分野だな」

「まあな」

「それとどういうことなのかな。ここまで顔が似てるとなると、この女性が俺の母親なのか?」

「さあな。ただ、子供となると、夫婦は心当たりがないと言ってるんだ」

「そういう事実は無いということか」

「そういうことだ。まるで思い当たらないらしい」

「彼女は亡くなってるんだよな」

「20年前、彼女が20歳の時だそうだ」

「何か俺の母親だと証明できる方法はないのか?」

 パクはにやりと笑う。

「あるのか?」

「その奥さんがここにきて髪の毛を落としていった」

「なるほど、DNA鑑定するのか?おばあちゃんに当たるんだろ。出来るのか?」

「出来るさ。祖母と孫のミトコンドリアDNA鑑定を依頼してある」

「ミトコンドリア?」

「祖母から母親、そして孫が女児の場合、ミトコンドリアDNAは100%一致するんだ。だから間違いなく、血縁関係を断定できる。阿礼の場合、ちょうど祖母と孫娘になるはずだからな」

「ほー、で、結果は出たのか?」

「まだだ。鑑定には2週間ぐらいかかるらしい」

「いつ結果が出る?」

「あと、1週間ぐらいかな。しかし、いずれにしろ。阿礼は茨城に行ったほうがいい」

「わかった。夫婦から詳しい話を聞きたいからな」

「それもあるが、二人ともお前に会いたいらしい」真加部は少し複雑な顔になる。「亡くなった理由も知りたいだろ?」

「そうだな」

「病気らしいが、詳しくは聞いてないんだ」

「そうか」

「ついに文伍との約束が果たせそうだな」

「ああ」

 真加部は物思いに耽る。

「どうかしたか?」

「パク、文伍はこうなることを知っていたのかな」

「どういう意味だ?」

「俺がルーツを探ると真実が見えるようになるって言っていたんだ。文伍は何かわかっていたのかな」

「どうかな。文伍って相馬眼みたいなところがあったからな。お見通しだったのかもな。まあ、いずれにしろ、それも含めてわかってくるはずだ」

 真加部はうなずく。

「あと、これから桑原のおっさんが来るって言ってたぞ」

「まじか」

「定期チェックらしいな」

 真加部は税理士の桑原が苦手だ。

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