ホテルの屋上
続いての捜査会議の中で、西城たちはパクの推論について、あたかも自分たちが気付いたように報告する。駒込は躊躇したが、西城は構わず報告したのだ。
すると管理官以下、上の人間からはその可能性があるということになり、痕跡を探すため、鑑識がホテルで再調査することとなった。
ここちよい初夏の風が吹く中、西新宿署の鑑識がホテルの屋上で捜査している。ここの屋上はヘリポートもあり、金網のフェンスに囲われた空調設備が設置されていた。
西城たちも現場に立ち会っている。西新宿署の古参の錦織が西城に話す。
「よくこんな方法に気が付いたな。そっちの若手の発案かい?」
「ええ、まあ二人で相談した結果ですかね」
西城はどこかこそばゆい。
「ふーん」錦織は少し怪訝そうな顔をする。疑いの眼というやつだ。
屋上のコンクリートの囲いを調べていた鑑識が振り返り、錦織を呼ぶ。
「錦織さん」
「どうした?何かわかったか?」
「ここ見てください」
3人がそこに近寄る。
屋上の突き出した囲い、幅は30㎝ぐらいだろうか。そこにひっかいた様な跡がある。
「ここに引っ掛けた跡があります。それとほんのわずかですが、繊維も残ってますね」
「じゃあ、やっぱりロープで飛び越えたのか」
「そうですね。可能性は高いかもしれません」
西城と駒込が顔を見合わせる。
錦織がにやりと笑う。
「お手柄だな。そうなるとスズキイチロウを探すしかないってわけだな」
西城と駒込は屋上の囲いから下を見る。
西城はその高さに足がすくむ。
「いや、ここを登れるか?」
振り返ると駒込は見もせずに尻込みをしている。
「僕は無理です。高所恐怖症で見るのもダメなんです」
「そうか。俺も好きじゃないな。錦織さん、ここを登って降りるなんて人間業じゃないですよ」
「確かにな。スズキイチロウって何者なのかな」
確かにそう考えると空恐ろしい犯人である。




