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私立探偵 真加部阿礼  作者: 春原 恵志
真加部阿礼の過去
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パクへの依頼

 公安、橋爪が言った通り、帳場(捜査本部)が西新宿署に立つ。これで先日の落下事件は殺人事案として捜査することとなったのだ。

 江古田署の西城たちは引き続き、この事件の捜査を継続することとなり、事件当日のグランドロイヤルホテルの宿泊客の素性を調査する。当日の宿泊者数は実に432名もおり、江古田署はその半分近く200名分を調査していた。

 今日も聞き取りを終え、江古田署に戻ろうとしている西城が駒込に話す。

「江古田署も災難だな。自殺で片付いたらここまで捜査しないでも済んだのに」

「でも仕方ないですよ。殺人事件ですから」

「犯人はどうやって姿を消したんだろうな。あの後、いくら分析しても犯人らしき人物はあの部屋から出ていない。そうなると本当にいたのかも疑わしいだろ」

「でも室内に入る画像はありましたよね」

「それなんだよな。あれさえなければ」

「そうですね」警察官にあるまじき言動である。

「亡くなった男の素性もはっきりしない。公安は本当にわかってないのかな」

「どうですかね。機密事項が絡んでいるとなると、おいそれとは公開できないのかもしれないですね。報道も教えろと大騒ぎですがね」

「あと、殺されたやつが言っていた神ってなんだろうな」

「宗教上の話ですかね」

「そんなものほんとに探すのか?」

 駒込が両手を上げて、お手上げポーズを取る。

 西城は未だ身元が不明の宿泊客リストを確認する。

「あと、未だ行方がわかっていないのが、スズキイチロウか」

「カードが偽名だったやつですね。しかし、どう考えても偽名ですよね」

「そうだな。ただ防犯カメラでもはっきりしていない。というか、カメラを避けてたな」

「十分、あやしいですね」

「さて、どうするかな。いよいよ阿礼に頼むか」

「ああ、西城さん、今、真加部は不在ですよ」

「そういや、そうだったな。いや、でも調査ならパクが出来る。真加部は肉体労働でパクが頭脳労働専門だからな」

「でもパクさんは極端な人見知りですから」

「パクに連絡するときはメールか、ラインがいいぞ。よく言われるんだ。対面しなければいいんだってさ。でも俺はどうもあれが苦手でさ。電話で依頼する」

 西城が電話をかける。

「ああ、パクか、調査してほしい案件があるんだ」

 パクが何か言っている。

「大丈夫だよ。署の経費で落とすから。ところで、お前、この前のロイヤルホテルの自殺騒動を知ってるよな」

 西城がスピーカーフォンにする。

『ああ、知ってる』

「あれが殺人の可能性がある。それで今、当日の宿泊客を確認しているところだ」

『なるほど、いまだわかってないやつがいるということだな』

「そうだ。そいつはカード名義がスズキイチロウで、防犯カメラ画像も無いに等しい」

『何号室に泊まっていたんだ』

 えーと、そういいながら西城がリストを確認する。

「1504号室だ」

 パクが沈黙している。もう何かを調べているのか。

『おそらく、そいつが犯人だ』

 西城と駒込が顔を見合わせる。

「お前、何を言ってる」

『だから、そのスズキイチロウが犯人だよ』

「どうしてそう思うんだ?」

『死んだWAN FANはその隣の部屋だ』

「確かにそうだが、部屋から出て行った形跡はなかったんだぞ。どうやって殺したと言うんだ」

『窓から出たんだろ』

「いやいや、無理だよ。隣の部屋まで行くのに3mはあったぞ。窓にそういった足場も無かった。飛ぶしかないぞ。阿礼でも無理だ」

『いや、出来るだろ。その上に屋上があるよな』

 西城が資料を確認する。たしかに15階の上には屋上がある。

「あるにはあるが、15階から屋上に行くのにも3mぐらいあったぞ。足場も無くて飛べないだろ。それと屋上には鍵が掛かってるし、防犯カメラ画像からも屋上への出入りは無かったんだぞ」

『なるほど、そういうことか』

「な、無理だろ」

『一つだけ方法があるな』

「どんな方法だ」

『屋上の構造を見ると柵はないみたいだが、コンクリートの出っ張りはあるよな』

「そうだったかな」西城は駒込を見る。彼も知らないと首を振る。

『屋上までロープで登ればいいんだよ。その後、屋上から隣の部屋までそのロープで降りればいいだろ、阿礼ほどの運動神経もいらない。そこそこの諜報員なら可能だよ』

 西城たちははっとする。確かにそうかもしれない。二人でうなずきあっている。

 パクが言う。

『じゃあ、こっちでスズキイチロウを調べればいいんだな。人探しの料金は20万でいいか』

「ああ、いいぞ。見つかれば、そのくらい安いもんだ」

『了解』

 ここで駒込が話す。

「パクさん、阿礼さんは戻ったんですか?」するとパクは何故か黙っている。何か息をのんだようだ。

 西城が話す。「阿礼は戻ったのか?」

『いや、まだだ。どうも長引きそうだ』

「そうか、それは困ったな」

『じゃあな』

 電話が切れる。

 西城が不思議そうな顔で駒込を見る。

「ゴミはパクに嫌われたのか?」

「いや、そんなことは無いと思うんですけど」

 2枚目は意外と鈍感である。

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