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私立探偵 真加部阿礼  作者: 春原 恵志
真加部阿礼の過去
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ナパ・テープタイ

 再びエレベータに乗った真加部は下に行くことなく、上に向かう。5階建てのビルの最上階まで行くと、近くの階段を使ってさらに上に向かう。

 その突き当りに屋上の扉があった。

 真加部がドアノブを回すと鍵が掛かっていた。リュックから工具を取り出し、なんなく開け、屋上に出る。

 屋上は明かりも無く、逆に周囲の明るさで照らされていた。周囲を見ると、まさにタイの不夜城を満喫できる眺めが見える。そこは倉庫のようになっており、段ボールや不要な家具、電化製品が所狭しと置いてあった。先ほどのナパが監禁されていた部屋は外に面している。下から確認したところ、そこには小さな小窓もあった。

 小部屋のある場所の上まで来ると、道具を出す。屋上周囲を囲ってある金属製の手すりに金具を使ってロープを取り付ける。そこから下を確認すると小部屋は大通りには面していない。狭い路地側に位置している。人目に付かないとはラッキーこの上ない。

 音をたてない様にロープを下までゆっくりと垂らす。

 ロープの端が地面に到達したのを確認するや否や、真加部は飛び降りていく。実際、ロープを掴んではいない。そのまま自然落下していくのだ。そして3階の小窓付近まで落ちると、ジャッキが掴むように両手でロープをがっちりと保持する。手袋が焼ける匂いがした。ただ、真加部は平気だ。ここまでほんの10mぐらいの落下なのだ。彼女にとっては何ともないことだ。

 片手でロープを掴んだままで、リュックからガラス切りを出すと小窓のガラス、シリンダー錠の部分を小さく丸く切り取る。ガムテープを使ってガラスを押し込むようにし、それを器用に外す。手を入れるとシリンダー錠を開けた。

 音も無く、小窓を開け、するりと中に入る。

 薄暗い中に真加部の母親、ナパがいた。一瞬驚いて声を上げそうになるのを瞬時に真加部が口をふさぐ。ナパは床に縛られていた。

「マーマー静かに」

 それでナパは暗い中、声の主がわかったようだった。目を丸くしている。

「もう大丈夫だから、これから逃げるよ。とにかく静かにして」

 ナパはわかったと小さくうなずく。

 真加部はナパのロープを切ると、彼女を抱えて窓まで運ぶ。ナパは目を白黒させている。

「マーマー、頑張って外のロープを掴んで」

 真加部が抱えたナパが、小窓から上半身だけ出すと、外に垂れ下がっているロープを両手でつかむ。つまり、ナパは窓越しに上半身だけ外に出した状態で、お腹を窓の桟に乗っけている。

 真加部はナパの脇の隙間から、窓の外に乗り出していく。

「マーマー、頑張って声を出さないようにしてね」

 ナパは何が起きるのかわからないが、とにかく必死でロープを掴んでいる。

 真加部は窓から完全に外に出ると、左手でロープをしっかりつかむ。さらに右手で窓から半分出ているナパの体を掴む。そしてナパにロープを離すように言う。真加部はナパを窓から外に抱えだす。ナパは恐怖でこわばるが、とにかく声を出さないように必死に我慢する。

 今や真加部は左手一本でロープを掴み、右手一本でナパを抱えているのだ。ナパはあまりのことに目をつぶっている。これほど怖い体験は無いだろう。

 そして真加部はナパを気遣いながら、ゆっくりと下に降りていく。両足を壁に付けながら、一歩ずつ確実に下まで行く。

 ゆっくりと1分ほどかけて、なんとか下に到着する。

 真加部は笑顔で言う。

「マーマー着いたよ。さあ走って、ここから逃げるよ」

 ナパはうなずいて、走り出す。ナパの走る速度に合わせて、真加部も走る。

 こうして救出作戦は無事成功した。

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