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私立探偵 真加部阿礼  作者: 春原 恵志
アルラアナ呪われたもの
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アルラアナの真実

 駒込は読み終えると報告書を置く。

「ちょっと待って、どういうことですか?」

『どういうことって、アルラアナは死んだ』

「いや、このアルラアナって阿礼さんじゃないんですか?」

『おお、そうか、気が付いたか』

「いや、そりゃ誰だってそう思いますよ。だってここを読めって言ったじゃないですか」

『ま、そういうことだ。アルラアナは砂漠に散ったんだ』

「そんな」そう言いながら駒込は何かに気づく。「まさか、阿礼さんはサイボーグなんですか?」

『いやいや、SF小説じゃないんだから』

「じゃあ、どういうことです」

 マカアレが画面の中で躊躇している。何故か妙にかわいらしい。

『これは報告書だろ、ほんとのことは書けないんだよ。だからアルラアナは死んだ』

「どういうことです?」

『依頼された任務を遂行しないわけにはいかないだろ』

「つまり嘘の報告をしたんですね」

『嘘も方便だよ』

「本当はどうなったんですか?」

『しょうがないなあ。じゃあ、ほんとの話』

 そういうとマカアレことパクミンヘが話した内容は次のような事だった。


 結局、隠れ家から見つかった遺体は8体あった。ただ、子供の遺体は無い。

「アルラアナは見つからないな」

 ジェームスは文伍を見る。

 ここは文伍が判断するしかないだろう。現場の最終責任は文伍にある。

「この状況だと、アルラアナは死亡でいいだろ。戻ろう」

 ジェームスが親指を立てる。

 突然だった。

 思いもよらない離れた砂漠から、黒い影が現れた。

 それはまさに稲妻の様だった。

 ジェームスが銃を構えるが、それよりも早く、ジェームスに向かってナイフが一閃する。

「殺すな!」文伍が日本語で叫ぶ。

 あろうことか、黒い影、アルラアナが一瞬、躊躇する。その隙に文伍がアルラアナを抱きかかえる。ジェームスの銃口がアルラアナと交わる点を遮ったのだ。ジェームスは文伍を撃つわけにはいかない。

「殺すな」文伍はアルラアナに繰り返す。

 アルラアナがうめく。「は・な・せ」やはり日本語だ。

「もうやめるんだ。やめてくれ」

 ジェームスは何が起きたのか、わからない。なぜ、文伍がアルラアナを助けるのか、そしてアルラアナは何故抵抗しないのだ。

 ジェームスが聞く。「どういうことだ」

 文伍が必死に言う。「俺が責任を取る。ちょっと待ってくれ」

 そうしてアルラアナに向き合って言う。

「日本語はわかるのか?」

 すると驚くことにアルラアナは流ちょうな英語で話す。

「日本語は片言しかできない。英語なら話せる」

 ジェームスが驚く。

「どういうことだ」

 文伍がジェームスに言う。

「おそらく、この子は連れてこられたんだ。アジアのどこからか、場所はわからないが傭兵としてここに。この子は女の子だ」

「まじか」

「タリバンで女の兵士はありえない。タリバンが考えるイスラムの教えに反するからだ。だから、アルウラワナは男として戦っていた。他の部隊の連中にもこのことは秘密にしていた。だからアルラアナは表に出てこなかった」

 アルラアナは肯定も否定もしないが、文伍をじっと見ている。

 文伍がアルラアナに言う。

「いいか、もう人殺しをしなくていいんだ。俺が助けてやる」

 相変わらず返事をしない。ただ、抵抗もしない。

 ジェームスが言う。

「いや、文伍、大丈夫なのか、任務を逸脱してるぞ」

「ああ、大丈夫だ。俺がスミスと話を付ける」

 そうして文伍はアルラアナに向かって言う。

「いいか、お前は俺の娘になれ、ああ、便宜的にだ。お前が独り立ち出来たら好きに生きればいい。とにかくここにいてはだめだ。ここはまともな人間がいるところじゃない」

 ジェームスはあきれて、両手を上げる。

「好きにしろ」

 こうしてアルラアナは文伍の娘になった。

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