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私立探偵 真加部阿礼  作者: 春原 恵志
アルラアナ呪われたもの
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アセット(情報屋)

夜になってホテル(と言ってもコンクリート製の単なる学校のような施設だが)にアセットが来た。

 夜になるとタリバンは活発になる。米軍施設への攻撃なども頻繁に行われることがしばしばである。ただ、さすがにマルシェ作戦から日もないことから、現在は反撃の体制作りが主体で、それほどでもないようだ。アセットはそういうことで来訪できた。

 ターバンと民族衣装をまとっており、やはり顔には髭がある。こちらに来てから髭を生やしていない人間を見ることの方がはるかに少ない。年齢は30歳ぐらいだろうか、文伍の部屋に入るのにも警戒していた。

 文伍と握手を交わし、胸に手を当てて何かつぶやく。

 ジェームスはこういった挨拶に慣れているようで、同じ言葉をつぶやく。

「アッサラーム・アライクム、貴方に幸福あれと言った意味です」

 ジェームスが通訳すると、アセットが話す。

「英語はかたことしか話せません」

 ジェームスがパシュトー語で答える。おそらく大丈夫ですと言ったところか。以降は現地語で話し、ジェームスが通訳する形になった。

「あなた方が聞きたいのは赤い部隊の『アルラアナ』のことですね」

 文伍達がその通りだと答える。

「実は私もよくわかっていません。赤い部隊は発足して日が浅い。元々アルカイダなどの外から来た部隊です。私もパキスタン出身です。それでアルラアナはやはりパキスタンから入ったようです」

「時期はわかりますか?」

「アフガンに来たのは半年ぐらい前ですか。その前はパキスタンで軍事訓練をしていたようです。アルラアナだけではなく、その部隊全員がそうです」

「赤い部隊として、まとまってるわけではないんですか?」

「そうです。寄せ集めの部隊です。概ね10人程度のグループが上の指示で個別に動いています」

「アルラアナもそういった部隊の一員というわけですね」

「そうです。10人ぐらいいて、聞いたところによると外人の傭兵部隊のようです」

「傭兵?」文伍とジェームスが顔を見合わせる。

「パキスタンで編成はされましたが、元々は違う国から来たようです」

 文伍は気になっていることを言う。

「日本からと言うことは無いですか?」

 アセットは目を丸くする。そして首を振って「それはありえません」と言った。「ただ、アジアからとは聞いたことがあります。そういう部隊に日本人はいないですよ。日本は平和な国でしょう」

 文伍はそれを素直な意味として取る。

「アルラアナについて何か情報はありますか?」

「聞いた話です。やはり小さい男のようです。それでいて異常に機敏に動く。銃だけでなく、格闘技能にも優れているらしいです。まさにモンスターだと言われています」

「貴方たちも見たことが無いのですか?」

「どうですかね。わざと隠しているのかもしれません?」

「わざと?どういうことです」

「それはわかりません。あの部隊は元々謎が多い」

「何と言う部隊名ですか?」

「彼らは『ナール・アルラアナ』ラアナの炎と呼ばれています」

 アルラアナを中心にしたグループだということか。

「そうですか、では現在の居場所はわかりませんね」

 するとアセットは今日初めてにやりと笑みを見せる。

「実は現在、カンダハルにいます」

 二人が色めき立つ。

「居場所も特定できました。ここです」

 そういってスマホで地図を出し、場所を特定する。なるほど、ここからだと5㎞圏内だ。

「ここは民家ですか?」

「そうです。郊外の民家になります」

「どうやって分かったのですか?」

 アセットが言いよどむ。それで文伍は理解する。

「これからカンダハルの米軍基地を襲う作戦があるということですね」

「そういうことです」

「なるほど」

 アセットも赤い部隊に所属している。これ以上聞くのは酷というものか。最後に文伍は聞いてみる。

「パシュトー語で『おとこ』と言う言葉はありますか?」

「おとこ」そう言って少し考える。「ウタクという言葉はあります。小さいとか幼い、子供といったところですかね」

 そういうことかと文伍は思う。あの子供は自分のことを小さいからと言ったのか。

 アセットに金を渡し、彼は去って行った。

 文伍とジェームスは話し合う。

「どうしますか?」

「現地に行って状況を確認しよう。早い方が良い」

「当然、武装するんですよね」

「ああ、夜間用の装備もしよう。これで任務が完了出来たら、それに越したことは無いからな」

「了解」

 ことのほか、任務は早く終わりそうだ。しかし、どこか文伍は引っ掛かっていた。

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