表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私立探偵 真加部阿礼  作者: 春原 恵志
地下アイドル
43/130

地下アイドル

 真加部は探偵社の鍵を開けようと、ドアノブを触って、すでに開いているのに気づく。

 急いで部屋に入る。パクの部屋から音がする。

 勢い勇んで扉を開ける。「パク、戻ったのか?」

 部屋ではパクがいつものようにパソコンに向かっていた。

 パクが振り返る。さすがに少しやつれたようだ。

「お母さんはどうだった?」

「ああ、抗がん剤が合わなかったみたいだ。体力も落ち気味で心配したんだが、なんとか持ち直した。これから新しい抗がん剤を試すそうだ」

「そうか」

「何が効くかわからないからな。色々試すしかない」

「そうだな。新薬も次々と出てるからな」

「阿礼、それで金が要る。もっともっと仕事をしないと」

「大丈夫だ。仕事は続々と来てるぞ」

「そうか」

「今日もこれから人と会う約束だ」

「へー、どんな案件だ?」

「パクは知ってるか?ナードっていうアイドルグループだ」

 パクは目をむく。「まじか!ナードは新井薬師が生んだスーパーアイドルだぞ」

「なんか、そうらしいな。俺はよく知らなかったんだが、そんなに有名なのか?」

「新井薬師どころか、これから全国区になろうというアイドルだ」

「パクは詳しいな」

「もちろんだ」

 パクは自慢げに胸を叩くと、画面に何かを映し出す。

 プロモーションビデオなのか、5人組の女の子たちが踊り狂っている。そうなのだ。踊ってる感じではない。狂ったように踊っている。歌っているようなのだが、とにかく彼女たちのダンスが強烈だ。画面もCG加工しているのか、彩色要素が半端ない。

「なんか、すごいな」

「そうだろ、これが新井薬師で見れるんだぞ」

「パクは見たことあるのか?」

「無い。人混みは嫌いだ」

 真加部はあきれる。まあ、確かに真加部も人混みは好きではない。

「ナードはマネージャー兼プロデューサーの浜辺純璃愛はまべじゅりあが実験的に始めたユニットなんだ」

「実験?」

「ナードが発足当時、浜辺は大学生だったんだが、社会心理学を専攻していたんだ。その卒論のテーマとしたのが、地下アイドルだった」

「ほー」

「どういったアイドルが、今の世の中で求められているのかを学術的に追及したのが、ナードだ。そしてどうやれば売れるのかも研究した。ナード(Nerd)の意味はオタクだな」

「なるほどな。究極のオタク文化といったところか」

「今のアイドルを分類すると、KPOPか、王道のアイドルグループ、それと特殊性とでもいった特徴満載のグループに分けられる」

「そうなのか」

「大まかに言ってだよ。その中でもナードは後者の特殊性に特化しているんだが、とにかくダンスが強烈だ」

「プロモにあったやつだな」

「ナードの存在自体が、今の若者が持っている、社会に対する閉塞感の受け皿になっているんだ」

「ほー」パクの分析はすごいと素直に感心する。こいつは音楽評論家にでもなるつもりか。

「そしてナードはアスリートの集団でもあるんだ」

「何だ。アスリートって?」

「元運動選手の一流どころを集めて、ユニットにしてるんだ。各々がオリンピック候補だったらしいぞ。そういった運動神経をベースに、ダンスやパフォーマンスをさせている。だから強烈なんだよ」

 真加部はパクのオタクぶりに感心している。

「浜辺の目論見は見事に当たって、ナードは1年足らずでアイドルとしての地位を確立した。そして今や全国区になろうとしている」

「全国区か」

「メジャーデビューって意味な」

「なるほど」

「今度、そういった地下アイドルを集めたコンテストがある。そこで優勝するはずだ」

「そうなのか」

「そうなるといよいよメジャーデビューだ。大手のプロダクションが付くからな。それでそのナードが何の用だ?」

「何でもストーカー被害にあってるそうだ」

「まじか、ストーカーか、やっかいだな」

「まあな。詳しい話は会ってするそうだ」


 するとちょうどチャイムが鳴った。依頼主の登場だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ