表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私立探偵 真加部阿礼  作者: 春原 恵志
100%の危機
129/130

佐橋家の庭

 さらに翌日。

 阿礼は一人で佐橋家を訪ねる。悠馬がいない時間に行きたいということで午前中になった。

 父親は仕事があるので母親が応対する。

 母親がお茶とお茶菓子を持ってきて、阿礼の前に座る。若干、汗ばんだ顔で体調が悪いのかもしれない。

 阿礼が庭を見る。居間からは窓越しに狭いながらも庭が見えている。

「先日、来た時も思ったんだが、庭に花壇があるな。あれは新しく植えたのか?」

 母親の目が泳ぐ。

「あれを植えたのはいつだ?」

「いつだったかな…」

「11日以降。もしくは当日かもな」

 母親は首を垂れた。

「あの下に探し物があるんだな」

 母親は天井をむいて小さく息を吐いた。

「やっぱりそうか」

 母親は黙っている。

「悠馬のせいなのか?」

 母親があっと小さくつぶやいた。

「悠馬が猫に何かを与えたんだな」

「どうしてそう思うの?」

「いなくなった日のことだ。猫は風邪気味だった」

「いつも餌を与えないようには言ってたの。ただ、私が気が付かないところであげてたみたい。あの日も朝、学校に行く前に何かを食べさせた。私が気が付いた時はチャッピーはぐったりとしていて、医者に連れて行こうとしたんだけど、もう息がなくてね」

「多分、風邪薬かもしれないな。アセトアミノフェンが入っていると猫には猛毒だ」

「あ、そうか…、チャッピーが風邪っぽかったから、自分の風邪薬を上げたのかもしれない」

「そうだな」

「悠馬が自分を責めるかもしれない。そう思って庭に埋めたの」

「じゃあ、悠馬が探しだしたときは慌てたんだな」

「ええ」

「本当のことを言うわけにはいかないか…」

「悠馬には酷な話だもの」

「わかった。そういうことなら、うちの調査は終了だ。悠馬に説明するかどうかは貴方たちにまかせる。俺の方からは悠馬には何も言わない。もちろん、そちらが行方不明のままにしてくれと言うなら、それに従うよ」

 母親は少し考える。

「主人とも相談します。どうするか」

「そうか。まかせる」

「でもどうしてわかったの?」

「ああ、犬のおかげだよ。あの犬は警察の追跡犬だったやつで、匂いには敏感なんだ。彼は何度やっても家に入ろうとするんだ。あの猫は家猫だからそうなのかもと思ったけど、あまりに頑固に家に行こうとするから、話を聞いてみた」

「犬に話を?」

「そう、彼に聞いたんだ。すると間違いなく家にいるって主張した」

 母親は笑顔を見せる。

「犬の気持ちがわかるのね」

「まあ、そういうことだ」

 庭に新しく植えた花が風に揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ