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私立探偵 真加部阿礼  作者: 春原 恵志
100%の危機
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由比ひまり

 その日の夜になって、再び美少女が真加部探偵社を訪れる。

 ソファに座った由比は少し不安げだ。

「あのう、どういうことでしょうか?」

「電話じゃ失礼と思ったので来てもらった。結論から言うと採用だ」

「え、どうしてです」

 阿礼は困る。

「うーん、採用したいから採用なんだけどな」

「だって学生はだめだって言ってましたよね」

「ああ、そのことな。うちの探偵社の後見人というか、経理関連を見てもらってる人がいるんだけど、学生でも問題ないって言うんだよ」

 由比は増々疑いの目をむける。

「つまりはバイトで採用するんだ。時給は2000円でどうかな」

「はあ…」

「わかった。3000円だ」

「え、そんなに…」

「ああ、高すぎるか?」

 たまりかねたようにパクが奥の部屋から出てくる。

「阿礼、ちゃんと話せ」

 由比が聞く。

「何ですか?」

「実はな…」

 そう言って今回の一件を由比に説明する。

 話を聞いた由比は納得の表情で言う。

「そういうことですか。いいですよ。やってみます」

「そうか、ありがとな」

 パクが由比に質問する。

「それで確認だけど、本当に動物の考えている事が分かるの?」

「そこまではっきりとわかるわけではないんです。ただ、ぼんやりと気持ちみたいなものがイメージで捉えられるって感じです」

「どうやって?」

「一番、よくわかるのは頭どうしを当ててみます。そうすると思い見たいなものが見えてきます」

「確実に?」

「ああ、完璧じゃないかもしれません。動物によります。でも犬は人間に従順だし、それなりに感じます」

「人間はどうなの?」

「人間は難しいです。人は感情を殺したりするじゃないですか」

 阿礼がそれについて言う。

「だけど、俺の気持ちはわかったよな」

 由比は笑顔だ。

「真加部さんは見えました」

 パクが言う。

「動物並みに単純だということか」

 由比は笑顔のままで肯定も否定もしない。

 若干、ぶすっとした阿礼が言う。

「じゃあ、確認の意味でこのデュークが何を考えているかわかるか?」

 フロアにぼんやりと座っているデュークを指さす。

 由比はデュークをじっと見る。そうして彼に近寄る。

 デュークがぼんやり見上げる。

 由比はデュークをなでてやる。デュークはいつものはっきりしない反応でうれしそうなのか、そうでないのかよく見えない。

 次に由比は自分の頭をデュークの頭に当てた。少しそのままでいる。

「頭を当てるんだな」

「しっかりと考えてることを知る時は、これが一番よくわかります」

 デュークの考えが見えたのか、由比が話す。

「この子、言いたいことがあるんだけど、わかってもらえないみたいです。それでもどかしいって思ってます」

「言いたいことって何だ?」

「そこまではわからないけど。多分、猫探しのことだと思う」

「そうなのか」

 阿礼は考える。

「わかった。ひまりは明日は大丈夫か?」

「学校が終わってからでいいですか?」

「いいぞ。何時だ?」

「じゃあ、4時に来ます」

「ああ、そうしてくれ」

 それを受けてパクが話す。

「じゃあ、労働条件の確認だ。時給は3000円。バイトだから仕事ができる時間をあらかじめシフト表に記入してくれ。表はネットに上げておく。それに合わせてこっちで仕事を割り振るから」

 由比は真剣に聞いている。こういうところは阿礼よりもしっかりしている。

「わかりました」

 阿礼が付け足す。

「普段は書類書きが多くなるぞ。いいか?」

「書類ですか…」

「探偵業のもっとも重要な部分は、報告書にあると言っても過言ではないんだ」

 パクがあきれてみている。

「慣れてきたら、探偵業も色々教えていくから」

「わかりました」

 阿礼は報告書作業が減るのでほっとしていた。


 由比が帰った後にパクが阿礼に話をする。

「なんとかなりそうだな」

 阿礼は少し考えをまとめているようだ。

「どうかしたのか?」

「うん、何か見えてきた気がする」

「見えてきた?」

「今回の行方不明の謎だ」

「居場所が分かったのか?」

「それを明日確かめる。ひまりがいれば大丈夫だ」

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