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私立探偵 真加部阿礼  作者: 春原 恵志
ボディガード シーズン2
108/142

追跡

 探偵の必死の調査でホテル周辺の防犯カメラ画像が収集される。とにかく彼らにとっても命の危険を感じるような案件なのである。

 車輛で逃走したとすれば、2時半から3時までの車輛が臭いわけだ。それを元に画像を漁る。その時間にホテルから出てきた車輛はタクシーが2台、乗用車5台だった。拉致したとすれば、おそらく大型のワゴンタイプなので、該当車輛はすぐに特定できた。

 黒のアルフォードだった。ただし、乗車人数やナンバーまでは確認できなかった。乗り込むときの画像が無かったのだ。よって人海戦術で該当車輛の特定を急ぐ。

 ただ、如何せん探偵社には警察のNシステムなどはない。そうなるとまさにしらみつぶしだった。


 いつまでもホテルにいるわけにはいかないので、アナンと西園寺は探偵事務所で待機する。ミューズ探偵社という新宿区にある会社である。

 探偵社の会議室に西園寺とアナンがじりじりして待っている。アナンは今にも爆発しそうな雰囲気である。子分格の川谷はヒヤヒヤしている。

 時刻は15時を過ぎたところだ。

 アナンが西園寺をにらむ。

「まだか」

 西園寺が状況確認のため、会議室を出て行く。

 アナンが残った川谷をにらむ。さすがはタイの組織幹部である。それだけで川谷はちびりそうになる。

「ガンジャあるか?」

 川谷はキョトンとする。アナンが言い換える。「マリファナ」

「ああ、はい、少し待ってください」

 川谷も部屋を飛び出す。むしろ二人きりから解放されて喜んでいる。

 西園寺が顔を出す。

 後ろから白髪頭の探偵が続く。メモを見ながら話し出す。

「車種はアルフォードの40系で色や特注パーツもあることから絞り込めました。それでも1000台近く販売実績があります。さらに探ったところ車にカスタマイズされた跡がありました。ディーラーにその履歴がないことから、おそらく盗難車だと思われます」

 アナンがにらむ。「それで」

 白髪探偵が西園寺に助けを求める。

「ええ、盗難車までわかったので、うちのほうでそのルートを当たっています」

「そ・れ・で!」

 アナンの目が血走っているのがわかる。

「もう少しお待ちください」

 アナンが爆発する。手前のテーブルを蹴り飛ばす。凄まじい音がロビー中に広がっていく。別のフロアから悲鳴が聞こえる。

 それで少しは落ち着いたのか、アナンが首を垂れ、大きなため息をつく。

 顔をゆっくり上げると「お前らもう命がないと思え」とぽつりと告げた。

 西園寺はそれなりに肝が据わっているので、平然としているが、探偵は今にもちびりそうな顔で青くなっていた。

「クン・アーイに定時連絡する時間だ。もう報告するしかない」

 探偵がつばを飲み込む。

 西園寺が顔を天井に向けた。

 唐突に西園寺のスマホが鳴る。

 宛名に見覚えがあるようだ。

「はい西園寺…」話を聞いている様だ。「わかった」そういってアナンを見る。

「坊ちゃんは無事です」

 アナンが驚く。

 西園寺が電話を続ける。しばらく話して電話を切る。

「坊ちゃんは阿礼と組事務所に向かっています」

「どういうことだ?」

「詳しい話はそこでするそうです。とにかく坊ちゃんは無事でけがもないそうです」

 アナンもそれで一安心したのか、がっくりと首をたれた。

 西園寺が探偵に話す。

「そっちでも引き続き車の持ち主を当たってくれ。襲撃犯の素性を知りたい」

 探偵は少しだけ安心したのか、若干弛緩した顔でうなずいた。

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