東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ
宿泊はもちろん東京ディズニーシー・ホテルミラコスタである。
それも最高級のスイートルームだ。ご存じない方に説明するとディズニーリゾートで泊まるとすれば、ここは最適解のホテルである。もちろんただ単に宿泊するとなればさらにいいホテルはある。ただ目的がディズニーで遊ぶとなればここになる。夢の国にある夢のホテルなのである。
当初、阿礼は別室に泊まるはずだったが、ジラワットがどうしても阿礼と一緒が良いと言うので、ジラワットと同室となった。一緒に泊まるはずだったプロレスラーたちはスイート入り口で警護にあたることになる。
ジラワットは阿礼を気に入ったようだ。まあ、他はむくつけき男たちばかりである。子供の選択肢は限られているのだ。小柄でどこか少年のような雰囲気を持つ阿礼を気に入るのは、自然なことかもしれない。
部屋に入るとジラワットが阿礼に言う。
「阿礼はタイ語以外に何語が話せるんだ?」
「俺はけっこう話せるぞ。日本語はもちろん、英語、スペイン語、中国語、あとはちょぼちょぼかな」
「なんだ。ちょぼちょぼって?」
「そうか、言わないのか、ニッ・ディアウということ」
「少しだけか、僕は英語が話せるぞ。それと中国語がちょぼちょぼだな」
「ほー、それはすごいな。中国語はどうして話せるんだ?」
「父さんが勉強しろって言うんだ。必要だからって」
「ああ、そういうことか、それは間違いないな。北京語を勉強しているのか?」
ジラワットは不思議そうな顔をする。
「何だ?北京語って」
「中国は広いんだ。北京語が公用語になってるが、広東語などは別物に近いんだ。タイ語とラオス語の違いぐらいかな」
「そうなのか。阿礼は物知りだな。うちの家庭教師ぐらいかな」
「そうだ。ジラワット、少し休んだ方がいいぞ。これからランドに行くんだろ?」
「大丈夫だよ。飛行機で寝てきたからもう行こうよ」
「わかった」
真加部が部屋を出ようとすると、外から扉が開く。
西園寺がアナンと共に現れる。
「真加部、アナンさんがお前の実力を見たいそうだ」
アナンが言う。
「うちのボディガードと軽くスパーリングをやってくれないか?」
「大丈夫だ。どこでやる?」
「ホテルの許可は取った。駐車場を貸し切った。そこでやろう」
「了解だ」
ジラワットが心配そうな顔になる。それを見た阿礼が言う。
「ジラワット、俺は強いぞ。大丈夫だ」
「阿礼、お前は知らないんだ。うちのボディガードはプロボクサーのチャンピオンとムエタイの達人だぞ」
「そうか。情報ありがとな」
阿礼は親指を立てた。




