表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

来週のラッキーアイテム!

2025/01/04追記

・誤字脱字等の修正

「来週のラッキーアイテムは…、ノーパンとニプレスでーす!」


 コメンテーター達が吹き出したのを合図にしたかの様に、スタジオが大爆笑に包まれる。そして、隣からすかさず「馬鹿言ってんじゃねえよ」とツッコミが入る。


「いや、今週のTバックのパンティよりマシだろ!」


 反撃代わりに投下したボケが炸裂したところで、堅物なコメンテーターも大笑いが止まらなくなった。

 もはや収拾がつかなくなったスタジオの中で、かろうじて持ち直したアナウンサーが「それでは、また来週の木曜日に!グッバイ!」と笑いながら締めくくり、夜の報道番組「グッバイタイムズ」が終了した。


 昨夜放送されたグッバイタイムズの見逃し配信を朝の電車で見てしまった僕は、イヤホンを耳から引っこ抜いて笑いを堪える事に必死だった。その挙動不審さが目についたのか、軽蔑の眼差しを向けている若い女性と目が合ってしまい、慌てて目線を反らした。


 しかし、このくらいの気まずさなんぞ、2週間前の最悪な一日と比べれば些細なことである。


 あの日は本当に辛かった。朝から遅刻はするし、彼女と些細なことで喧嘩別れとなったし、授業料の足しにする為に始めた居酒屋バイトは注文ミス等で散々だった。

 極めつけは帰宅時に自転車で人を轢きそうになったことだ。暗闇から出てきた為に反応が遅れたのが原因であり、幸いな事に事故には至らなかったが、相手の男性にこっぴどく叱られた僕は、相手が引いてしまうほどに泣きながら帰宅していた。


 そんな時に見つけたのが、「グッバイタイムズ」の『来週のテキトー占い』である。

 若手芸人3組が一ヶ月毎に交代しながら、持ちネタや漫才と絡めたテキトーな占いをするコーナーなのだが、大人気のコンビ芸人『カラメルメアリー』の時だけは良いことが起きるという都市伝説だ。

 カラメルメアリーは、基本的にくだらないソフトな下ネタを交えたラッキーアイテムを発表するスタイルなのだが、発表した通りのアイテムを身につけると良い一週間になると、当時のSNSの書き込みで少しだけ話題になっていた。


 いつもなら一蹴する様な話題も、メンタルがドン底の僕にはとても有益な情報に見えた。

 藁にも縋る思いで実行に移すと、妙に思考が研ぎ澄まされ、実直かつ積極的な性格になっている事に気がついた。染み込むように講義の内容が頭に入ってくるし、バイトの際も頭が冴え渡り、身体が思い通りに動いてくれる。


 もはや別人になったような感覚だった。


 それからは毎朝、僕はカラメルメアリーの発表通りに“ラッキーアイテム”を身に着けて大学に通っている。しかし来週はニプレスと発言していたが、通販サイトでニプレスは販売しているだろうか?


 そう考えているうちに、電車は大学の最寄り駅に到着した。扉が開くと同時に、まわりの人達がお尻に手をあてながら降車していく。スーツ姿の真面目そうな女性も、ガタイの良い強面な男性も、高校生や高齢者も、老若男女問わずお尻を気にしながら歩いていく。どうやら皆も仲間だったようだ。


 少しの肌寒さをズボン越しに感じつつ、僕は幸運を祈りながら改札へと向かった。

 尻の“食い込み”を直しながら。

「ラッキーアイテムが変なモノだったらどうしよう?」

そんな気持ちで書き上げました。

メンタルが弱っている時に限って、変なモノを買ったり信じたりしてしまいますよね…。

おまけに、メンタルが弱るキッカケも、振り返れば些細な出来事だったりで…。

いつでも平常心で冷静な判断をしたいものです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
Tバックのパンティやニプレスなど、何とも癖のあるラッキーアイテムばかりが紹介されているのですね。 番組を知らない人にうっかり見られてしまったら、変人扱いされてしまいそうです。 しかしながら、これだけ同…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ