4.ベッドイン
さ、宿泊先を確保せねば。
ゆくゆくは賃貸住宅も契約したいところだが、とりあえずは今日泊まる場所を探さないとな…
とか、色々考えているとふと一軒の宿が目についた。宿屋『ミミック』て……どんなネーミングセンスだよ。中から魔物でも飛び出してくるんじゃないだろうな。
恐る恐る扉を開け、ごめんくださーい、と声をかける。奥から「はーい」という返事が聞こえたので、
しばし待っていると先ほどはぐれた妹を探していたお姉さんが現れる。
「あれ、さっきのお兄さん!」
「あ、はい。覚えていてくださいましたか。」
お金をせびった相手だからバツが悪い……
「私の妹を見つけてくださった恩人だもの。」
お姉さんは明るい声で続けて言う。
「私、リース。よろしくね!」
「ヤサカ トオルです。」
苗字が珍しいのだろう、きょとんとしている。
これからは下の名前だけで名乗らないと都合が悪そうだな。うんそうしよう。
「あ、呼ぶ時はトオルで大丈夫ですよ。」
「トオルくんね。今日は泊まる場所を探しに?」
「はい。空いている部屋はありますか?」
「ええ。ちょうど1部屋空いていたの。」
お、よかった。今日のところはとりあえず眠れそうだ。
「トオルくんなら、タダで泊まったっていいのよ。」
「え、そんな…申し訳ないです。」
謝礼もらってるわけだしな。
いいのよいいのよ、と言ってリースは半ば強引に俺を部屋に案内する。
「トオルくんはこの部屋ね。」
リースはそう言って俺に鍵を渡す。
ありがとうございます、と礼を言い俺は部屋に入った。
中は最低限の家具が置かれているシンプルな部屋だ。だいたい5畳半といったところだろうか。
「今日はほんと、疲れたなあ・・・」
省エネを自称している割に運動してしまった。
だってしょうがないよね。いきなり異世界転移したんだし。
俺はとても疲れていたようで、すぐさまベッドへと飛び込んでそのまま眠ってしまった。