1.冒険者ギルド
しばらく東の方へと足を進めていると、先程遠くから見えた建物の近くに到着した。
どうやら俺が見た景色は街の裏側らしく、南へ周って街に入る。
「おお、これは中々だな.....」
遠くからでは見えなかった街のあまりの広さに思わず声を漏らす。
とんでもない辺境の街かと思っていたが、意外と人口は多いらしい。
多くの建物が聳え立ち、まるで商店街のようだ。
色々な店の看板を見てわかったことだが、不思議とこの世界の文字を俺は識字できるらしい。
なるほど便利な設定だ。
とりあえず、『ギルド』と書かれた建物へと入る。
以前読んだラノベでも、最初は主人公がギルドで冒険者登録をしていたからな。
ギルド内にも、外と同じように多くの人間がいる。
真っ昼間だというのに、熱心な冒険者の多いこと。
見渡すと、奥のカウンターに座る若い女性がいるのが見えた。
冒険者登録の手続きは、あのカウンターで行えるのだろうか。
「すみません、冒険者登録をしたいのですが。」
「新規登録の方ですね。こちらの用紙に必要事項をご記入ください。」
『冒険者新規登録用紙』と書かれた紙を手渡される。
異世界で初めて話す相手がギルドのお姉さんか.....
まあ、俺の冒険はこんなものだ。
用紙の記入を終え、提出する。
「ええと、ヤサカ トオルさん、ですね。」
お姉さんはどこか混乱した様子だ。この世界じゃ俺の名前珍しいんだろうか。
「冒険者名は トオル にしておいてください。」
と、俺はフォローすると、お姉さんは得心したようだ。
こちらが冒険者カードになります、と金色のメッキを施されたカードを渡される。
カードを見てみると、『ランク:E』という表記があるのがわかる。
「この、ランクってなんですか?」
「ランクとは、冒険者ランクのことで、A〜Eの5段階に分類されています。クエストをこなすことで
冒険者ポイントが溜まっていき、EからD、DからC
というように昇格することが可能です。」
なるほど、ランクを上げるにはクエストをこなす必要があるのか…
ギルドのお姉さんが続けて言う。
「またギルドのクエストの難易度も同じように5段階あり、冒険者ランクと対応しているため、
自身のランクを超える難易度のクエストを受注する(例えばランクCの冒険者がランクBのクエストを受注する)ことはできません。
つまり冒険者ランクを上げることで、より高難易度のクエストを受注できます。」
ふーん、高難易度のクエストの受注には相応のランクがないとダメなのか。
まあ、そこまで難しいクエストを受けようとも思わないし、ランク上げに神経質にならんでもいいか。
何より、面倒くさいし……
お姉さんに礼を言いカウンターを離れ、透はクエストが張り出されている掲示板の方へと足を運ぶ。
―――どんなクエストがあるのかしばらく見てみたが、俺のランクで受けられるものが残ってなかったので、俺はギルドを後にした。
「ふぅ……。」
ギルドを出て、付近のベンチに腰掛けて冒険者カードを眺めていると、小さな少女に声をかけられた。
「ねえ、お姉ちゃんを一緒に探してくれない?」
めんどくせえ……