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限界突破のエリクシール  作者: 鈴木君
冒険者学校と狂人の宴

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35/40

それぞれの生い立ち


 暖かい日差しに心地よい風。農具をしまう納屋があり、畑には作物や果物が繁っている。6人の学生と教師は果物とお茶が乗ったテーブルを囲んで座っている。一見するとピクニックのような朗らかな光景だが、彼等の表情は暗かった。


夕闇(ゆうやみ)、アスラ、宗接(むねつぐ)ですか…………」


 誰1人として疑うことができないと、進夢(すすむ)は消沈した。3人全員と友達だからだ。


「そんな暗い顔しなくても候補ってだけで分からないのよ? 進夢は3人とも知ってるみたいね」


 暗い表情の3人を励まそうと美怜(みれい)は相貌を崩した。他クラスや郊外にも怪しい人物はいる、決まった訳ではない。


「……そりゃ友達ですし」

「そうよね、もし協力してくれるならその3人がどんな子達なのか教えて。こっちでも調べているけど友人に聞いたほうが情報は確かだし、これはむしろ友人の潔白を証明するって思えばいいのよ。でもこれは強制じゃないから嫌なら断って」


 美怜は1人ずつ確認する。友人を告げ口する事で金を得るような後ろめたい心境だが、皆が依頼の承諾を口々にした。美怜に言われた友達の潔白を証明するという言葉に背中を押されたのだ。


 力羅(ちから)とドーラは話すことが無いからか、どっしりと腰を落ち着かせお茶を飲んだり果物を口にしている。


 最初に進夢が擁護しようと思ったのは勘違いされやすい人物だった。


夕闇望愛(ゆうやみのあ)は、あいつは口が悪いし喧嘩っぱやいけど曲がった事をするような奴じゃないと思います」

「そう。…………確か私達の調べだと弟と兄妹2人暮らしの次世代孤児(ロストチルドレン)。生活の為にお金が欲しくて冒険者(ハンター)になったが、素行が悪くパーティーを組む相手がいないってとこね。2人はどう思う?」


 美怜の質問にまずはルカが反応した。


「私も望愛ちゃんが魔王だとは思えないです。1年の時にイジメられてた女の子を助ける為にイジメグループの女の子達を1人で壊滅させたんです。気に入らないからって」


 ルカは再三に渡ってイジメを注意したのだが、逆効果になってしまうかもしれないと深く踏み入れられなかった。そこで颯爽と現れた望愛が言葉通りに女子達を壊滅させて解決してしまったのだ。その時にルカと進夢は望愛と面識をもった。


「あ~あれねー! 有名な話しだよね、イジメてた子達全員学校辞めちゃって。それで望愛がヤンキーだーって噂広まったんだよね。本人否定するだろうけど助けたとしか思えないよね。私も望愛は魔王っぽくないと思うな~」

「情に厚い子なのね」

「たぶんそう!」


 樹里(じゅり)の適当な返答に難しい顔をした美怜は、ホロの情報を軽く補強する。


『悪い子じゃないらしい』


 その文字が見えて進夢は少し安心した。


「じゃあ次はアスラ・グラトナ。養護施設出身で勇者である柚木勇也(ゆぎゆうや)とは幼なじみ。虐待が理由で施設に入ったらしいわね、性格は明るいと書いてあるけど本当?」


 アスラ・グラトナが虐待されていた。その事実が普段のアスラと繋がらず3人は固まった。想像できないのだ、ナンパで軽薄なアスラが虐待されていたと。


 面食らった進夢が聞き返す。


「虐待?」

(あの馬鹿でかいムキムキがか? ありえねー)


「────そう書いてあるわね、詳しくは書いてないけど施設で預かるほどだからよっぽどのことでしょ」


 ホロの情報を読み返し美怜が肩を竦めると瑠璃色の髪が肩に乗った。むしろ分かるのならその辺りを詳しく知りたかった美怜だが、期待はできないらしい。


「うっそアスラが? あり得ないよただのナンパ野郎だよあいつ。ねえルカ?」


「……う、うん。虐待されてたって話し聞いたことないし、施設のことも殆ど聞いたことないよ。いつも楽しそうにしてるよね」


 情報を提供するどころかアスラの過去を初めて知った3人は、揃って虐待を否定した。美怜としては3人の反応でアスラの人物像が予想できたので成果はあった。


「てことはやっぱり明るい子なのね。普通虐待されてた子って異様に暗かったりするものだけど。それならアスラ・グラトナは監視対象から外してもいいかも」


 ここまで黙っていた力羅がブドウを1粒食べ口を開く。


「────まあまてよ美怜、そこは一応外さないで様子みようぜ」


 話し終えまた1粒食べる。


 その姿を目にした美怜は冷気の噴出を耐えて、歯ぎしりするように喋った。


「…………人が説明してるときに生徒に出してもらったお茶うけ食らって随分偉そうじゃない」

「まあそう言わずにどうぞ」


 ここで助け船を出したのはドーラだった。隙をみて黄金ブドウを美怜の口の中に入れるという荒業にでた。


「──むぐ…………えっ何これ美味しい!」


 眉根を寄せていた美怜が一転して美味しいカフェを開拓したような顔になり。牧場(ファーム)で育てた果物の感想が貰えてドーラは満悦そうだ。


「───ってんな場合かあッ!!」


 肩を上下させた美怜は1人で宙にツッコミを入れた。真面目な雰囲気でやっていたのに力羅とドーラに空気を変えられてしまった。


(愉快な人だなあ)


 進夢は先ほどの空気感とのギャップに笑みを漏らす。最終的に空気を破壊したのは美怜なのだ、可笑しくてしょうがなかった。周りも同じような笑い方をしていて、美怜は顔を赤らめた。


「あーもー! アスラ・グラトナは一応監視! 次よ次! 本田(ほんだ)宗接(むねつぐ)はどんな奴なの? こっちの情報だとNESU(ネス)の研究者と関わりがあるってことで1番有力なんだけど! あと帰りにブドウ少し貰えない?」


 そして最後には欲望を優先させてさらに笑いを誘ってしまった美怜だった。


牧場(ファーム)の詰め合わせを用意します。皆様の分も」

 

 メイドのスイッチを入れたドーラは篭を取り出して果物を摘めていく。

 力羅、樹里は笑いながらお礼を言って、美怜は更に顔を赤くして囁くように礼を言った。


(この人達を恨んでるとか馬鹿みたいだなあ…………)


 このやり取りはルカの力羅パーティーへの不満も和らげた。ルカとしても簡単には許したくないが、許せる理由を探しているのも事実だった。恨んでいるのも疲れてしまう。


「……じゃあ教えて貰える?」


 どこか恥ずかしげにしてる美怜はしおらしく、勝ち気な態度が抜けて可愛らしかった。頼まれた進夢は反射的に頷いたが内心ドキドキしている。


(さすがランキング9のLEVEL7。可愛さもランカーだよな)


「分かりました。宗接(むねつぐ)は何て言うか変わった奴ですよ。アスラとは()()()というか……」

「暗い子なの?」

「いやー暗いとか明るいとかの枠じゃない気がしないでもないですね」


 奥歯に物が挟まったかのような説明に美怜は困った顔をした。


(そう言えば同じクラスになったのにまだ話してなかったな。まあ()()()一緒にいてあいつから近づいてくるわけないか)


「現代に染まってしまった侍だよ美怜ちゃん」


 樹里の突拍子もない説明にルカが笑う。


「的を射てるね。でも宗接(むねつぐ)くんも悪い人じゃないですよ」


 ルカの説明に首を傾げる美怜。


「そう、NESU(ネス)と関わりがあるから黒だと思ったんだけど」

NESU(ネス)ってあのNESUですか?」


 ルカの知るNESUとは能力開発研究機関のことだ。家庭用の魔道具の作成や、冒険者(ハンター)用の戦闘魔道具作成を中心に行っている企業団体で、今の発展した世界はNESUの功績だと言わせるような開発をした。今や電気の代わりになった魔光エネルギーがその1つだ。


「あのNESUよ。あそこの研究開発部門はマッドサイエンティストの集まりだから。本田宗接(ほんだむねつぐ)も研究に魂を売った化物かと思っただけ」


 苦虫を噛み潰したような顔をして美怜は吐き捨てた。過去に何かあったのだろうと容易に想像がつく態度だ。


「あーその宗接は悪い奴じゃないんですけど、研究の虫というか魂を売った化物の気質があるというか…………」


 言い出しずらそうに声をかけた進夢。NESUを嫌う美怜に友人を売るような形になってしまうし、不機嫌オーラを放つ美怜は普通に話しかけづらい。


「あ、でもでも! 宗接(むねつぐ)自信は悪い奴じゃないよ美怜ちゃん!」


 進夢の説明で顔が怖くなってきた美怜に、樹里が慌ててホローをした。ついでに進夢へ口の動きだけで「もうっ」とお叱りを入れた。


(これが学年1の思わせ振り女か。気を付けよう……じゃなくて普通にありがとうだな)


 気を付けているつもりだが、進夢はちゃんと可愛さにあてられている。


「……まだ学生だしそこまで染まってないか」


「研究者という存在は知らない事を追求するのが性なのです。開発室に行ったら人が変わって、人体実験でもなんでもしてしまうのかもしれませんね」


 篭にお土産を詰め終わって暇になったので参加したドーラが妙に説得力のある喋り口調で美怜を煽る。研究者との生活が長かった彼女ならではの回答だ。現に彼女の知る開発者は世界までおかしくしてしまっているのだ。


「ドーラは余計な事いわないの!」

「本当のことを言っただけです」

「それでも、しっ!」


 お母さんのように躾をしているルカだが、内心では不死原(ふしはら)の漏らしてはならないような話をするのではとハラハラしていた。


(軍に狙われるくらいだから、映像を持ってるなんて知られたらどうなっちゃうかわからないよ…………)


 だからといって誰も疑っていないが。

 

「どっちにしろ監視ね。私達もこれからなるべく注意して見てるけど、他にも監視対象はいくらでもいるから」


 美怜が話し終えると力羅が引き継ぐ。


「というより学校の人間全員疑わしいってところだな。今回監視して欲しい奴らは特に不の感情を受けやすい環境にあるだけだし。ま、そこまで気負わずにやってくれ。一応いっておくけどあなたは魔王ですか? なんて聞くんじゃねーぞ。それがきっかけで暴れられたりしたらどうなるか分からないしな。とにかくいつも通りに接してくれればいいから、何か分かったらとにかく俺達に報告だ」


 力羅はそうしめくくった。まともな事を言っているので美怜も余計なチャチャを入れたりしない。しかし最後だけ持っていった力羅に思う所はあったが。

 

(私が最後まで話したかったのに)


 集まった生徒4人がそれぞれ肯定の返事をした。

 

 

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