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今日のお題  作者: 炎華
12/22

今日のお題【虹の橋のたもと その2】

 「あたし、橋を渡る!」

突然言い出したのは、白と茶色のコーギーだった。


 何かに気が付いたように、空を見上げていた嬉しそうな顔が、

だんだん曇って、やがて下を向いてしまった。

コーギーは、しばらくそのままの姿勢でいたが、

やがて、ぎゅっと閉じた目を開け、再び顔をあげると、決心したようにそう言った。

 周りの動物たちは、一斉にコーギーを見た。

「どうして?まだお迎えが来ないのに?」

コーギーは、少し顔を曇らせた。

「誰も、迎えに来ないの?」

おそるおそるフェレットが訊ねた。コーギーはぶんぶんと首を振る。

「ママが、ご主人様が、自分達を待っているなと言ってる、から。」

 周りの動物たちの驚きをよそに、コーギーは話す。

「先に進めと言ってる。ネクスト・ゴーだって。」

 ママは、そんな事を言える人じゃなかったのに、と呟いてから、コーギーは少し微笑んだ。

「動物は、人より早く生まれ変わることができるから、早く生まれ変わって、次に進めって。待っていてくれないのは寂しいけど、あなたが先に進んでくれる方が嬉しいって。」

誰も口を開かなかった。

「次に会えるのが、どれくらい先になってしまうかわからないけど、何百年何千年も先かもしれないけど、必ず会えるから、大丈夫だから、って。」

啜り泣く声が、そこかしこから聞こえてきた。

「生まれかわって、私達を忘れて、新しい飼い主さんに懐いて可愛がられても、あなたが幸せなら、それが一番だって。私は、あなたが先に進めるように、私が、今の人生を明るく前向きに過ごすことで、あなたの修行の助けになるのなら、そうするから、頑張るからって。」

絞り出す様にコーギーが言う。

「だから!あたしは、あの橋を渡る!」

言い終わると、コーギーはそのまま虹の橋に向かって走り出した。

そして、たった一匹で虹の橋を渡って行った。


 コーギーが虹の彼方へ消えてしまうのを見送ると、

 「聞こえたんだね。」

背中の三毛猫が言った。

「ご主人様の声。」

「ご主人様の声?」

「そう、ご主人様の声。」

伸びをして、三毛猫は僕の前に降りた。いつもの様に、見事な着地を見せてくれる。

「ペットは、魂だけになっても、生まれ変わっても。ご主人様と繋がっているんだよ。それをあの子のご主人様は知っていたんだろうね。そして、魂は何度も生まれ変わるということも知っていて、その一つ一つの生が修行だということも。」

三毛猫は言葉を切る。コーギーが渡って行った虹の橋を少し眺めてから、

 「あの子はね、ご主人様のことをすごく心配していたんだよ。ご主人様は、特にママは、すごくネガティブな人だから、ここで待っていてあげなくちゃいけないって。ママの事を見ていてあげなくちゃいけないって。でも、あの子のママは、あの子が思う以上に何かを悟ったんだね。それで、先に行け、と言ったのさ。」

 それが事実なら、何故この猫は、そんなことを知っているんだろう?

僕と同じ立場なら、そんなことは知らないはずなのに。

「何か言いたそうな顔をしてるじゃないか。」

前足を舐めるのを止め、三毛猫は僕を見た。

「なんでそんなことをご存じなんですか?」

思わず敬語になる。

三毛猫は、にっと笑うと、

「さあてね。」

と、答えて、また前足を舐め始めた。





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