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天空都市セレスティア


 遠くから見る天空都市は小さく、青い空に浮かぶ雲に何かの影が落ちたようにログの目には映っていた。


 しかし近付くにつれ彩り豊かな群青の雲海が光を受けて煌めき、そこにはまるで夢のような美しい風景が広がっていた。


「凄い……まさに俺が想像していた通りの天空都市じゃないか……凄い、凄すぎるとしか言えない……」


 ログが呆然と口に出した言葉にアイリスはクスリと笑った。


「ログ様。呆然として語彙力を失っておりますよ?」


「だって、だってこんな雄大で美しい景色を見せられたらさ……」


 天空都市セレスティア。


 巨大な浮遊島の上に建ち、その境界の大地は雲に覆われており曖昧である。


 浮遊する島は都市部や平原、森や湖、山などの広大な土地から構成され、都市の一角は浮遊島の端に位置し、飛空挺発着の港となっている。


 白い大理石の建造物や、鈍くも鋭い不思議な輝きを放つ金属の建築物が合理的な都市設計の元、幾つもの小さな浮遊島を織り交ぜて立体的な構成で立ち並び、それは神話の時代から存在するかのような重厚な雰囲気を持ちながら、魔法や近未来の技術すら融合させたような非現実的で幻想的な風景を創り上げる。


「眼下をご覧下さいログ様。景色のみならず、ここに暮らす人々や動物、その営みも含め、セレスティアは美しくあるのです」


 都市全体の輪郭が浮かび上がるにつれ、彩り豊かな色彩が更に明確になっていった。


 輝く水晶のドームが透明な光を放ち、高い塔や複雑なアーチが空に向かって伸びている。


 空中には美しい庭園や植物が咲き誇り、そこには色とりどりの鳥たちが舞い踊って歌っている。


 その下を歩く人々も活気に満ちており、笑顔で商品を売り買いする姿が見受けられ、その賑やかさは鳥たちの囀りとは異なるものの耳に心地よい騒音を奏でていた。


 市場には彩り豊かな野菜や果物、魚介類、魔法の素材が所狭しと並び、調理される香りが辺りに広がっている。


 まるでその五感への影響をも含めて都市全体が一つの芸術作品であるかのような華やかさを醸し出していた。


「いい風、いい音、いい景色……ついでに美味しそうないい匂い……アイリスさん、折角だし街に降りてみませんか?」


「そうですね……と、言いたいところですが、申し訳ありません。ログ様には、まずは王城までお越し頂きたいのです。後ほど必ず街を案内致しますから」


「そっか……色々問題が有りそうなこと、言ってましたからね」


「せめて王城では急ぎ食事を用意させて頂きますね」


「王宮料理! それもそれで楽しみだなぁ」


「うふふ。それではログ様の期待に応えられるよう、厨房の者には申し付けておきますね」


「ありがとうございます」


 ログ達はソラリスを先頭に街の上空を泳ぐように都市の中央に向かって飛んだ。


「ところで、王城って言うのはどんなところなんですか?」


「そうですね、説明するよりも見る方が早いかと……そろそろ見えて参りますので」


「どれどれ?」


 ログが前方へ視線をやると都市の中央に大きな拓けた空間が現れた。


 その中央にそびえ立つのは中世を思わせる古めかしいデザインの王城。


 しかしその壮大な姿は近未来的な要素を含む都市の中央にあっても何ら見劣りするべくものではなく、むしろ白い大理石で造られた城壁は日の光を受けて輝き、周囲を明るく照らしている。


 城門は古代の神話を思わせる彫刻で飾られ、王城への道は光り輝く大理石の階段で装飾されている荘厳なものだ。


 王城を取り囲む庭園を美しく飾る花々は心地良い風に揺られながら甘い香りを放ち、原色の色彩を以て上空から見下ろしてでさえ王城の存在感を内外に強く主張していた。


「はぁぁ……立派は城だなぁ……」


「ログ様、城門を潜りますので一度地上へ降りますね」


「解りました」


「ソラリス、お願いね」


「ピィ!」


 ログ達はソラリスに連れられてゆっくりと降下し、城門の前に足を降ろした。


「ありがとうソラリス。長旅お疲れ様」


「ピィ~ッ!」


 ログが頭を撫でて労うとソラリスは嬉しそうに声を上げてログの周りを飛び回った。


「さぁ、お二人共。私について来て下さいね」


 アイリスは戯れ合うログ達に微笑みかけながら、城門に向けて歩み出した。


「解りました。ほれ、行くぞソラリス」


「ピィピピィ~!」


 ログ達はアイリスを駆け足で追い掛けた。



お読みいただきありがとうございます。


今更ながら一人称にしようか等と迷っています。

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