「お昼ご飯は何にする?」「そうめんでいいよ」
※知様主催企画『ぺこりんグルメ祭』参加作品です。
※武頼庵(藤谷K介)様主催『24夏のエッセイ祭り』企画参加作品です。
そろそろ蒸し暑い日が増えてきました。休日のお昼には冷たい麺でさっぱりと、なんてご家庭も多いのではないでしょうか。
以下のような会話も、多くのご家庭で交わされていることでしょう。
「お昼ご飯は何にする?」
「うーん、簡単にそうめんでいいよ」
──ですが、気をつけて下さい。何気ない会話のようですが、このやりとり──実は、ある地方では地雷を踏むことにも繋がりかねない、とても危険極まりないものなのです。
皆さんは、そうめんを食べる時にどんな具材を用意しますか?
『具材って──ネギとかおろしショウガとか、あればミョウガくらいかな?
でも具材というよりは、どれもただの薬味なんじゃない?』
まあ、多くの方がそう答えるでしょうね。
ですが、関西人に同じ質問をしてみたら、どのような回答が返ってくるでしょう。
『せやな、まずは錦糸卵に、細く刻んだハムとキュウリやろ、あとは──』
ほとんどの方が、まずこの3つは確実に挙げるはずです。
あとはそれぞれのご家庭にもよりますが、
・ゆでて細く裂いた鶏ささ身
・スライスして甘辛く煮た椎茸
・ゆでた海老
・細切りにした大葉
・わかめ
・カイワレ大根
・かにかま
なども挙げられるでしょうか。
──このラインナップを見て、こう思った人も多いのではないでしょうか。
『え? それって冷やし中華なんじゃないの?』
そうです! 実は関西圏では、冷やし中華のように具材を何種類も用意してそうめんを食べるのが一般的なのです。
盛り付けは二派に分かれます。冷やし中華のように具材を麺の上に盛り付けてツユをかける派と、具材をそうめんとは別盛にして、一口ごとにそうめんと具材をツユにつける派ですね。
(ちなみに、我が家は後者のスタイルです)
どちらにせよ具材の用意に時間がかかるので、そうめんは「ちゃちゃっと手早く作れるもの」という感覚ではありません。むしろ『ちょっとしたご馳走』の範疇に入るかも。
さて、冒頭のセリフの話に戻ります。
「簡単にそうめんでいいよ」
もし、これを言われた方にとってのそうめんが『手間のかかるご馳走』だった場合──、地雷を思いっきり踏み抜いてしまう危険性があります。
『軽々しく言わんとって! いきなり言われたって、具材がすぐには用意でけへんわ!』みたいに。
あと、関西風の他にも埼玉の『冷汁そうめん』や石川の『茄子そうめん』、滋賀の『焼サバそうめん』など、ご当地流の食べ方も色々あるようです。沖縄では『そーみんちゃんぷるー』といって、炒めものにしたりもするようですし。
──あなたのそうめん観とお相手のそうめん観が一致しているとは限りません。一度お互いのそうめん観について、確認しておいてもいいかも知れませんよ。
余談ですが、二年ほど前に、そうめんに関するある主婦のツイートがちょっと話題になりました。
新婚の頃、味噌汁の具としてそうめんを入れたら旦那さんにドン引きされたとか──。
西日本では、味噌汁にそうめんをというのは割とポピュラーなんですが、東日本ではほとんど馴染みがないようですね。
某知恵袋で、『味噌汁の具にそうめんはアリかナシか』を問うような質問がありましたが、けっこう強烈な拒絶反応を示す方もいたりして──。
地域による食文化の違いって、なかなか興味深いですね。
ところで、冒頭のやりとりではどう返すのが正解なのでしょうか。
そうめん以外にしろ、『〇〇でいいよ』という言い方は、妥協してやってる感が出てあまり好ましくないですね。
『〇〇がいいと思うけど、どう?』あたりが無難でしょうか。
──たぶん、最適解は『あ、自分が作るからゆっくりしててよ』なんですけどね。