少女の悲劇02
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翡翠が屋上を目指す中、俺と鬼島は五階へ向かった。
ゲームのシナリオ通りならば、犯人、というか、クロに取り憑かれた生徒は屋上から主人公の前で飛び降りるはずだが、万が一違った場合が大変だ。
そういうわけで、俺たちは屋上を目指しつつ五階を見て回ることにした。
「……」
鬼島から無言の圧が漏れる。
「なぁ、鬼島? 翡翠のことが心配なら、先に行ってもいいんだぞ?」
二人がどんな関係かは知らないが、少なくとも翡翠は鬼島を慕っているし、鬼島もそれを嫌がっていないように見える。
気の強い先輩の男子が後輩の女子を心配するのは当然だろう。それが、命の関わるものならばなおさらだ。
「…いいや、アイツは何が相手でも負けねぇよ。俺が心配することはねぇ」
なんだ、想像以上に二人の信頼は厚いようだ。
「そっか」
それ以上話しかけることはやめた。
「おいおい、待てやぁ」
少し遅れて、ようやく五階まで伊賀がやって来た。
「遅かったな」
「おー、遺体放っていいもんかと迷ったんだが、レンもいるしな。それにどうせもう死んでるし。いくらなんでも動き出すとかはねぇだろーから来てみた」
「そうか。今のとこ、五階に異常はないぞ。早いとこ屋上行くか」
この学校は五階建てだ。今頃、この上では翡翠と未空による激闘が繰り広げられているのかもしれない。
「次の部屋見たら、上行くか」
鬼島の言葉に俺たちは頷きを返す。
最後の教室、生徒会室を見て回る。特に変わったところはない。強いて言えば、本当にこの生徒会室は豪華だということ。カーテンは赤色で、茶色の本棚と机、椅子が並ぶ。本棚の中身は謎だ。多分、うちの学校の生徒会メンバーには頭が良い学者タイプの副会長がいるからだろう。よく分からない宇宙の本やら何やらが置かれている。
部屋から出て、屋上へ向かうべく階段を登る。三十段以上ある階段を登るのは疲れた。何というか、今日は体力というよりも精神が疲れている。
太陽は、昼を過ぎ始めている。が、不思議とお腹は減ってこない。当たり前か。遺体を見た後で食欲があったらそれはそれで怖い。
屋上のドアを開けようとしたら、向こう側から声がした。翡翠の声だ。
「死んだらもう、何も戻っては来ないぞ」
説得を試みているのだろうか。
未空は死のうとしている……?
「だから、なに? わたしが殺した人間のほうが、もう何も戻って来ないのに」
未空の言葉にはずっと、説得力がある。
理由次第で、人を殺したことを許すのか。
あの言葉には、心に刺さる何かがあった。
もし、犯人が蓮だったら。
そしたら俺は、どうしていたのだろうか。
「戻らなくなるものを増やす方が、良くないぞ」
翡翠の声がまた聞こえて来る。
開けるべきか、開けないべきか。
ドアノブに手をかけたまま迷っていたら、その上に鬼島が手を重ねた。
「……」
無言のまま首を振る鬼島を見て、俺はドアノブからそっと手を離した。
今はきっと、その時じゃない。
ひとまず成り行きを見守ることにした。
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