それは確かな証言か
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誰もが蓮を見つめ、何も口には出さない。
その瞬間、俺は考えていた。
もしも蓮が篠崎を殺したとすれば……。
それが、殺人鬼クロの乗っ取りによるものであったとしても。
ここまで来てこのゲームを計画した犯人が肝心のストーリーで手を抜くとも思えないわけで。
──つまりは、蓮は篠崎を恨んでいたということとなる。
俺が蓮たちと出会ったのは、高校に入ってからだ。
俺たち三人はクラスが一緒で、最初に絡んできたのは蓮だった。そこに篠崎が加わってからずっと三人でいたのだ。
篠崎だけが部活が違ったが、だからといって三人のうち一人だけがハブられるというようなことはなかったと思う。
もしもストーリー通りに蓮が篠崎にあらゆる物を奪われていたとしても、蓮が恋バナをしたことはなかったから恋愛というのは考え難いし、俺と部活が同じである蓮がぼっちになったことはないと思う。
篠崎は野球部の連中で組んでいたりしたから、俺たちといない時も多かった。
だから、蓮が奪われる物があるのか分からない。
「蓮、俺は、疑いたくない」
まだこれがストーリー通りとは限らない。
「だから、よかったら」
俺が悪者ならば、ストーリー通りと見せかけて彼らを混乱させるだろう。こういう時に最も気をつけなければならないのは仲間内の疑い合いだというのが鉄則だ。
「話せることだけでいい、篠崎との仲を話してくれ」
待ってこれ、ドラマでよくある浮気とかのやつで女性に言う言葉では?
まあいい、今はそれどころではない。
言葉を選んでいる暇はないのだ。
蓮は何も言わずに、いつもの明るさを忘れたようにドス黒さを瞳に閉じ込めてこちらを見つめている。
まるで、赦しを請う人のよう。
「まず、朝起きた時刻は正しい?」
先ほどの内容から確認するべきだろう。
蓮がこの時間に関与していたとしても、早めに話す方がいいことくらい分かるはずだ。
「……起きたのは…六時くらいだった」
ぽつり、と蓮がそう言った。
「六時ってのは随分と早いなぁ」
伊賀が挑発するようにそう声をかける。
友達の俺が蓮を庇おうとする反面、知り合いでもない伊賀は隠すことなく蓮を疑っている。
けれど蓮は伊賀を気にすることなく、無視して話を続けた。
「いつも、六時起きなんだよ」
蓮は自虐気味に笑った。見たことのないほど暗い笑みだった。
「オレの家さ、母親が少し前から入院してて。去年くらい、から」
遠いどこかを見つめるその瞳には、俺は映っていてなお見えていなさそうだった。
「親父は酒癖が悪くなって。って、そんな話じゃあなかったな。とにかく、早起きなんだよ。いつも通り親父は寝てて、母親は病院。だから、今日の朝も誰もいないんだって思ってた」
そういえば、蓮が自分の家について話しているのを見たことも聞いたこともない気がする。母親が入院していることについて、何か、複雑な事情でもあるんだろう。
事故か、病気か、はたまた……精神的なことか。
「それで、朝飯食って、着替えて、さっきも言った通り、八時くらいだったか? そんくらいに、家を出たんだ。あとは、話の通りだ」
なるほど、嘘はついていない、と。
ただ……気になるのが。
「七時半とかは何してたんだ。ずっと朝飯食ってるわけじゃねぇだろ」
俺の疑問は、鬼島が代弁してくれた。
その質問を受けた蓮は、何とも言えない表情をした。怒っているわけでも悲しんでるわけでもない。どちらかといえば、困惑しているみたいだ。
「…分から、ない」
小さく呟かれた言葉に、反応したのはここまで遺体以外に全く興味を示さなかった未空だった。
「……記憶、ないの?」
「…ああ、そういうことだと思う。朝飯食ってから、少しベッドに横になったんだ。そこからよく覚えてない。気がついたら八時前で、着替えて出たら声がした」
「その間クロさんに乗っ取られてたのか、身体」
呆れたように伊賀がそう吐き捨てた。
蓮は、返す言葉もないとでも言うように口をつぐんだ。
「マジか……じゃあ、今はどうなんだ?」
乗っ取られている間記憶がないのなら、今はもう憑いてないわけで。
あれ?
捕まえるということは、いつでもスタンバイOKの状態でクロさんはいるはずだ。
じゃあ、今は……。
「誰かに憑いてる、のか?」
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