表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/29

現実そっくりデスゲーム

ぜひ最後まで読んでください!


 未空雪音が語り出す。


「八時くらいだったかな…わたし、遅く起きたの」


 まあ、学校来ないからね、普段。遅めに起きてても疑問はない。


「ベランダに出たら声がして、学校に来てみた」


 そこで質問が飛ぶ。口を挟んだのは伊賀千矢だった。


「なあ、いつも学校に来ないのに今日だけ来たのか?」


 言われてみれば確かに気になる。


 未空は、一年の頃から不登校だ。

 だが、登校日数はギリギリで保っているし、成績も悪くないようだ。

 そんな彼女がなぜテストでもない日にわざわざ来たのか。


「だって…変だったから…誰もいないし」


 不安になって人を求めたのだろうか?

 まあ、彼女だってさっきはヤバい発言をしたものの、高校二年生の女子だ。

 家に誰もいなければ不安になるのが普通で、学校になら人がいるはずだと思うのも当たり前で…。


 うんうん、と心の中で一人納得していると、それを一気に台無しにするような笑い声がした。


「おもしろそうだったからぁ……!」


 彼女は恍惚とした表情で笑っていた。

 あまりの喜びに思わず、といった笑みだ。

 ニタリ、と口角が上がっていく様は不気味だ。怖い話とかによくある口が裂けた女を見ている気分。

 顔は悪くないのに、そんな笑みを死体の前で披露されると背筋が凍る。


「それで着いたら、彼らがいたの…人が死んでた……!」


 もうこれ以上話させると空気がヤバくなると思ったのか、伊賀が話し始める。


「次が俺さまだなっ!」


 こちらもテンションが高い。

 もしや、ただ早く話したくてうずうずしていたのでは?


 案外、伊賀と未空は似ているのかもしれない。

 ……この状況で笑えるもの同士。


「七時に起きたんだが、家族は朝が遅いからな、まだ寝てるもんだと思ったんだが。いつも通り一人で飯食って家を出たら声がした。なんかよくわかんねーけど夢かと思って学校に行ってみたら、もうすでに死んでたってわけだ」


 七時。不良っぽい割に朝が早いんだなと感心する。

 一番の遅起きは俺か。


「最後は俺か。……黒崎海斗だ。寝過ごしちまって、学校に遅刻すると思ったらリビングに誰もいなかったんだ。で、とりあえず簡単な私服に着替えて外に出たら声がした。俺も最初は夢かと思ったが、さすがに、この状況じゃ、な」


「カイトは朝に弱いんだなぁ」


 隣で伊賀がからかってくる。

 朝が弱くて悪かったな。


「それで、自己紹介は終わったが、次は何する予定なんだ、伊賀?」


 最初にこれを始めたのは伊賀だ。

 だから、彼に聞く。


「……ひとまず、時間の矛盾も怪しいところもないな。次は、クロさん探しだが……」


 伊賀は案外真面目に話を聞いていたようだ。


「こんなの速く終わらせて、現実にかえりてぇ。出来る範囲で協力をするぞ。喧嘩は任せろ」


 鬼島龍が伊賀を見てそう言った。

 その言葉に裏はなさそうだし、【鬼夜叉】総長の彼が言うのだから心強い。


「そもそも、殺人鬼はどこにいるのか、か」


「今の話の感じだと、おれ様たちの中に犯人がいるってのは少なそうだ」


 うーむ、と唸りながら伊賀が考え込む。


「お前、オレたちを疑ってんのかよ!」


 蓮が叫び出した。


「篠崎は誰かに殺されるような奴じゃねぇんだぞ! 殺したのはあのゲームマスターに決まってる! 今すぐぶっ殺してやる!」


 いつになく蓮は怒っている。

 先ほどの自己紹介で少し落ち着いたかと思ったが、今の伊賀の発言でまた戻ったようだ。


「お前こそさっきから仕切って怪しい奴じゃねえか! 大体クロって奴は本当にいるのかよ! どうせゲームマスターって奴の嘘じゃねぇのかうげっ」


「…ちっとうるせえ」


 鬼島が蓮の首に軽く手刀を入れて気絶させる。

 ぐったりと倒れた蓮を鬼島が近くの椅子に座らせた。


「だが、そもそも殺人鬼が人間なのかは怪しいな」


「総長サマは何か意見があるのか?」


「ここがゲーム世界だってんなら、犯人が人間である意味はないだろ。この世界のモンスターでもいいはずだ。それに、この世界はまるで…っ」


 何やら考えを話し出した鬼島だが、急に言葉を詰まらせた。言うべきか言わないべきか迷っているみたいだ。

 だが、それまで比較的黙っていた翡翠要が鬼島の肩を叩くと、仕方ないとでも言うように鬼島は続きを話し出した。


「まるで、最近発売されたゲームみてぇだって思ったんだよ」


 ゲーム。


「……ぁ」


 そうか、そうだ。


 マキシさんのゲーム実況にあった、現実そっくりの世界に迷い込んだ主人公が仲間を増やし、最終的に強くなって現実へ戻る話。


 チュートリアルとも言える第一章は、確か。


「第一章は、真っ黒のヒト」


 鬼島がそう呟いた。


「なんだ、それ?」


 伊賀は首を傾げている。

 ゲームには詳しくないのだろうか。


「つい最近出たスマホゲームだよ。現実そっくりの世界に迷い込んだ主人公の話なんだが、それの始まりが今鬼島が言ったように、殺人から始まるんだ」


「へぇ、なら、それのオチを知っていれば」


「残念だけど、俺は拾い忘れたストーリーがあるんだ。だから、クリア度が100パーじゃない」


 ゲームにはそのステージをクリアした後も楽しめるようにとストーリーが散らばっている。マキシみたいに上手な人だと一発目からその全てのストーリーを回収していくものなのだが、俺には無理だった。


「メンバーの一人に殺人鬼が成りすましてるって所しか知らないんだよ」


「それでも十分だけど…けど、誰に成りすましてるのか分からなきゃ意味がねぇな」


「ああ」


 ゲーム好きだというのに、不甲斐ない。


 ──だが、確かあのゲームで人が死んだのは、そいつが…。


「俺が知っている」


 何かを思い出そうとしたところで、鬼島が手を挙げた。

 そういえばコイツ、ゲーム好きなのか?


「ゲームは三章までやった。ストーリーは全部拾ってる」


「マジか! じゃあ、話を教えてくれ!」


 すげぇ!

 あのゲーム、【アナスタシア】っていう激ムズゲームしか作らないことで有名なゲーム会社が作ってるんだぞ!


「…はぁ」


 鬼島がため息をついた。

 ヤンキーとして、ゲーム好きなのは隠したかったのだろうか。

 性格の良さと不良らしさがアンバランスに共生しているようだ。


 そして鬼島は微妙な顔で俺が知らないストーリーのネタバレを…。


 いいや、この状況を解決する(すべ)を話し出した。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら嬉しいです!

感想等お待ちしています。


他作品もぜひ!

六波羅朱雀をどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ