ひとまず自己紹介しよーぜ。
ぜひ最後まで読んでください。
『クロさん捕まえるまで、とりあえずこの学校からは出られないよー! でもでも、朝と夜はちゃんと来るしぃ、クロさんも時々姿だすしぃ、一日に殺すのは一人までなのお』
声が説明を進めていくが、まだ話が頭に入らない。
「おい、お前の名前はなんだ」
鬼島がそう聞くと、『う〜ん』と悩むような声が返ってくる。
『ゲームマスターかぁ、ししょーかぁ、先生もいいかなぁ。あとあと! ゼウス! とか!?』
勝手に盛り上がる声に、鬼島は容赦なく「じゃあゲームマスターに聞くが、タイムリミットはあるのか?」と問う。やっぱコイツの神経は図太いな。目の前で人が死んだんだぞ! どうなってんだ思考回路!?
『タイムリミットはないよぉ。でもでも、捕まえられないと最終的に全員死ぬよねぇ。じゃ、頑張ってぇ。ぼく応援してるぅ。あ! お風呂とかトイレとか見ないからね! 重要な話でもこっそりしようものなら声くらい聞くけども!』
つまり、この世界に秘密基地はない、と。
声は好き勝手いうと勝手に消えていった。
「……」
沈黙が流れる。
元々クラスが違ったり、あまり話したことがなかったりするメンツだ。当たり前だろう。
「なあなあ! お前名前なんつーの?」
突如後ろから飛びついてきた奴がいた。
伊賀千矢だ。
「えっと、黒崎海斗」
「カイトは身長たけぇな。うらやましー」
褒められるのは嬉しいけれど、今はそんな気分じゃない。
そう返そうとするが、先に伊賀が全員を見渡して言った。
「なあ、落ち込むのもいいけどよ、前見ねぇと全員死ぬぞ」
笑顔で言うからこそ、心に刺さる一言。
「友達が死んだんだぞ? お前、ちっとは考えろよ…」
反論したのは蓮だった。いつになく怒っている。気持ちは分かるが、伊賀の言うことの方が正しいのも分かる。
翡翠要はようやく少し落ち着いたのか、状況が泣いている場合はないのだと思ったのか。鬼島にもたれかかるのをやめていた。
未空雪音はよく分からない。微妙に笑っているように見えるが…。
「死んだからなんだ? 全員死んだら意味ないだろ。だからよ、とりあえず状況を把握するべきだ。全員、この部屋に入った順に名前とか入った時の状態を言ってけ」
伊賀は非情なまでに冷静だ。ただのお茶らけた奴だと思っていたが、人は見た目によらないらしい。
最初に語り出したのは、鬼島だった。
「俺と翡翠が最初だ」
鬼島が話し出すと、蓮は黙った。自分の考えが周りを巻き込むと思ったのか、鬼島が怖いのかは知らない。
「朝起きたら六時だった。俺は一人暮らしだからな。人がいないなんて気にもしなかったんだが、七時に家を出て気がついた。その時翡翠から電話が来て、誰もいないって言うからひとまず合流しようとコイツの家の近くに行った。でけぇ公園だ」
その公園なら知っている。ここらで1番でかい公園だ。昔、篠崎に野球を少しだけ教わった時に行ったのを覚えている。高校に入ってすぐだったから、もう、一年も前か。懐かしい。…もう二度と、篠崎とは遊べないのだろうか。ゲームマスターの話が全て捏造であればどれだけ嬉しいか。
「道中も誰も見かけなかった。合流してここからどうするかを話そうとした時、声がしたんだ。学校に行けってな。その後も何度かその声がしたから、もしかしたらこのメンツの奴らが起きるたびに鳴らしてたんじゃねぇか」
鬼島はふと篠崎の遺体を見つめた。
「七時半に学校に着いた。翡翠の教室よりも俺の教室の方が階が低いから先にここへ来たんだが、その時には死んでた。翡翠が吐きそうだったからとりあえず何もせずにここにいたら、十分くらいで白銀が来た」
「龍先輩の話の通りだ」
翡翠はそれだけ告げて、蓮の方を見やった。次はお前が話せ、ということだろう。一度メンタルを直せば強いのは、さすが暴走族総長といったところか。
「…白銀蓮だ。篠崎とは、昔からの仲だ。朝起きたら家に誰もいなくて、外に出たら声がした。七時半前くらいだ。それで学校へ行ったら、階段の辺りで女の声がして、教室に来たら倒れそうになってる翡翠さんとそれを支える鬼島がいた」
叫んだのは、遺体を見た翡翠だったということか。
白銀は学校と家が近いから、家を出たのが七時半前とかでも、鬼島の言う七時半に学校に着いて十分後に白銀が来たという発言と一致する。
次にここへ来たのは、未空雪音だった。
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