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殺人の責任

ぜひ最後まで読んでください!




「おい、待てよ」


 それまで窓側の椅子に座っていた蓮が怒りを込めた声音で言った。


『なぁにぃ?』


 絶妙に緊張感のない声でゲームマスターが返す。

 その声を聞いて余計にイラついた表情になった蓮は、思っていることを一気に吐き出した。


「この女がゲームキャラクターとして死んで、本物のこいつは生きてんだろ? なら、篠崎だって死んでないんじゃないか? もし死んでるなら、なんで、アイツだけ死ぬんだよ…! なぁ、ほんとは死んでないんだろ?」


 切羽詰まったように悲しみを帯びた、希望を込めた言葉だった。

 けれどもゲームマスターは、スピーカーから無機質な声を流し続ける。いい加減、姿を現して欲しいものだ。


『残念だけど、死んでるよ? ほら、最初にテレビのニュースとか見せたでしょ? 篠崎さんが死亡!みたいな見出しのやつぅ〜。覚えてる? あれはちゃあんと現実の映像なんだよ』


「そん、な」


 翡翠や鬼島は、顔を俯かせていた。伊賀はそこまではないが、それでも今は騒がない。空気を読んでいるのか、あるいは表情が出にくいだけで結構落ち込んでいるのか。

 いつの間にか目を覚ましていた未空に至っては、その黒いローブを握りしめて身体を小さくして震わせていた。


「ごめん、なさい」


 彼女が小さくそう言った。全員が彼女の方を見て、いつ目覚めたんだというような顔をする。


「わたしだけ死んでないの、おかしいですよね」


 それを聞いて、蓮は顔を苦しみで歪ませた。

 別に彼は謝って欲しいわけじゃないのだろう。心の奥では、未空もまた被害者であることを理解しているから。けれどもなんて言えばいいのか分からない。そんな表情だ。高校へ入ってからある程度経っているが、蓮のあんな顔を見るのは初めてだ。いつだって周りを明るくさせる存在だった。蓮は篠崎の騒がしさとはまた違う、さっぱりとした性格の持ち主なのだ。


 俺もまた何と言えばいいか分からず、凍りつくような空気が流れた。


 と、そこで腕を組んで立っていた鬼島が声を上げた。


「心の中で何を思おうが勝手だが、人が死んでいる以上、無責任に謝るのはやめておけ」


 こんな状況で、しかも鬼島が思っていた以上に良いやつだったから忘れていたが、彼は暴走族【鬼夜叉】の総長なのだ。


「別に被害者ぶってろとは言わねぇよ。ただ、死んだ奴は最後までお前のことを思ってたんだろ。なら死んだ奴はお前が死んでも嬉しくねぇだろうし、生き残った人間には生きる義務がある。無責任な発言をするな」


 総長として、多くの喧嘩があったのだろう。中には命を落とした敵味方もいるのかもしれない。

 だからこそ、その言葉は出てきたんだと思う。

 誰かを傷つけるなら、それ相応の覚悟が必要で。そして、その誰かという言葉の中には自分もまた含まれる。


 今、どれだけ嘆いても、未空が死んだとしても、篠崎は蘇らないのだ。ならば、俺たちは彼の死を無駄にしてはいけないし、未空は生きなければならない。

 仮に篠崎を殺したのが偽物の未空であったとしても、その偽物が未空のように行動する以上、未空が篠崎に殺意を持ったことは明らかで、責任逃れは出来ないのだからだ。


「……はい」


 黒い目を(まばた)かせて、未空はそう言った。


「そうだよ、未空先輩。死ぬってのは、痛いんだ」


 鬼島の隣で立つ翡翠もそう言った。

 彼女もまた暴走族【アトラス】の総長なのだから思うところがあるのだろう。

 「死ぬってのは、痛いんだ」という誰にでも言えそうな言葉だけれど、俺の心に突き刺さる感覚がした。軽いからこそ重みがある言葉のような。

 いや、矛盾しているのは分かるんだけど、とにかくそうなんだ。


『さてさて、次のゲームのことなんだけどぉ〜』


 俺たちが話し終わるのを待って退屈になったのか、急かすようにスピーカーから声がした。


『とりあえず明日からにするよぉ〜。でもでも、ルール説明だけするねぇ〜!』


 明日からってことは、一度家に帰るってこと? それとも、学校に泊まれってことだろうか。出来ることなら、現実に帰りたい。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら嬉しいです!

感想等お待ちしています。


他作品もぜひ!

六波羅朱雀をどうぞよろしくお願いします!

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