終わりの始まりがやってきた。
ぜひ最後まで読んでください。
それはいつも通りの日であった。
何でもない日常を謳歌する高校二年生の俺の名前は黒崎海斗。まだ誕生日は来ていないため十六歳である。
後ろが肩に届かないくらいの短めの黒髪、せっかく二重でぱっちりとしている瞳はいつも無気力そうで、本来の大きさほど開くことは珍しい。決してガタイがいいタイプではないが、腹が出ているわけでもなくほどほどに趣味で鍛えられた身長百七十八センチの肉体は黒のブレザーを違和感なく着こなす。誰がどう見ても間違いなく高校生であると分かる。
「おっはよ〜」
そう言って後ろから肩を叩いてきた男がいた。同級生で同じクラスの野球部である篠崎大和だ。生まれつきの茶色っぽい髪は綺麗に整えられている。篠崎はモテたいのであった。茶色の瞳は、弧を描くように明るく細められている。
「おはよ。相変わらず朝から元気だな」
「朝練してたからなぁ」
こうして今日も、平和な学校生活が始まったはずであった。
□■□■□
起立、礼、着席。
それを何度か繰り返して訪れる昼放課。
誰もが机に弁当を置いて、あるいは購買にパンを買いに行く時間である。
例に漏れず俺も弁当を机に広げる。今日の昼飯は一段目は白ごはんであり、二段目がおかず。唐揚げとトマト、フライドポテトなどが入っている。
はむ、もぐもぐ。
もぐ、はむはむ。
もぎゅもぎゅ、もぐ。
ごくん。
ひょい。
…? …ひょい?
違和感を感じて目の前を見れば、一人の男が立っていた。隣のクラスで、部活が同じ音楽部の白銀蓮。黒い髪は短く、後ろは刈られて一段段差がつくような形になっている。身長は百七十六センチと、俺とほぼ同じ。前髪もさっぱりとしていて顔がはっきりと窺える。二重の目元はぱっちりと開かれ、口角を上げて旨そうに俺の唐揚げを頬張ってやがった。最後の一つだったのに…!
クソがっ…! 俺の好物とりやがって…!
「おーまーえー!」
「ははっ! いいじゃんかよ」
ニカリと気持ちよく笑われるとこちらとしても怒るに怒れないのは何故だろう。ズルい気がする。悔しい。
「まったく…」
仕方がないから、ミニトマトを食べる。口の中でぺちゃりとトマトが潰れる感覚がした。
弁当を食べ終えて時計を見れば、昼放課はまだあと二十分残っていた。とりあえずリュックに弁当箱をしまい、前の席の椅子にどかりと座ってこちらを向く蓮と目を合わせる。
「お前は弁当食ったのか?」
「おう、もちろん食ったぜ。早弁だけどな」
「いつ」
「えぇっとお〜、学校着いてすぐくらい?」
何でもなさそうに蓮が言う。つーか、昼飯を朝に食う奴がいるかよ。
「それはもはや朝飯だな」
「たしかに〜」
と、その時だった。
クラス人数は男女合わせ四十人というバランスで組まれた教室内に、異物が迷い込む。いいや、そいつもまたこのクラスのメンバーなのだが…。いい感じに和んでいたクラスの雰囲気が一気にピリつく。
俺と蓮は、教室のドアの方を向いた。
「………」
無言で室内へ入ってくるその男子生徒は、ドアの上の部分に頭をぶつけないように少し前のめりになる必要があるほどの長身。確か、百八十九センチだったか。俺もクラスでは結構高い方だが、奴は飛び抜けている。運動神経は抜群、頭も良くてリーダータイプ。テストが満点というよりは、あらゆる情報から最適解を導くような、実践に強いタイプだ。とはいえ学年順位は三百五人中常に二十番以内だと噂で聞いたことがある。
そして、何よりも異質なのは…。
──その風貌だった。
日本人離れした圧倒的な体格の良さだけではない。髪色は深い赤色。それも明るめではなく、ワインレッドのような色だ。なんと、地毛だという。眼の色はアクアマリンのように澄んだ水色で、どこを映しているのか分からない。健康的に焼けた肌からは、よく外で運動をしているのが伺える。ただ、その『運動』の内容が一番の問題だった。
特攻服、というものは今時の若者でも分かるだろう。彼はそれを着ているのだ。そう、彼こそがこの地で一番のチーム【鬼夜叉】を率いる無敵の総長である。黒の特攻服は彼のサイズ用に特注で作られたものであり、真っ黒の生地で背中には赤い刺繍で夜叉が描かれている。ずばり彼の肉体と強さは、喧嘩で生まれたものなのだ。制服の白シャツは着崩され、一番上とそのすぐ下のボタンは開けられている。中に着た黒い肌着が見えている。シルバーの十字架のネックレスが首から下げられ、左手の時計は銀色のなんか高そうな物。
──暴走族【鬼夜叉】。
それは約一年半前にできた不良チーム。この地域では昔からヤンチャな若者が多い風潮にある。そのせいで俺たちが中学生の頃は特にひどく荒れていて、治安は最悪だったのだが…高校一年になる頃できたのが【鬼夜叉】だった。このチームができた途端あらゆる不良が倒されていき、小さなチームでイキっていたような連中も、数で圧倒して中身は特に強くもない連中も、とりあえず【鬼夜叉】の傘下にされていった。今ではこの地域の不良の三分の一は【鬼夜叉】である。とにかく強い、有無を言わさぬ戦いで圧勝する総長・鬼島龍の存在はチームを強固にしていった。そして彼が作ったルールに逆らう者もいなかった。
【鬼夜叉】には、彼が定めた幾つかのルールがある。それを破ると怖いことがあるらしいが、まあ、破る者はいない。
確か……一般市民への暴力行為の禁止、盗みや引ったくり、一般市民への脅しの禁止、不要な暴走行為の禁止、薬物禁止とかだった気がする。
つまりはまあ、彼のおかげで荒れていた治安はある程度の平穏を取り戻したのだが…まあ、怖いには変わりない。
他にも暴走族というのはある。大きなのがあと二つほど。だが、俺にとって一番身近なのはやはり同じクラスに総長がいるという【鬼夜叉】である。
「アイツ、昼から来たのか」
蓮がボソリと呟いた。
「いつものことだろ。ほら、この間も」
「ああ、あれは結局、登校中に強盗と出くわしてやっつけて警察署まで送り届けてたんだっけか」
蓮が記憶を辿ってそう言った。
なんだかんだ言って警察が暴走族である鬼島を逮捕しないのは、そういうのが問題であった。つまりは街にとってよい存在なのである。犯罪者への抑止力とでも言うべきか。
「そうそう」
当の本人はと言うと、自分の席にドカリと座ると、周りでコソコソ話されているのが嫌だったのか、あるいは純粋に音楽を聴きたかったのか。ワイヤレスイヤホンを耳につけると、スマホを手にしてアプリ【トリル】を起動した。
【トリル】とは、音楽を中心として動画、マンガ、小説など多くの機能が使えるアプリである。今では様々な人が利用していて、なんと利用者数はアプリが世に出て五年で一億人を超えたのである。開発者はきっと億万長者になれたであろう。かく言う俺や蓮も使っている。
「なあ、昨日のアレ見たか?」
蓮が沈み返った空気を変えるように、【トリル】の話題を持ち出した。アレというのは恐らく、【トリル】で動画配信者として活動している歌い手の迦楼羅の新曲動画だろう。
「もちろん見たよ。サイコーだった」
「だよな! ギターがちょーかっけぇ」
迦楼羅は女性で、聞き手を暖かく包み込むような優しい声が魅力的な人だ。活動開始半年で百万人フォロワーを達成したという偉業がある。昨日の新曲も既に百五十万再生という注目度。
「やっぱオレたちのとは、ちげぇよなぁ」
蓮が悔しそうにそうこぼした。
「そりゃ、まぁ、学生だから投稿頻度も低いし」
俺や蓮もそれぞれのチャンネルを作って音楽を投稿している。文化祭前なんかは、音楽部として発表する曲の練習動画とかを上げているのだが…なかなか伸びない。千回も再生されればマシだ。大抵は五百もいかない。
「迦楼羅さんって、実際どんな人なんだろうな」
迦楼羅は顔を出さない。いつも仮面とか布とかで顔が隠れているのだ。プロでもないようだし、そういった謎に包まれたミステリアスな面が売りでもある。年齢も性別も問わず魅了される歌声の持ち主。ファンの間では歌姫と呼ばれているほどである。
「あ、そういや昨日、あっちも動画出してたよな」
悔しさを紛らわすように俺が話題を変える。次の話題は【トリル】のゲーム配信者として前線を行く、今注目を浴びている人だ。その名はマキシ。本名かどうかは定かでなく、こちらもまた顔を一切出さない人だ。ただ、声で男だと言うことは分かる。ゲームの腕がプロレベルで、アニメや映画といった他ジャンルにも詳しい。よく喋る人というわけではないが、沈黙にならない程度には喋る。また、【トリル】には視聴者が配信者に送るベットと呼ばれる投げ銭機能やコメント機能があるのだが、それに必ず反応をしたりコメントを返したりしてくれる。俺様キャラだが、不器用ながらに丁寧で優しさが垣間見えるところが女性だけでなく男性もファンになる理由だった。
あと、普通に上手い。これほんと。マジで羨ましい。
昨日の動画では、新作のバトルゲームをやっていた。彼の配信は一時間ほどで終わるため、時間がない人や長いゲーム動画は酔ってしまうという人でも見やすい。
「あのゲーム俺もやろっかな」
「マジ? オレと協力プレイしよーぜ」
「いいな、それ」
□■□■□
昼休みが終わり、五限、六限と授業が進んでいく。
五限に生物基礎を習った後の六限、言語文化はなかなかに辛かったがなんとか睡眠欲に勝った。
「そんじゃ、また明日〜」
ぬるい挨拶で担任が帰りの挨拶を終え部屋から去っていく。部活のある者は部室へ急ぎ、掃除のある者はかったるそうにスマホ片手に担当場所へ向かう。
普段はそうなのだが…今日は少し違った。
廊下に誰も出たがらないのだ。
「なんだ?」
「なんか、一年の女子が来てるってさ」
リュックを背負いながら、隣に来ていた蓮に聞くとそう教えてくれた。
「女子くらい、そんな」
一年の女子一人に騒ぐほどこの学校の男女率は悲しくないぞ。
「それが、あの子なんだよ」
「あの子?」
そう聞き返した時だった。
「おい! 龍先輩はいるか!?」
妙に威勢のいい声がした。見れば、ドアのところに身長百六十センチ後半くらいのサイズの一年が立っていた。ちなみにだが、学年はスリッパの色と校章の色で分かるようになっている。
龍先輩。そんな名前は鬼島龍しかいない。
鬼島は黒のスクール鞄を左手に持つと、席を離れて一年の元へ行った。
「うるせぇ」
低い声で鬼島がそう言うが、少女が悪びれる様子はない。
「はは、こんくらいいいじゃないすか。こんだけ人がいると大声じゃないと聞こえないでしょ?」
そりゃあそうだ。
──翡翠要が彼女の名だ。
少女の髪は生まれつきの黒髪ロング。黒のセーラー服はよく似合っている。が、その上に特攻服を着るのは如何なものか。
そう、少女もまた暴走族なのだ。しかも、別チームの総長。
どうしても力的に、体格的に弱者である女性や子供を守るべく彼女が創ったのは【アトラス】。去年の終わりくらいからあるチームだから、彼女は中学三年生の時に創ったことになる。白の綺麗な特攻服の右腕部分に書かれた文字は『荘厳華麗』。その意味は知っての通り、おごそかで気高く、極めて華やかなこと。
【アトラス】がどうして生まれたのかは知らないが、とにかく女性を中心として戦った。今では傘下についたグループが多いため男の戦力も多い。ここもまたルールがあって、それは比較的【鬼夜叉】と同じような内容だが、男女差別はないものの女性が総長なだけあって、チーム内恋愛には厳しいようだ。後から傘下についた連中が下手な真似をしないようにだろう。
とにかく、そんな彼女は時折この教室へやって来る。
犯罪行為を禁止するチーム同士気が合うのか、総長同士仲が良いのか。分からないが、彼女たち二人が並ぶとなんだか緊張感が走る。
「はやく行きますよ」
「…次からもっと静かに来い」
「了解です」
別にすごく明るい子、というわけではない。どちらかといえば近寄り難いオーラで気が強そう、ツンとした眼は二重ながらにぱっちりだが引き締まっている。スラリとした体型は喧嘩のせいかほどよく鍛えられていて、回し蹴りの威力が垣間見える。責任感の強そうな子、といった印象だ。あと何か付け加えるとしたら、声がよく通る。チームの集会で鍛えられた喉なのだろう。
二人は教室を出ていく。途端、室内の全員がホッと胸を撫で下ろすようだった。
「俺たちも部活行くか」
「だな」
□■□■□
二人で北館の部室前へ行けば、ちょうどスマホが鳴った。
『今日は先生がいないので部活なしです』
「「マジか」」
そうするともうヒマだ。
とりあえず近くのファミレスへ行く。
ぐたぐたと話しながら、オレンジジュースを飲む。炭酸も飲めるが、音楽部としては声が悪くなるのはゴメンだ。
「お、動画でてる」
スマホをいじっていた蓮がそう言った。
ちょうどトイレから戻ってきた俺は「なんの?」と聞く。
「これこれ」
蓮が見せてきたスマホの画面に映っていたのは、迦楼羅のチャンネル。それも、コラボ動画だった。
「おぉ! 久しぶりに迦楼羅さんとマキシさんコラボかぁ」
「二ヶ月ぶりくらいか? 見よーぜ」
周りには客がいない。この時間はまだ夕飯時ではないのだ。よって、最低限の音を流して動画視聴を始めた。
『こんにち迦楼羅です。今日は、なんとコラボです』
『マキシっす。お願いしゃす』
「きたきた! こんにち迦楼羅!」
迦楼羅のお馴染みの挨拶で動画が始まっていく。
彼女の独特の会話のリズムを、上手いことマキシが対応していく。もしかしたら、マキシの方が少しばかり年上なのかもしれない。
「やっぱ、すごい人たちって知り合いなのかな」
ポツリ、と蓮がそう言った。
「さぁな。でも、俺たちも見習いてぇ」
動画の内容は、ゲーム配信。
ゲームは迦楼羅に合わせてリズムゲームとなっている。
俺もやっているゲームだから分かるが、パーフェクト判定なんてあまり出せるものではない。
『やった! パーフェクト』
『俺様もだ』
だから、マキシのゲーム力の高さと迦楼羅のリズム感の良さには驚くばかりだ。
「俺も家帰ったら、久しぶりにこのゲームやろっかな」
「まじ? オレもインストールしてみよっかな」
□■□■□
夜。
風呂も済ませてあとは寝るばかりとなった。
二階の自室のベッドに寝転がり、今日動画で見たゲームを起動する。
やはり何度やっても上手くいかない。あの二人はもはや天才なのだろうか。俺がやると延々とナイスとかグッドなんだが。
「…パーフェクトが俺を嫌ってる」
白い天井を見て、自分でも意味不明な言葉を呟く。
シンとした空気が痛い。空気すら俺の呟きがつまらないと言っているようにさえ感じられた。
「明日は、部活あるよな」
明日こそ、ギターの練習に励むのだ。
スマホの画面を変え、昨日のマキシがやっていたバトルゲームをインストールする。
物語は現実世界そっくりな場所に迷い込んだ主人公が、あらゆる敵と戦い、仲間を増やしていくもの。最終的には元の世界へと帰る方法を見つけて、強くなって帰るのだ。
一時間ほどで第一章を終えた。時刻は夜の十二時近くだ。
俺はゲームを終え、【トリル】を起動すると迦楼羅のオリジナル曲を流した。先日出たばかりの新曲だ。もう歌詞を覚えるほどに聞いた。
今日の子守唄は、これになりそうだ。
□■□■□
──身体が、浮遊していくような感じがした。
──意識が、この手を離れて去っていくみたい。
──すごく、ふわふわとした夢を見ているようだ。
□■□■□
不思議な感覚を覚えて目を覚ませば、そこはいつもの部屋だった。すぐ隣の机に置かれたスマホを見れば、時刻は朝の八時十五分過ぎ。
「……やっべ…遅刻じゃん」
学校へはどれだけ走っても十五分はかかる。これから着替えて、歯を磨いて、走っても恐らく三十分ほど。学校へは八時半には着かなければ遅刻扱いだ。もはや間に合わない。
「仮病使うか?」
休むという手もある。そう考えた時、とりあえずリビングへ向かおうと気がついた。
「おーい」
そういえば、いつもの生活音が聞こえない。父さんは仕事へ、中二の妹は学校へ行ったとしても、専業主婦の母さんはいるはずだ。
「おはよー」
そう言って一階のリビングへ辿り着くが、カーテンは開いていないし明かりもついていない。
…今日って、土曜日だっけ? もしかしてまだみんな寝てる?
だが、そんなわけがない。スマホには確かに木曜日とあったはずだ。何かがおかしい。
両親の寝室へ向かうが、ベッドには誰もいない。
次に妹の部屋をノックするが返事がなく、入ってみてもやはり誰もいない。
「…壮大なドッキリ?」
んなわけないだろう、と自分の馬鹿げた考えを否定する。
だが、ここは確かに家だ。
一体何が起こっているのだろうか?
とりあえず部屋へ戻り、パジャマから黒のTシャツと紺のズボンへと着替えた。スマホと財布をジャケットのポケットに突っ込み、玄関を出る。道には誰もいないが、太陽はしっかりと昇っていた。光景だって間違いなく自分の住む街そのもの。
何が、起きて…。
『ピンポンパンポーン! 驚いたぁ??』
どこから、というわけでもなく世界そのものに響くような声がした。辺りを見回しても、声の主の正体はない。
『とにかくぅ〜…学校へレッツらゴー! だよ?』
よく分からない。
聞いたことのない声だ。
それに…。
「学校?」
もしかして自分はまだ夢の中で、おかしな物を見ているのかもしれない。
違う、これは現実だと心の底で理解しながらも、そんな理想を抱いて、俺は学校へと走った。
そうして、目撃する。
いつもの二年五組の教室へ息を切らしながら辿り着いた時。
五名の生徒が立っている様子を。
震える者も、中央から目を逸らす者もいた。
吐きそうな者も、青ざめた顔の者もいた。
そして、中央には……。
「篠崎?」
明るくてお笑い担当のようだった友人の姿。
首から出血し、うつ伏せになって床を這うように窓の方へ向く肉体。髪は乱れ、腹からも出血しているように見えた。
壮絶で、凄惨な現場。
「海斗…」
生徒の一人が俺に気がついて名前を呼んだ。蓮だった。
「これ…どういう…ことだ?」
震える声で問いかけるが、血の匂いで吐き気がして口を閉じた。
『ピンポンパンポーン! おどろいたぁ?』
またおんなじ声がした。今度は校内放送だった。
『ありゃりゃ? まだ全員揃ってないかんじぃ?』
男とも女とも分からない高めの声が告ぐ。
『ここはねぇ、いわゆる仮想空間みたいなやつ! VRMMO? みたいな? とにかくぅ、現実世界にちょーぜつそっくりさんだけど、現実じゃないの! ゲームの中だって思えば良いよぉ〜』
ゲームの中。
一体全体なんで?
なんの目的で?
どうして俺が?
『これからねーえ、デスゲームやるよっ!!』
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白いと思っていただけたら嬉しいです!