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黒の空が明けるまで  作者: Alice
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少女と母

【母】

リティは母がとても好きだ。厳しい父の修行が終わると必ず母の元に足を運びその日あったことを話す。体が弱くベッドから出ることの出来ない母ではあったが、リティが来ると母に仕えるネアルに体を支えられ起こして向かえてくれる。そして優しい声で「おかえり、リティ」と言ってくれる。それがリテルシアにとって何よりも嬉しいことなのだ。


ゆづきがチェーロに来てからは2人で母の部屋に行くことが当たり前になっていた。リティが母と話す時はネアルは扉の前に控える。ゆづきも同じく控えることが多く、2人で話すことが増えていった。歳は違えども同じく主を愛して仕える者として話は合うようで色々な話をする。実力主義のチェーロではあるが出生不明のゆづきを悪く言う者も多い中気にせずに話してくれるネアル。

ネアルはアルビノであり、リテルシアの母、ヴィアの専属メイドであるため外に出ることは滅多にない。その上極度のビビりで、後ろから話しかけようものならいつも持ち歩いている大きなカバンを振り回してくる。色々と危ない彼女はあまり動けないヴィアの傍を離れない。外のことを聞くのはネアルにとっても楽しい時間なのだ。

ネアルはゆづきにたくさんの話をした。毎日リテルシアが母に会いに来る度に。生き別れた弟の話やいかにヴィア様が素晴らしい方なのかなど色々。そして人の殺し方生かし方。裏仕事の納棺技術、死化粧。それら含んで医療に通じるネアルの話はゆづきにとってリティを守る為になるから学ぶ。


母に仕えるのはもう1人。12になるアスタリシア。外見はもう少し上に見えとても落ち着いている彼女は、リテルシアにとって頼れるお姉さん的な存在。一人っ子のリティは彼女を‘シア’と呼び姉のように思っている。


アスタリシアは家族を亡くしている。末の妹のリテルシアが死んだのは今のリテルシアよりも幼いころだった。同じ名を持つリテルシアを重ねて見ている 。しかし、それは仕える主に対して不敬であるため、それを悟られ無いようにリテルシアを姫様と呼ぶ。妹のようにリティと呼ぶ事は出来ないと。自分に言い聞かせる為に……。


アスタリシアは、次期当主として産まれてきたリテルシアは出産や幼少期は敵に狙われやすいため隠されたおり、知ってる人は限られている。そんなリティが産まれた時から知っている数少ない人の1人である。



ゆづきが来てから1年過ぎた頃の事だった。

母が亡くなったのは。


ヴィアは元々体が弱く医師に告げられた宣告はとうに過ぎていた。リテルシアが来る度元気を装っていたが、限界を迎えていたのだ。

夏の夜明け前。

いつも笑顔の母は笑顔で眠るように命の灯火を消していった。

優しい母がいなくなりリティは日が昇るまで泣き続け、まるで全ての涙を流しきったかのように。感情を表に出すことが無くなっていった。



ヴィアを母のように慕うアスタリシアも、静かに涙を流し別れを悲しんだ。

その後はリティの元に仕えることにした。ヴィアの面影がある娘であり、妹のように思うリティを近くで見守る事にしたのだ。幼く亡くなった家族達のようにならないようにと願い、これ以上愛する者の死を見なくていいように守ることを誓う。これまで通り裏切り者の処理を人知れず行うことは続けるが、それ以外は全て傍にいて失わないようにと、大切に。



死者の弔いは納棺師であり母を愛していたネアルが行った。本当に愛しい者を触るように防腐処理を行い棺に入れ飾り付けていく。彼女が何を思っているのかは本人のみぞ知る……。

ヴィア亡き後、ヴィアの傍にいることを選び、死体が痛まないように丁寧に世話をしドール化をさせていく。

それからは屋敷の襲撃者の遺体処理や、仲間の弔いの仕事を行い、微笑むヴィアのいる地下室へと帰る。


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