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第83話 互いで互いを守るために

「あーあ、最後に紅蜜飴食べればよかったなぁ…………」

「次の機会にいっぱい買うから、今は我慢だ」

「ほんと!? わぁーい!」


スペリラを出た俺たちは楽しかった思い出に浸りながら次の目的地、シャイレーツ海に向かっていた。


「思い出に浸るのも楽しいけど……ベルは一刻も早く話し合うべきものがある。と思う。」

「話し合うべきもの?」


うーん……なんだろうか…………


「……もしかして、スタンピードの……?」

「大体当たり。あの魔物と戦った時のメアリスはいつもと違った。」

「うぅ……ごめん……」

「責めているわけじゃない。でも。いきなりのことで動揺したことは事実。今後ああいうことが起こらない為にも。ベルたちはもっとお互いのことを知るべき。」

「確かにな……うちもそう思うわ」

『ベルにしては真面目なことを言うのだな』

「どこかの誇り高き神獣様(笑)とは違うから。」

『なんだと!? なのだ!』

「主に戦闘面においての弱点。どのような状況で精神が乱れるのか。また何を得意とするのか。エトセトラ。それを知ることによって互いで互いを守る。」

「……そうだな、なにか起きてからだと遅い…………ベルの案を実行しよう。ありがとうな、ベル」

「うん。ベルは仲間が大事だから。」


その言葉を発するベルの表情は少し安らいでいる様に見えた。


「見本として。ベルがトップバッター。あとセットでアナ。いい?」


全員がコクリと頷いたのを見て、ベルは少し間を置いて口を開く。


「ベルは知っての通り。精霊族。魔法が得意で接近戦は苦手。たくさんの種類の魔法を使える。攻撃魔法が得意。固有魔術(オリジナル)で通常とは違うトリッキーな動きも可能。戦闘時に心を乱すことはほぼない。以上。」


ベルの圧倒的な威力の魔法は俺たちのパーティの要だ。


それ以外にもベルが好んで使う固有魔術だと……目くらましや錯乱で使える、花火を大量に炸裂させるというものもある。

間近でくらうと、轟音と強烈な光でしばらく動けないだろう。


更には防御魔法で味方を守ることも出来る。


そんな彼女の唯一の弱点は、接近戦。

いくら魔法の詠唱の速い精霊族であろうと、肉弾戦の激しさには対応できない。


『そんなベルの弱点を補うのがこのわがはいなのだ! わがはいは神聖魔術と呼ばれる特殊な魔法を使うのだぞ! すごいだろうなのだ! ガハハ!』

「でもアナは未熟だからあんまり使えない。」

『うるさいのだ! ……コホンなのだ。わがはいは基本的に苦手な攻撃などはないのだ! あと……わがはいは守護者形態(ガーディアンモード)という姿に変形することが出来るのだ。その守護者形態による戦闘力はこのパーティ最強と言って差し支えないのだ!』


…………確かにアナの言っていることは正しいかもしれないな。


アナはこんなだが、神獣という神聖な存在だ。


戦闘するところを多くは見ていないが、あの鎧姿の……守護者形態のアナの圧はとんでもないものだった。


神聖魔術は信仰の厚い教会の人間に神が与えるもの……そんな風に認識していたが、神に近い存在であるアナも神聖魔術を使えるようだな。


今後アナの神聖魔術に頼ることがあるかもしれないな。


「…………ベルのツッコミがないってことは本当に最強なんだ! すごーい!」

『さらっと失礼なこと言うななのだ!? わがはいがいつも自惚れてるみたいな…………』

「うん。その通り。」

『ぐはっ!?』

「自覚してなかったんか?」

『がはっ!?』

「アナ…………」

『え、エル……貴様は味方を……』

「自惚れ過ぎても良い事なんてないぞ?」

『ごはあっ!?』


アナは言葉の刃に貫かれ、ベルの頭に倒れ伏した。


「次はどうする?」

「うちはみんなに任せるで」

「それなら私が行こうかな!」


全員特にアナに触れることなく話が進んでいく。

リンチに参加していた自分が言うのもなんだが……不憫だな。


そんなことを考えている間にメアリスは話すことを整理し終え、口を開いた。


「私は固有魔術の創造芸術(マイ・アート)を使って戦うのが得意なの! 着弾した瞬間に魔力波とともに爆発するパレットナイフ、巨大化するフォーク、あらゆる力を反射させるスプーン…………私はそれらを使うのが好き! 他にも私が想像できる範囲で、魔力が足りればなんでも創れるんだー!」


改めて聞くと、とんでもない能力だな…………

物質創造、やっていることは神と同じだ。


普段メアリスが好んで使っている食器とパレットナイフにはそんな効果があったのか。

この中だと……あらゆる力を反射させるスプーン、というのが頭抜けて強そうだが…………


「私は近距離、遠距離どっちでも戦えるけど……唯一苦手なのが……火……なの。私は絵画だから、燃えたらすぐに死んじゃう」

「なるほど。」

「それで怯えてたんやね……」


メアリスは生きる絵画。


その鮮やかな色彩も焼けてしまえばそこに残るものは……漆黒のみ。


「うんうん」

「僕達も同じだね、あはは」


メアリスのブローチからカレットとザックが出てくる。

そう、これもメアリスのとんでも能力その二だ。


メアリスの能力というか、メアリスの身につけている魔道具……ブローチの能力だ。

あらゆるものを収納し、身につけた者への火属性を完全にシャットアウトするという能力を持っている。


ここで言う『あらゆるもの』には生命体も入っている。

今出てきたザックとカレットが出てきたのがいい証拠だ。


それに……以前、俺もメアリスのブローチの中に入ったこともある。

この身をもってあのブローチに生命体が収納出来ることが証明されている。


「でも、このお父さんのブローチのおかげで私が炎に焼かれることは無い。今みたいに自由にみんなを出し入れできて、火属性攻撃を無効化できるの」

「それ、ごっつすごない?」

「ベルもたくさん魔道具は見てきた。けど。そんなすごいのは聞いたことない。母上でも作れないかも…………」

「神器クラスなのだ……」

「ふふーん、お父さんはすごいんだよ! …………あ……」


メアリスは生みの親であるソロウ……父を褒められて上機嫌になる。

しかし、メアリスはそれから数瞬後ハッと悔しい顔をして胸にあるブローチを握りしめる。


「……お父さんはすごいのに…………お父さんからこんなすごいものをプレゼントされても……私は火が怖いまま…………情けないよ……」

「そんなことないだろう」


俺はメアリスの言葉を即座に否定した。

お久しぶりです

約半年ぶりの更新でしょうか?

一度連載を中止したことには深い理由が…………特にありませんでしたごめんなさい

楽しいゲームがいっぱい出てきたのが悪いんです


待っていた方々、本当に申し訳ございません

そして、これからは以前のように毎日投稿ではなく、気分で投稿していきたいと思います

無理して毎日投稿して更新を長期間休止するよりもそちらの方が良いと判断した故です

気長に待っていただけると幸いです

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