第81話 英雄様!
パーティ解散についての話をした後、全員大人しく寝るかと思いきや、明け方まで遊んでしまっていた。
最初は遊び道具もなければ、真剣な話をして全員少し疲れていたのですぐに終わる。
全員がそう思った。
しかし、メアリスの固有魔術によって『トランプ』が創り出されてしまったのだ。
結果、俺たちは夜遅くまで遊んでしまい、ろくに寝ることは出来なかった。
流石にこれ以上スペリラに留まっていると宿代も馬鹿にならないし、そろそろ出たかった。
なので、特別にメディアスが疲労を即時回復する薬を作ってくれた。
本当はこのような薬で乗り切るのは良くないそうなのだが、今回はしょうがないとのことで薬を作ってくれた。
楽しかったので後悔はない。
『うっ……結局一度も勝てなかったのだ……』
「アナ。ざこい。」
『ごばっ!?』
「ろくにルールの知らんうち目線でも…………あれやったな」
『ぐべっ!?』
「弱かったよね」
『ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?』
「みんな……」
『え、エルよ……貴様は味方をしてく……』
「いくらアナが弱すぎたからって言い過ぎだろう」
『きっ、きさまぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?』
いつも通り、アナは酷い扱いを受けていた。
しかし、いくらなんでも弱すぎたのだ。
これは仕方の無いことである。
うん、きっとそうだ。
そんな感じでふざけながら俺たちは出発準備を終える。
毎度毎度、本当に騒がしいパーティだ。
それが本当に楽しいんだがな。
俺たちは宿を出て、スペリラを出ようとする。
「みなさーん!」
クロイツの声が聞こえたのはそんな時だった。
クロイツは手を振りながらこちらに走り、息を切らす。
「ふぅ……ひどいじゃないですか、何も言わずにスペリラを出るなんて」
「すまんすまん、早朝だから起きてないかと思って……」
「もう! だったら起こしてくださいよ。それに、何も言わずにスペリラを出たらせっかくのチャンスを棒に振るところでしたよ?」
「せっかくのチャンス?」
「そうですよ! ほら、ついてきてください!」
「おわっ!?」
クロイツは俺の腕を引っ張る。
名残惜しくなる前にここを発とうと思ったのだけど……
ここで別れたら再びクロイツと会うのも随分先になりそうだしな。
大人しくついていくとしよう。
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「ほら! ここですよ!」
「えっと……冒険者ギルド……?」
「はい、エルはここで受け取るものがあるんですよ」
「受け取るもの……?」
「さぁさぁ、早くいきますよ!」
俺たちはクロイツに急かされるように冒険者ギルドに入る。
すると扉に入った瞬間に……
──────パァーン
大きな破裂音が耳を劈いた。
「スペリラの英雄、エル・シュラインさん御一行、Cランク昇格おめでとうございまーす!!」
「「「うおぉぉぉぉぉ!!!」」」
……なんだ?
何が起きたんだ?
何が起こっているのか分からず目をぱちくりさせていると、受付嬢の一人がこちらに一枚の板のようなものを差し出す。
「こちら、スペリラからの感謝状になります。我々をスタンピードから救って頂いて、本当にありがとうございました!」
「えーっと……」
「エール!」
メアリスがひょいと俺の顔を覗き込む。
……こういう時は堂々と…………だったな。
…………いや、やっぱりよく分からない。
メアリスに目で助けを求める。
メアリスはやれやれという感じでため息をこぼし、一枚の紙を創り出した。
「これ読んで! はやくはやく!」
「わ、分かった」
食い気味に詰め寄るメアリスの圧に圧倒され、紙を受け取る。
「えーっと……『この程度俺様たちなら余裕だぜぃ! いつでも頼ってくれだぜぃ!』…………はい?」
「キャー! かっこいいー!!」
「おいおい、英雄様はやっぱ言うことがちげぇなぁ!」
「私、あの人みたいな冒険者になりたいなー!」
俺がよく分からない文章を読み上げると、なぜか冒険者たちは一気に盛り上がる。
「メアリス……やったな……?」
「くすくす、自分で言わないからだよー」
「むしろエルはこれくらい言った方がいい。」
「メアリス、グッジョブやで」
『ガハハ! 英雄様なのだー!』
「うぐ……みんな容赦ないな……」
やられた…………
こんな罠が仕掛けられていたとは……
どう場を収めようかと考えていると、一人の受付嬢が声をかけてくる。
「スペリラの英雄エルさん、冒険者カードはお持ちですか?」
「持ってますよ。あと、英雄はやめてください……」
「ふふ、謙虚な方ですね。ランク昇格の手続きを致しますので一度預からせていただいてもよろしいですか?」
「昇格……ですか?」
「はい! エルさんは現在Fランクですが、飛び級ということでEランクとDランクを飛ばしてCランクとなります」
「飛び級だって! すごいじゃん!」
「えーっと……一定の依頼を受けないと昇格できないものではないんですか?」
「本来の場合そうなのですが、今回は例外です」
「例外……ってなんですか?」
「エルさんのパーティはこの街の崩壊を防いだんですよ? そんな方々にワンランクアップだけでは当然釣り合わないでしょう。ということで、上に掛け合って飛び級という例外が認められました。もうワンランク昇格させるべきだと言ったのですが……そう何度も例外を認めるわけにはいかないということで……申し訳ありません」
「いやいや! 一気にCランクに昇格するだけで充分で……いや、過剰なレベルなのに……」
「まったく……お主は自分の力を低く見すぎじゃ」
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