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故郷を失った少年、最強絵画の少女とともに冒険者をする (打ち切り)  作者: いちかわ
冒険者の使命~スタンピード~
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第79話 お説教なのだ

「俺は……このパーティを解散しようと思ってる」

『…………は? なのだ?』

「ここまで来たし、今更だけど…………みんなを危険な目に遭わせるのはどうなのかな……って」

『…………』

「あの巨大ラフレシャーラと戦う時のメアリスの顔……アナも見ただろう……? 震えて、顔も青ざめて…………すごく怖そうだった。いや、怖いなんてもんじゃないと思う……死を前にした恐怖だ…………」

『……エル』

「そんな思いをさせているのに、俺は全く気を使えなかった。気づけなかった。そんな思いをさせてまで……俺はメアリスに戦わせていたんだ……」

『…………エルよ……』

「メアリスだけじゃない、ベルも、メディアスも……アナだって、本当は命を賭けてまで戦うなんて……」

『……正直見損なったのだ、エル』

「あぁ、そう言われるのも当然……」

『そうではないのだっ!!』


頭にアナの怒号が響く。

あまりに大きな声で頭が痛くなった。


『貴様はベルやあの娘たちがそこまで弱いと思っているのかなのだ!?』

「いや、俺に比べたらベルたちの強さは比べ物にはならな……」

『だからそうではないのだっ!! なぜ分からないのだ!? わがはいが言っているのは敵を打ち倒す力ではなく、()()()()()()()()()()()()()のことを言っているのだ!!』

「芯を持つ……強さ……」

『貴様にはあやつらが嫌々戦っているように見えるのだ? 貴様に呆れているように見えるのだ? ……パーティ解散を望んでいるように見えるのだ?』

「…………」

『まだ時間はあるのだ。貴様は変なところに鈍感だが、他人の心情を量る力はあるはずなのだ。むしろ敏感なほうだろうなのだ』

「それは……」

『心の奥底ではあやつらが貴様を慕ってついてきていることも、貴様のことが大好きなことも……本当はパーティ解散なんてしたくないことも分かっているはずなのだ』

「…………」

『神獣であるわがはいにここまで言わせておいて、愚かな決断を下したならば……わがはいがぶん殴ってやるのだ』

「…………」

『貴様のパーティ解散という決断があやつらを想う気持ちなのは分かっているのだ。だが、その選択は間違っているのだ』

「……ありがとう」

『……ふん、良い選択を期待して待っているのだ』


アナはチキンの乗ったお皿を頭に乗せ、トテテと走り去っていった。

…………それがなかったら最高にかっこよかったな。


まぁ、それはともかく──────


「……仲間なら……仲間(かぞく)ならこうするべきではなかったな」


…………ずっと座り込んで考えていては疲れるな。

真剣に考えたいからこそ、今は一度楽しんで頭をリフレッシュさせよう。



◇◇◇◇◇



「なんなのですか!! あの女は!!?」


この世の闇という闇を全て集めたかのような黒い空間の中、一人の男が苛立ちを覚えていた。


「スペリラにあのような人間が居るなど聞いていない…………うまくいけばスペリラもろとも()()()()も一つ消せたというのに!!」


男が歯をギリギリと鳴らしながら地団駄を踏む。


「……まぁ、いいでしょう。元々足止めが目的でしたし…………脅威の場所が一つ判明しただけでも良い成果です……あの女は彼らについていく様子はないですし、このまま予定通りに計画を進めるとしましょう…………」


そう言い残し、男は闇に溶け込むように消えた。



◇◇◇◇◇



夜も更け、祝勝会もお開きになった。

冒険者や騎士たちに称えられ、正直、悪い気はしなかった…………


正面から大勢に褒め言葉をぶつけられるととても恥ずかしい。

あそこまで真っ直ぐ褒められたのは……アクスとの修行以来だろうか?


……いや、振り返るのは後にしよう。

今はなによりも優先すべきことがある。


そう、パーティ解散についてだ。


俺たちは宿屋に帰り、各々が寝る準備をしている。

あまりにはしゃぎすぎたせいで、みんな大事な話があると言われたことすら忘れているかもな。


『貴様ら、なぜ寝ようとしているのだ?』


そんなことを考えていると、アナの声が頭に響く。


「なぜ寝ようとしてる……って、明日はスペリラを発ってショイローツ海に行くんでしょ?」

「メアリス違う。シャイレーツ海。」

「明日は旅が始まるんやし、さっさと寝て身体休めるんがベストやろ? アナもはよ寝んと風邪ひくで? 子守唄歌ったろか?」

『あ、それはお願いした……って違うのだ! 子守唄なんていらないのだ!』

「アナ……神獣としてどうなの?」

『ベルよ! しゃらぁぁぁっぷなのだ!』

「はいはい。それで。なに? なんで寝ちゃいけないの?」

「えーっと……スタンピードを止めた後に俺が言ったことを覚えてるか?」


全員が顔を見合わせ、首をふるふると振る。


「……まぁ、楽しかったし忘れるのが普通だよな。大事な話がある、って言っただろう?」

「…………あ! そういえば!」

「すっかり忘れていた。」

「んなこと言っとったなぁ。んで、大事な話ってなんや?」

「あぁ……このパーティを解散しようと…………」

「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?」」

「……まじ?」

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

毎日投稿してますので、是非また次の日に見に来てください!

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