第76話 VSラフレシャーラ・終
「私の仲間を奪おうとした罪、もうなにしても償えないよ?」
今までとは明らかに違うオーラを放つメアリスが巨大ラフレシャーラを睨みつける。
「…………そうだな、あいつに見せてやるか……仲間の絆ってやつを」
「……よく分からないけど。ベルはメアリスに怖い思いをさせたから。謝らないといけない。ここで止まらないよ。」
「わ、わがはいも……その娘は気に入っているから守ってやるのだ!」
「仲間のメンタルケアも薬屋の仕事やでー! あんなクソ花、さっさと伐採したるわ!」
「スペリラだけでなく、私の戦友に危害を加えたこと、後悔させてあげましょう」
「みんな……ありがと!」
「キシャアァァァァァ!!!」
また奴は火球を放つ。
植物が火なんて出すなよ……
「……ん? ラフレシャーラが火…………そういえば……?」
俺は初めてベルの連鎖魔法を見た時のことを思い出す。
確か……あの時ベルはラフレシャーラに炎と氷の連鎖魔法を使ったたはず。
そのはずなのだが、ラフレシャーラは氷漬けになった。
そして、その氷漬けの死体にも焼かれた様子は無かった。
しかも今はベルと契約したおかげで魔法の知識がある。
あの二つの魔法は同じ上級魔法で出力に大した違いはない。
たとえ出力に大きな違いがあったとしても、ベルの魔法制御ならばそんなものねじ伏せるだろう。
途中で炎が消えることは有り得ない。
つまり……その時のラフレシャーラには炎が効かなかったということか。
普通のラフレシャーラであれば、火属性は弱点だ。
しかしそいつに火属性魔法が効かなかったことも事実。
……常識に囚われてはいけないな。
「ブリザードバレット・チェイン・チェインボルト!」
俺は氷の弾丸と全てを通り道とする電気を合わせる。
氷の弾丸はバチバチと音を立てながらラフレシャーラに向かって飛んでいく。
「お手伝いします! ウィンドカッター! ウィンドカッター!」
クロイツは初級魔法のウィンドカッターをリズミカルにどんどん放つ。
初級魔法と侮るなかれ。
熟練の魔法使いであるクロイツのウィンドカッターは撃つ度に薄く、鋭く、重く……上級魔法と変わらないほどの威力になる。
「キシャアァァァァァァァァ!!」
「おーっと、その香りは禁止やで?」
メディアスが毒と持っていた薬の材料を使ってピンク色のなにかを作り出し、それを宙に放り投げた。
「アナ。砕いて。」
「合点承知太郎なのだ!」
「合点承知之助じゃないのか!?」
俺のツッコミを無視し、アナはピンク色のなにかを拳で砕いた。
すると、瞬く間にいい香りが広がった。
メディアスは器用だな。
こんなことまでできるのか。
臭いによって術者の魔力供給を止めようとしていたが、それが失敗した奴はまともに魔法をくらう。
「ギィィィィィィ!!」
先程までとは違い、しっかりダメージを受けている様子だ。
電気の通った氷の弾丸と、撃つ度に威力の増す風の刃が巨大ラフレシャーラを襲う。
やっぱり火属性以外ならダメージが通る!
「こいつ、火属性以外なら通るぞ! 奴を囲って狙いを散らばらせながら隙を見て大きな一撃を叩き込もう!」
「「「了解!(了解。)」」」
皆は俺の指示を聞いて素早く行動してくれる。
俺の言葉を少しも疑わないその姿に、仲間っていいなとしみじみ思う。
「アナ。合わせるよ。」
「わかったのだ!」
「「ホーリーバスター・チェイン・セイクリッドフィスト。(!)」」
二人は阿吽のように呼吸を合わせ、浄化の魔法をラフレシャーラに浴びせる。
浄化の光は魔物にとっては毒。
「キシャアァァァァ!!」
巨大ラフレシャーラは浄化の光に苦しみ、魔法を止めようと強烈な火球をメアリスに向けて放つ。
それを見てすかさずベルが前に出て魔法を防ぐ。
「火はベルとアナがなんとかする。どっかん係は任せる。」
「……分かった!」
「うむ! わがはいたちに任せるのだ!」
ベルはメアリスに向けてウィンクし、メアリスはそれに即座に気づいて構える。
俺もメアリスに合わせるため、魔法を唱え始める。
「ドロウ・インテリア!」
「クエイクエッジ・チェイン・アクアボルテックス!」
メアリスは大きくジャンプし、大量のシャンデリアを描き、創造する。
シャンデリアは巨大ラフレシャーラの頭上から降り注がれ、うざったそうにしている。
俺はそこに水と土属性の連鎖魔法を放つ。
土が水で固まり、動きを拘束しながらダメージを与える。
これで葉や蔦でシャンデリアを防ぐことはできない。
「ギィアァァァァァァァァァ!!」
「ぐおっ!?」
最後の抵抗と言わんばかりの大きな火球が真上に放たれる。
自分もろとも俺たちを始末する気か!?
先程のベルの連鎖魔法レベルの威力だ。
「カレット、ザック!」
「はいはーい!」
「あはは、僕の出番だね」
「迎撃してそのままぶち殺すから合わせて! 雰囲気で!」
「「「雰囲気で!!!?」」」
なんて無茶な要求だ…………
まぁ、やるからには本気だ。
それに、火を目の前にして恐怖しているはずのメアリスが我慢しているのだ。
選択肢は一つしかない!
「「「我らは家族の契りを結ぶ者也。我らは至高の絆で繋がれている者也。故に、家族に手を出す貴様は我らが許さん! 開花せよ! 題『世界で一番大切な薔薇園』!」」」
全員で構築された大魔法陣から放たれるそれは辺りを花畑に変え、ラフレシャーラを飲み込んだ。
放たれた火球は最初からなかったかのように、跡形もなく消える。
仲間を……いや、仲間を傷つけることは許さない。
あの世で後悔しろ、キモイお花さん。
『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。
毎日投稿してますので、是非また次の日に見に来てください!
昨日は投稿出来ず申し訳ありません!




