第75話 VS巨大ラフレシャーラ・2
「がっ!?」
魔法障壁を砕かれ、奴の攻撃をまともにくらってしまう。
すると、俺の身体は紙のように吹っ飛ばされた。
「エル!! ドロウ・インテリア!」
「うっ……!?」
メアリスはそれを見て即座にソファーを創り出す。
メアリスの創り出したソファーが俺の身体を受け止めてくれた。
メアリスは俺に駆け寄って涙目になる。
「エル! 大丈夫!?」
「あ、あぁ……思ったよりも障壁で威力が落ちたみたいだ。メアリスのおかげで衝撃も和らいだしな」
「ほんとに? 無理してない?」
「無理な時は無理って言うさ」
「それは嘘」
「そ、そんなこと……」
「あるの! ……まぁ今はいいや。今はそれよりもあのお花さん」
メアリスは俺の無事を確認すると、巨大な奴に臆せず向かっていく。
俺もそんなメアリスに続く。
「いっくよー!」
メアリスは大量のパレットナイフを生み出し、投げまくる。
奴はそれを迎撃するように葉を飛ばす。
ラフレシャーラと同じような攻撃だ。
だがその葉はラフレシャーラとは比にならないほど鋭く、硬い。
ただ威力はメアリスのパレットナイフの方が上のようだ。
パレットナイフは葉と激突した瞬間に爆発し、一つのパレットナイフで複数の葉を撃ち落としている。
「レッドクリムゾン・チェイン・イグニートフレア。」
ベルが二つの火属性魔法を合わせ、とんでもない大きさの火球を生み出し、巨大ラフレシャーラに向けて撃ち出す。
「焦がし尽くして。」
「うっ……火…………」
「メアリス!?」
葉の迎撃をしていたメアリスが突然動きを止める。
当然迎撃をやめれば抑えていた攻撃はそのまま降りかかる。
そうだ、今まで普通に火属性の魔法を使っていたが、メアリスは火が大の苦手だ。
絵画という性質故、一度燃えてしまえばそこで終わり。
鮮やかなその色を全て漆黒に変えてしまう。
仲間なのに……こんなに大事なことを忘れてどうする!!
自分に苛立ちながらも俺はメアリスを守るため、前に出る。
「業火……違う! 吹雪の剣・残留!」
俺はダガーに氷属性を付与して葉を切り捨てていく。
メアリスは身体を震わせてへたりこんでいる。
当然だ、火属性を完全に遮断するブローチを付けているとはいえ、恐怖を消すことはできない。
今までは無理をしていたんだ……
無理をしていたのはどっちだ…………
……いや、俺がメアリスに無理をさせていたんだ。
メアリスは自分で火を克服しようと努力していたのに俺は…………!
「エアロブラスト!」
「ぐるぐる巻きやで!」
クロイツとメディアスが葉の迎撃に加勢してくれた。
目の前の危険は排除されたため、俺はメアリスを抱えて後ろに下がる。
「あ……ごめん……エル……」
「なんでメアリスが謝るんだ……! 悪いのは俺なんだぞ…………?」
「メアリス!! どしたんや!? 具合悪いんか? とりあえず今は休んで……」
「メアリス。怯えてる。何があった?」
「このわがはいに話すのだ!」
「大丈夫ですか?」
「う、あ……みんな……」
「キシャアァァァァァァァァ!!」
「え?」
奴の頭にある大きな花から大きな火球が放たれる。
なぜ?
あいつにはベルの連鎖魔法による火属性魔法が当たったはずだ。
そこらの魔物がベルの連鎖魔法を耐えることですら有り得ないのに、奴はすぐに反撃を仕掛けてきた。
油断した。
魔法を跳ね返す能力を持っていたのか?
どちらにせよ今から火球を防ぐには時間が足りない。
ベルの魔法ですら間に合わない。
火球が俺たちの目の前まで迫る。
「お父さん…………!」
『まったく、世話の焼ける子だ』
「え?」
──────シュウゥゥゥ…………
火球は一瞬で消え去った。
メアリスのブローチの効果か…………!?
まさかこんな大規模な炎攻撃をも防げるとは…………!!
「き……消え……た…………?」
「…………お父さん……」
俺たちが唖然としていると、メアリスはすくっと立ち上がった。
「……みんな、心配かけてごめんね」
「め、メアリス……?」
「私、いつまでも死に怯えてた。孤独に怯えてた。……家族のみんなを失うことを恐れてた。でも……もう大丈夫」
メアリスはこちらに向かって再び攻撃を仕掛けようとする巨大ラフレシャーラを思い切り睨みつける。
「私の仲間を奪おうとした罪……もうなにしても償えないよ」
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