第74話 VS巨大ラフレシャーラ?・1
俺たちはミレーユさんにスペリラの防衛を任せ、魔物を強化している謎の魔力の塊に向かっていた。
ミレーユさんのことは心配だが、心配ならば早く勝って戻ればいい。
そんなことを考えていると、なにか大きなものが見えてきた。
……というか、迫ってきている。
……魔物だろうか?
「全員ベルに寄るのだ!」
アナの言葉を聞き、全員がベルの傍に寄る。
メディアスもタイミングを見て傍に跳んだ。
「ハードプロテクション・チェイン・マジックバリア。」
ベルが物理、魔法を防ぐ二つの魔法障壁を作り出し、俺たちを包む。
魔法障壁で包まれた直後、槍で思い切り突かれたかのような衝撃が魔法障壁を襲う。
その正体は……蔦?
「……ヒビが入った。」
「ベルの魔法障壁にヒビを入れるほどの敵……!?」
「これは気を引き締めへんとな」
「む。」
「くるのだ」
「「「うわぁ!?」」」
とんでもない速度で光の線が通過する。
先程の蔦と同じものだ。
ベルは素早く飛んで避けるが、魔法障壁に包まれた俺たちはそれに引っ張られ、球体の魔法障壁内で身体が吹っ飛ぶ。
「大丈夫?」
「あぁ、だいじょ……」
「ちんたらしてるとやられる。一気に加速するけど準備はいい?」
「へ? ちょ、ちょっと待っ」
「猶予はない。もう加速する。」
「ま───」
──────ブォン
身体が思い切り魔法障壁にぶつかる。
……しかし、不思議と痛くない。
「まったく、人間は脆いのにこんなことをしたら死んでしまうのだ…………全員大丈夫なのだ?」
アナが受け止めてくれたのか…………
助かった。
「ありがとうな、アナ」
「ホンマに死ぬかと思ったわ……」
「ごめん。でもあそこで止まってても死んでたと思う。これしかなかった。」
「それは同意するのだ」
「ねぇねぇアナ、頭貸して」
「む? なんだ小娘、わがはいの頭などなにに使うのだ?」
アナはそう言いながらもメアリスに頭を寄せる。
「ありがと!」
「なっ……」
メアリスは鎧姿のアナを撫でる。
「私たちのこと心配して受け止めてくれたんだよね? だからありがと!」
なんというか……眩しいな。
アナはそんなメアリスの顔を見てぷいっとそっぽを向く。
「ふ、ふん……ただの気まぐれなのだ……。神獣たるこのわがはいが善意で貴様らを助けるわけがないだろう……なのだ……」
「それでも、ありがと! 今度は私がアナを守ってあげるね!」
「~~~~~!」
メアリスの笑顔を直視したアナは手で顔を覆う。
「アナ。ろりこん?」
「違うのだっ!? というか、そんな言葉どこで覚えたのだ……?」
「冗談。あんなの直視したらベルもそうなる。 あとその質問の答えは内緒。……それと。そろそろこの蔦の主に会える。準備しといて。アナもいつまでも惚気けてないの。」
「の、惚気けてなんかないのだ!!」
…………アナは本当神獣なのだろうか?
あまりに人間味があるので親近感が湧いてしまう。
「…………のだ」
「着地十秒前。」
「……!」
スピードがありすぎてよく見えないが…………
大きな魔物の姿が見える。
緑に赤……そして蔦…………こいつはもしや…………
「キシャアァァァァァ!!」
「きもいお花さんだ!」
「ラフレシャーラに似ていますね……」
「着地三秒前。魔法障壁解除するからうまく着地して。」
ベルが魔法障壁を解除する。
それを見越したかのようにメディアスが肩をブンブン回す。
「よっしゃ! うちに任しとき!」
メディアスは素早く地面に糸を張り巡らせ、トランポリンのようにする。
俺たちはそれに着地すると、大きく跳ねた。
「うぉ!?」
ラフレシャーラらしき大きな魔物が俺たちに向けて蔦を突く。
高く跳躍していてもお構い無しか!
「これじゃ無防備やんな……うち、余計なことしてもうた?」
「そんなことないよ!」
メアリスはメディアスの言葉を即否定した。
そして、巨大なフォークを生み出してそれに搭乗した。
フォークは更に大きく、大きく…………
劣等種ドラゴンを貫いた時よりも大きなフォークだ。
俺はそれを見てくるりと手を回す。
「吹雪のフォーク・解放!」
俺はフォークに氷の魔力を付与する。
これはいつも俺が使っている残留ではなく、解放。
魔力を残留させるのではなく、付与して一気に解放させる。
持続時間は短いが、その分一撃に集約させる切り札だ。
「いっくよー!」
落下の勢いと氷属性により威力の増したフォーク!
巨体の奴には避けられないだろう!
「ギッ……!!」
奴はなんと蔦でフォークを受け止めた。
あと劣等種ドラゴンでさえ一撃で貫いたメアリスのフォークを…………!?
奴は更に地面に埋めていた蔦も使い、フォークを退けた。
「イグニートフレア・チェイン・クエイクエッジ。」
ベルがそれを見て即座に連鎖魔法を唱える。
高温の炎によって溶かされた岩は溶岩となり、奴を飲み込む。
「え?」
「むむっ!?」
しかし奴はそれをものともせずに蔦を伸ばす。
間一髪でアナがそれを受け止める。
「こ、こいつ化け物なのだ……!!」
「同意。植物系の魔物なのに火の魔法でビクともしない。」
「では、風魔法ではどうでしょうか? エアロブラス……」
「キシャアァァァ!」
「うっ……この臭いは……」
「クロイツ……! ハードプロテクション!」
俺は奴の放つ悪臭を無視してクロイツの前に出る。
奴は再び槍のように蔦を突き出す。
「ぐっ……!!」
蔦とは思えぬほど重く硬い……!
障壁にヒビが入る。
そしてすぐにそれは全体に広がり……
「がっ!?」
「エルさん!!」
割れてしまった。
魔法障壁で勢いが弱まったとはいえ、モロにくらってしまう。
ベルの魔法でヒビが入るレベルの攻撃を防ごうなんて自惚れていたかもしれないな……
『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。
毎日投稿してますので、是非また次の日に見に来てください!




