第68話 冒険者の信念
「ここには力ない人が沢山います! そんな人たちを守るため、皆さんの力を貸してください!」
職員の必死さが伝わる叫びがギルド全体に届く。
その叫びを皮切りに、また冒険者たちがざわめく。
スタンピードなんてどうにかなるのか?
本当にこの街を守りきれるのか?
……本当に、ここで死んでしまうのではないか?
そんなネガティブな言葉が飛び交う。
こんな状況の中、メアリスがダンッと足を鳴らす。
冒険者全員は振り返り、メアリスの方へ視線を向ける。
「あなたたち……本当に冒険者なの?」
その言葉を聞き、射るような視線を向ける者も居れば、ガキ呼ばわりする者まで現れる。
メアリスはそれを全く歯牙にもかけない様子で言葉を続ける。
「私たち冒険者はなんのために存在するの? 力のない人たちを守るためじゃないの?」
「「「…………」」」
「同意。ベルもそう思う。……確かに。この戦いで命を落とすかもしれない。なのにスペリラは陥落して無駄になるかもしれない。そんな気持ちの中戦うのは辛い。」
……ベルの言うことも、メアリスの言うことも、もっともだ。
こんなにたくさんの人がいる中……こうもはっきりと言える者は中々いないだろう。
……今この状況でもっとも必要なのは士気を上げる存在。
その存在は……一人でも多くいた方がいいよな。
「……俺たち冒険者は、力ない人を守るためにいる。たとえスペリラが陥落しても……命を落としても……一人でも多くの人を助けるのが俺たちの仕事じゃないか?」
「うちは誰も死なせる気はあらへんけどな! ……今、あんたらが言ってるガキにも、うちみたいなかわいい女の子にも、自分ら負けてるんやで? たとえうちらは自分ら全員しっぽ巻いて逃げ出そうとも、この街が陥落しようとも、戦い続けるつもりや」
メディアスは敢えて挑発的な言動を取る。
冒険者たちの血の気が多いことを理解しての言動だろう。
そして、どんなことになろうと戦い続けると啖呵を切ってくれた。
そんな俺たちを見て、クロイツはクスリと笑い、次いで声を張り上げる。
「私たちも戦います! スペリラのためなら、守るべき人たちのためなら……この身が砕けようとも悔いはありません」
冒険者たちはクロイツがそう言ったことで、士気が上がり始める。
流石Aランク冒険者、嵐の魔女。
そんなクロイツや冒険者たちを見て、ミレーユさんはやれやれという感じでため息をこぼし、同じように声を上げる。
「当然、妾も戦うのじゃ。ここまで女子どもが決意を表明して、お主らはまだ戦う覚悟もできんのか? 逃げるな、とは言わんのじゃ。戦え、と言っておるのじゃ。命の危険を感じたら逃げれば良い。まぁ、妾たちは骨が砕けようと、引き裂かれようと戦い続けるがな」
ミレーユさんはそう言い放つと、呼びかけていたギルド職員のそばに行き、「作戦会議じゃ」と、何事も無かったかのように説明を促す。
ギルド職員は呆気にとられながらも、今回のスタンピードの説明を開始する。
「……先程も知らせましたが、今回のスタンピードはかなり大規模です。中にはAランクの魔物も複数おり、それの討伐には数十人の冒険者が必要かと思われます。まともに戦っても勝ち目は薄いでしょう」
Aランククラスの魔物が複数……中々に骨が折れそうだな。
そう思ったが、こちらには実際にAランクの魔物を瞬殺したメアリスもいるし、原初の種であるメディアス、ベルも居る。
更には熟練の冒険者であるクロイツに、かなりの実力者であろうミレーユさんもいる。
いざとなれば、ブローチにいる作品たちを全員解放することも可能だ。
勝てない戦いではないはず。
「……そこで、スペリラの結界を盾に、籠城戦をするのが最適かと思われます」
なるほど。
籠城戦なら時間はかかれど、被害はかなり抑えられるだろう。
結界が壊れたらまずいが……ここは魔法使いの街。
結界の補修はお手の物だろう。
原初の種の中でも屈指の魔法のエキスパートであるベルもいるし、耐久性は問題ないな。
ホッケーの時にはアナも結界を作っていたし、この二人の結界ならば、魔族や魔人でもない限り破壊は困難だろう。
「結界内から魔法を飛ばし、近距離戦闘が得意な方を転送するためのゲートを展開する部隊、そのゲートから攻撃魔法を放つ部隊、ゲートを通って結界に取り付いた敵を剥がす部隊に別れましょう」
「……時間は刻一刻迫っているのじゃ。主らも覚悟を決めい。妾はもうゆくぞ」
最後にそう言い、亜麻色の髪をたなびかせてギルドを出た。
「全く、母さんったら……かっこつけすぎですよまったく……」
「それもミレーユさんらしいんじゃないか?」
「ふふ、そうかもしれませんね~。では、いつ魔物が来るかも分かりませんし、私たちもいきましょうか」
「そうだな、行こう。みんな、ついてきてくれ」
「人間さんたち守るぞー! 魔物の殺戮パーティだ!」
「新しい魔法の実験体になってもらう。くすくす。」
『わがはいはいざとなったらサポートするから、その時になったら起こしてなのだ……ふわぁ……』
「なんの薬を作ればええかな……魔力回復薬と……」
みんなが意外とゆるーい感じでギルドを出る。
メディアスだけは真剣そうだったな。
「あの……!」
俺もギルドを出ようと扉に手をかけると、職員に呼び止められる。
俺は軽く首をそちらに向ける。
「あの……ありがとうございます!」
「俺はなにもしてませんよ。……援軍、待ってます」
その一言だけをその場に残し、俺はギルドを出た。
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