第67話 決着 そして事件
──────カコン
この音は……パックがゴールに入った音……!
まだ視界は晴れない。
どっちだ?
どっちのゴールに入った?
そんなことを考えていると……アナが片方の腕を上げているのが見えた。
「────…………ベルリスックレットリューチーム、ゴールなのだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
鼓膜を破るほどの大声が響き、ベルリス……なんちゃらチームの勝利を知らせる。
……負けてしまったか。
その声を聞き、ベルリスチームは飛び上がる。
「やったー!!」
「ギリギリだった。」
「私たちの勝ちだねー!」
「あはは、楽しかったよ」
「リベンジ成功だ!」
……全力で勝負した結果だ。
悔しいが、これが今の俺の実力だ。
「……負けてしもた……」
「メディアス」
「エル、すまん! うちのせいで……」
「メディアス、それは違うさ。これは俺たちのせいだ」
「……!」
「かなり……いや、すごくおこがましいと思うけど……俺は魔毒を作るのは初めてだし、メアリスやベルに比べれば実力不足だ。メディアスがメアリスかベルと組んでいたら勝っていたかもしれない」
「そんなことあらへんで……初めて作ったとは思えへんほど、エルの魔毒は強力やったで。せやから……これはうちらの実力不足が原因、そういうことにしよや。元々はエルが言ってくれたことやけど……」
「そうだな。……次に勝負する時は、絶対に勝とう。勝つために、もっと強くなろう! 時間はたくさんあるんだ」
「……せやね! 次は負けへんでー!!」
そういうことで、俺とメディアスはリベンジの炎を心に灯し、このなんでもアリのホッケー対決は幕を閉じた。
次こそは絶対に勝つぞ!
◇◇◇◇◇
「……中々恐ろしいですね…………人間とは思えない成長速度です。やはりアレの血を引いているからでしょう……いよいよ当方の手に負えるか怪しくなってきましたね……」
黒よりも黒い闇の中、一人の男が佇んでいた。
男は怪訝そうな顔をして爪をギリッと噛む。
「しかし……彼らの次の目的地は海……そして、狙いは秘宝と呼ばれる魔道具でしたね。横取りのために動きながら駒を探すとしましょう。そのために……時間稼ぎが必要ですね。クフフフフフフフ!」
男は醜悪な笑みを響かせ、闇にドロリと溶け込むように消えた。
◇◇◇◇◇
「あー! 楽しかったー!」
「また遊びに来ような」
「うん!」
「そんな楽しかったスペリラだが……今日で一旦お別れだな。次の目的地……シャイレーツ海に向かおう。旅の準備のために……」
──────ゴーン
なんだ?
突然そんな音が鳴り響く。
周りを見てみると、慌てた住人の姿が見える。
「スタンピード! スタンピードですっ!! 至急冒険者の方々はギルドに集まってください!!」
スタン……ピード…………!!?
「? エル、スタンピードってなに?」
「…………」
「エル?」
呆然と立ち尽くしているエルにメアリスは身振り手振りで反応を求める。
しかし、反応がない。
「スタンピード。確か。突発的な魔物の大量発生のこと。」
「魔物の大量発生……!? やばいじゃん!! エル、早く行かないと!!」
「…………」
メアリスはエルに大声で呼びかける。
「エル! どうしたの!?」
「あっ……ご、ごめん。とりあえず冒険者ギルドに行こうか……」
「……?」
メアリスたちはエルの態度に違和感を覚えながらも、冒険者ギルドに向かった。
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俺たちはスタンピードをどうにかするため、冒険者ギルドに集まっていた。
スタンピードなんてものが起これば、最悪の場合、街が一つ滅んでしまう。
それほどの大災害だ。
「エル! 良かった、まだ残ってたんですね」
その声に振り返ると、走ってきたクロイツが視界に入った。
「出発前に遊ぼうと思って遊戯場で遊んでてな。スタンピードが起こるなら……残ってて良かったよ」
「そうですね、エルたちが居れば被害はかなり抑えられるでしょうし」
「本当は妾一人でも問題ないのじゃがな」
クロイツの後ろから綺麗な顔立ちの女性が現れる。
とても整った容姿で、通りかかったら思わず目を奪われてしまうだろう。
その綺麗な声も水の音のようにとても柔らかく、安らぐ。
一体誰だろうか?
「これは私の母ですよ、エル」
「え!? ミレーユさん!?」
嘘だろ…………
あの時一緒にお酒を飲んだミレーユさんとは明らかにかけ離れている……
驚いた俺を見てミレーユさんはいたずらっぽく笑う。
「ふふふ、驚いているようじゃな。この姿は戦闘モードじゃ。それに、あの姿でギルドに訪れたら追い返されてしまうじゃろう?」
「まぁそれは……確かに」
「ほれ、今はギルドの説明を聞くぞ。呆けておる場合ではない」
「は、はい、そうですね」
俺はミレーユさんの言葉を聞き、ギルドの職員の方に向き直る。
周りの冒険者は皆とても騒がしい。
「みなさん、先程も知らせましたが、スタンピードです! かなりの規模になると思われます!」
職員の手には拡声用の魔道具が握られており、この喧騒の中でも声が届く。
「中にはAランククラスの魔物もおり……最悪、スペリラは陥落するかもしれません」
その言葉を聞き、冒険者たちはざわめく。
「ですが、ここには力ない人が沢山います! そんな人たちを守るため、皆さんの力を貸してください!」
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