第66話 なんでもアリ!? ホッケー対決!・2
「むぅ。中々決まらない。」
「なら、そろそろ終わりにするか?」
「お、エル、かっこええやん。ええで、そろそろ決めよか!」
「勝つのは私たちベルリスックレットリューチームだよ!」
「メアリス。適当にくっつけすぎ。」
遊びとはいえ、戦いの最中でもこのふざけ具合…………
このパーティらしいな。
思わず笑顔になってしまう。
だけど……
「勝つのは俺たちエルアスチームだ!」
「いーや、私たちベルリスックレットリューチームだね!」
「よく覚えたな!?」
っとと、今はそれより本気でぶつかるために……カレットの果実を処理しないとな。
魔法以外で処理……この糸しかないな!
俺はふよふよと周りに浮いている果実に指を向け、糸を射出する。
魔力で作られた果実は糸に貫かれると、徐々に変色しながら消えていった。
「これで……本気で撃ち合えるな!」
それを見てベルリスなんちゃらチームの全員がにかっと笑う。
「私はエルを助けるために、もっと強くなるために、恩を返すために……この勝負、負けられない!」
「エルには命を救ってもらった。その恩に答えるために。ベルは強さを証明する。」
「エル、強くなったねー! 初めて会った時は私にも勝てなそうだったのに……」
「あはは、僕たちの命を預けているんだからそれくらいはないとね」
「エル! 今度こそ家族とともに俺が勝つ! 覚悟しろ!」
その言葉に乗せられた気持ちはとても暖かく、心地よい。
きっと、俺一人では味わえなかったものだ。
俺もそんなみんなに恩を感じている。
だからこそ……
「俺は強くなって、リーダーとして、みんなを守るんだ! この勝負に勝って、歩を進めてみせる!」
「うちは新参者で、まだまだ未熟やけど……一昆虫族として恩を返せず、エルを勝負に負けさせるなんて有り得へん! 覚悟しぃや!」
みんな、俺に恩を感じてくれているんだな……
軽く遊ぶつもりだっただけなのに、みんなの心の内が聞けて……とても嬉しい。
俺にとっては、メアリスも、ベルも、メディアスも、カレットも、ザックも、アンドリューも……みんな俺の恩人だ。
仲間の大切さを教えてくれた。
仲間のあたかかさを教えてくれた。
なによりも大切なものをくれた。
俺もその恩に応えるために、全力をぶつける。
『こ、このままではこの街にも被害がでてしまうのだ……』
「それくらい分かってる。アナ。守護者モード。」
『ふおお!』
アナの小さな身体が輝きだし、世界を白で包む。
しばらくして光が止むと……
「わがはい、見参!」
「バカなこと言ってないで結界。」
「は、はいなのだ……」
中身のない、上半身だけの鎧姿となったアナがいた。
そんなアナは、自分よりも数段身体の小さいベルに平伏している。
「…………ははっ」
その構図に思わず吹き出してしまう。
やっぱり、アナはいつもこうだな……。
「絶対だれか失礼なことを考えたのだぁぁぁぁぁ!!」
アナが結界を貼り直したのを確認し、両チームが向き合う。
「さぁ、最終ラウンドだよー! みんな、準備はいい?」
「いける。」
「私はいけるよ!」
「あはは、準備万端かな」
「あぁ、ぶちのめしてやろうぜ」
五人が息を揃え、魔法陣を展開させる。
相手は五人、対してこちらは二人。
普通に考えて撃ち合いじゃあ勝てない…………
どうやってあれを防ぐ……!
「エル! 毒、魔毒は使えんか!?」
「魔毒?」
魔毒……初めて聞いた単語だな。
どんなものかは分からないが、このメディアスの能力を使って……うまく魔力の性質を変化させれば……できないことはないはずだ。
そう考えて俺は手短に説明を希望した。
「魔毒っちゅーのは魔力で作る毒……魔毒を使えば魔法を侵食して、威力が弱まるんや! ほなら、うちらにも勝ち目あるで!」
「分かった! やってみよう!」
向こうはもう準備が終わりそうだ。
俺は魔力の性質を上手く変化させ、魔毒の生成を試みる。
更にそれに並行して、迎撃のための魔法を唱える。
かなり骨が折れるが……勝つにはこれしかない!
「エル、来るで!」
その言葉に俺は身構える。
「「「「我らは家族。我らの魂を繋ぐ絆を芸術にて表せ。なによりも大切なものを守るために、ここで力を解放する。我らの芸術を見るがいい! 魂を繋げる者と薔薇園!!!」」」」
その言葉と同時に、辺りは薔薇園へと姿を変える。
「宇宙を維持する光よ。平和を守る光よ。生命を育む光よ。我が魔力を与える。故に、地上に現界せよ! プロミネンスフレア!!」
そして、地上に太陽が如く魔法が現界した。
その太陽は薔薇を育て、更に威力を高める。
こんな威力の魔法……見たことがない。
だが……
「正面から迎え撃つ!」
「いくで!」
俺とメディアスは同時に大量の糸を放つ。
魔毒入りのな。
魔毒の効果を確認する暇もない!
俺は間髪入れずに唱え終えた魔法の詠唱を開始する。
「我は光を守る者也。人々に安寧を与える者也。正義の雷で平和を脅かす存在を滅する!! ルナティックボルトッ!!」
俺の手のひらから紫電が放たれる。
その紫電は荒れ狂う龍となり、薔薇園にくらいつく。
「ポイズンドロップ!」
メディアスも魔法を放つ。
球体状の魔毒の塊を大量に魔法にぶつける。
俺の魔法に任せる、ということか……
そうなると余計に……
「負けられないな!!」
俺は魔法を放つ手のひらに更に力を込める。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
俺は……勝つ!
勝つんだ!!
その気合いの咆哮に呼応し、紫電は勢いを増し、薔薇園を焦がし尽くしていく。
やがて世界が白で包まれ、なにも見えなくなる。
そこには、互いの魔法が激突する音が、意地のぶつかり合いだけがあった。
しばらくすると…………
別の音が聞こえた。
──────カコン
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